片岡義廣・水野政巳. 1999. 北海道浜中町霧多布におけるエトピリカの生態と生息数変動. Strix 17: 1-14
藤巻裕蔵. 1999. 北海道中部・南東部におけるキジバトとアオバトの生息状況. Strix 17: 15-23
植田睦之・小板正俊・福井和二. 1999. 秋期のオオワシとオジロワシの分布に影響する要因. Strix 17: 25-29
箕輪義隆・桑原和之・嶋田哲郎. 1999. 東京湾海上の鳥類相. Strix 17: 31-41
姉崎悟. 1999. トカラ列島宝島の鳥類. Strix 17: 43-52
黒岩哲夫. 1999. 高知県中南部の沿岸性湿地の鳥類相と生息環境. Strix 17: 53-67
小林豊・林英子. 1999. 日々の観察記録を用いたシギ・チドリ類の渡来時期の分析 ~東京港野鳥公園における観察記録から~. Strix 17: 69-76
平井正志. 1999. 三重県中部河川でのイカルチドリの繁殖. Strix 17: 77-83
白井剛. 1999. 多摩川中流域におけるアオサギの繁殖生態. Strix 17: 85-91
新保國弘・柳沢朝江・片岡真智子・北城道夫・柄澤保彦・桑原和之. 1999. 千葉県におけるケリの繁殖初記録. Strix 17: 93-99
成田章. 1999. ウミネコのつがい交尾とつがい外交尾. Strix 17: 101-110
嶋田哲郎. 1999. 伊豆沼・内沼周辺の水田における稲刈り法の違いによるガン類の食物量の比較. Strix 17: 111-117
黒岩哲夫・橋本裕子・西村俊彦・吉本海男・和田雅典・矢野聖・佐藤重穂. 1999. 高知市におけるハチクマの渡り. Strix 17: 119-126
山本浩伸・大畑孝二・山本芳夫. 1999. 石川県加賀市の水田地帯における越冬期のカモ類の環境選好性 -片野鴨池に飛来するカモ類の減少を抑制するための試み-. Strix 17: 127-132
成末雅恵・松沢友紀・加藤七枝・福井和二. 1999. 内水面漁業におけるカワウの食害アンケート調査. Strix 17: 133-145
小泉伸夫. 1999. 明治神宮探鳥会で実施したシジュウカラのソングポスト調査. Strix 17: 147-153
短報
アン M. バーク・タッド E. ブレイビー・渡辺 剛・ジュリー A. ランゲンバーグ・ナンシー K. ブッシンガ・クレア M. ミランデ. 1999. 送信機を付けたソデグロヅルの様態. Strix 17: 155-157
早川雅晴. 1999. コアジサシの卵への穴あけ行動. Strix 17: 159-163
杉山禎彦・赤塚隆幸. 1999. 都市公園におけるコゲラの巣の乗取りと思われる行動. Strix 17: 165-172
植田睦之・平野敏明. 1999. ツミのつがい外交尾の観察. Strix 17: 173-176
柳川久・筒渕美幸. 1999. 交通事故によるベニヒワの大量死. Strix 17: 177-180
小林繁樹・深町修・藤井君子. 1999. オオコノハズクの山口県鹿野町での巣箱繁殖例. Strix 17: 181-185
黒岩哲夫・橋本裕子・吉本海男・西村俊彦・佐藤重穂. 1999. 高知県におけるハチクマの繁殖確認. Strix 17: 187-190
高美喜男・川口範・石田 健. 1999. オオトラツグミ Zoothera (dauma) major とトラツグミ Z. d. aurea の保護個体の形態およびオオトラツグミの保護対策への付言. Strix 17: 191-196
鈴木弘之・松井淳・芝原達也. 1999. 野鳥観察施設において観察された釣針・釣糸などが水鳥におよぼした傷害の例. Strix 17: 197-199
大門久之. 1999. 石川県におけるヤマヒバリの初越冬記録. Strix 17: 201-202
脇坂英弥・野津登美子. 1999. 島根県宍道湖におけるハイイロペリカンの初記録. Strix 17: 203-204
佐々木均・佐々木あさ子. 1999. 山形県酒田市飛島におけるヨーロッパコマドリの観察. Strix 17: 205-208 |
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片岡義廣・水野政巳. 1999. 北海道浜中町霧多布におけるエトピリカの生態と生息数変動.
Strix 17: 1-14 |
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日本で絶滅の危機にあるエトピリカについて,国内では唯一陸上からの定常観察が可能な浜中町霧多布周辺の繁殖地で,生態と生息数変動の調査を行なった.
1984年から両地のエトピリカの繁殖数は減少し続けた.1992年以降はピリカ岩でのエトピリカの繁殖が確認されなくなり,1996年途中に小島での繁殖も確認されなくなった.この原因として大きなものに,沖合および沿岸に敷設された魚網による混獲による死亡が推定された.ただし,1994年から,非繁殖鳥と思われる個体が小島周辺で確認されるようになり,新たに繁殖群へ加入し得る可能性もあった.
エトピリカが繁殖のために霧多布周辺に来遊する時期は,4月下旬から 5月上旬であり,産卵期は 5月下旬から 6月上旬,育雛期は 7月上旬から 8月下旬にかけてと推定され,雛の巣立ち後しばらくして親鳥も繁殖地を離れた.当地での繁殖成功率は約90%と比較的高かった.
ヒナへの給餌は,朝と夕方に頻度が高くなり,育雛期の後期にかけて回数が増加した後,終期には減少した.給餌した食物として,魚類のイカナゴ属 Ammodytes spp. が確認された.
今回の調査・観察結果をもとに,デコイの設置のほか,エトピリカ繁殖期の繁殖地周辺への立ち入りと漁具の敷設規制,オオセグロカモメ Larus schistusagus など競合種の管理のほか,ニシツノメドリ Fratercula arctica で成功例のある,大繁殖地からのヒナの移植による積極的な増殖方策などについて提案した. |
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藤巻裕蔵. 1999. 北海道中部・南東部におけるキジバトとアオバトの生息状況.
Strix 17: 15-23 |
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1976~1998年の4月下旬~6月下旬(高標高地では7月下旬)に北海道中部と南東部においてキジバトとアオバトの生息状況を調べた.キジバトの出現率はハイマツ林と住宅地で低かった.垂直分布ではおもに標高700m以下で観察された.観察個体数は,農耕地で多かった.アオバトはハイマツ林と住宅地には出現せず,出現率はキジバトに比べると全般に低かった.垂直分布ではおもに標高700m以下で観察された.観察個体数も少なく,いずれの環境でも0.1羽以下であった.2種の分布には類似性が見られたが,キジバトのほうが生息環境の幅が広く,観察個体数も多かった. |
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植田睦之・小板正俊・福井和二. 1999. 秋期のオオワシとオジロワシの分布に影響する要因.
Strix 17: 25-29 |
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オオワシとオジロワシの秋期の分布に影響する要因について北海道オホーツク海沿岸の河川で,1995年,1997年に調査を行なった.観察された両種の食物はすべてサケの死体で,サケの死体の分布と両種の分布には強い正の相関が認められた.したがって,秋期のオオワシとオジロワシの分布にはサケの死体の分布が強く影響していると考えられた. |
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箕輪義隆・桑原和之・嶋田哲郎. 1999. 東京湾海上の鳥類相. Strix 17: 31-41. |
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東京湾の木更津-川崎間を就航するフェリー航路において,海上に生息する鳥類の個体数調査を行った.1991年5月から1993年2月の調査期間中,50種の鳥類が記録された.種数および個体数は沿岸部で多く,湾の中央部では少なかった.種構成は,夏期~秋期にチドリ目の占める割合が高く,冬期から春期にはカモ目の占める割合が高かった.東京湾海上の鳥類相の特徴は,スズガモとカモメ類,アジサシ類の個体数が多いことで,これらの種は特に浅瀬を中心に分布していた.また,湾中央部では,ミズナギドリ類がしばしば確認された.一方,沿岸部の干潟に多いシギ・チドリ類の記録は,海上部では稀であった.湾内の沿岸部と海上部では,鳥類相が異なると考えられた.個体数が多かった種はスズガモで,冬期に多摩川河口域に分布していた.カモメ類のうち,ウミネコは夏期に,ユリカモメやセグロカモメは冬期に増加した.アジサシ類のうち,アジサシは春期と秋期に,コアジサシは春期から夏期に増加した.干潟や陸地では稀なミツユビカモメが数回記録されたが,アビ類やウミスズメ類は記録されなかった. |
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姉崎悟. 1999. トカラ列島宝島の鳥類. Strix 17: 43-52 |
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1996年から1998年にかけて 4回,トカラ列島宝島を訪れ,59種(ドバトを含む)を記録した.うち 7種は宝島初記録となった.クロサギ,シロチドリ,カラスバト,ズアカアオバト,アカショウビン,イソヒヨドリ,サンコウチョウ,メジロおよびハシブトガラスの 9種は,宝島で繁殖するものと思われた.メジロは,亜種リュウキュウメジロであることが示唆された.
これまでの記録をまとめると,宝島では137種が記録されていることが分かった.このうち,トカラ列島において宝島でしか記録がないものは 7種あるが,これらは偶然迷行してきたものであると思われた.宝島ではシロチドリが周年みられるが,これも,トカラ列島では宝島だけの特徴である.また,繁殖する陸鳥の種数が他島(小宝島や無人島は除く)よりも少ないという特徴も認められた. |
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黒岩哲夫. 1999. 高知県中南部の沿岸性湿地の鳥類相と生息環境. Strix 17: 53-67 |
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高知県中南部の沿岸性湿地である小松沼と物部川河口の2か所の調査地について,4年間にわたって鳥相調査を行なった.小松沼では131種,物部川河口では138種の鳥類が確認された.小松沼は海岸に隣接した止水性の湿地であり,鳥類の総個体数の中に冬鳥のカモ類が占める割合が高いこと,沼の周辺で見られる森林性,水田性などの種類が多いことが鳥相の特徴としてあげられた.物部川河口では種数,個体数ともに春と秋の渡りの時期にシギ・チドリ類を中心として多く確認されること,コアジサシやチドリ類などの砂礫地性の種類が繁殖することなどの特徴があった.湿地への人の侵入や狩猟の影響の程度が2つの調査地間で異なった. |
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小林豊・林英子. 1999. 日々の観察記録を用いたシギ・チドリ類の渡来時期の分析
~東京港野鳥公園における観察記録から~. Strix 17: 69-76 |
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東京港野鳥公園で1990年から1997年に観察されたシギ・チドリ類 9種について,日々の観察記録を分析することによりどのようなことがわかるか試みた.分析には初終認日の他に,連続出現期間も用いた.
初終認日が経年変化している種が 4種あることがわかった.また,連続出現期間の分析では経年変化している種が3種あり,これらは初終認日が経年変化していた種とは別の種であることがわかった.
春期と秋期を比較すると,春期の終認日や最終日などの変動が秋期に比べて小さかったことから,春期では繁殖地への到着期限に間に合わせるため中継地での滞在期間を調整していることが示唆された.また,秋期の出現日数は,春期に比べて有意に多かった.これは,若鳥が成鳥より遅れて中継地へ到着する傾向があるためと考えられた. |
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平井正志. 1999. 三重県中部河川でのイカルチドリの繁殖. Strix 17: 77-83 |
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三重県中部の河川におけるイカルチドリの繁殖状況を調査した.抱卵は3月の終わりには既に始まっており,4月中旬からふ化が観察された.鈴鹿川と安濃川でそれぞれ10および8巣が観察され,これとは別に鈴鹿川で3巣からふ化したと考えられる9羽のヒナが見つかった.鈴鹿川では合計14羽のヒナが観察された.つがい数は13ないし14と推定できたので,つがいあたり1.0-1.1羽のヒナが確認された.安濃川では4羽のヒナが確認され,つがいあたり0.44-0.57羽であった.巣は主として小石の河原で発見され,砂地では少なかった.営巣が失敗したあと,1ないし2週間後に前回の営巣場所の近くで営巣がはじまる場合があり,卵の模様から同一個体によるものと推定された.営巣の失敗は主として野生動物の捕食によるものと推定されたが,一部では人による妨害が原因と推定された. |
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白井剛. 1999. 多摩川中流域におけるアオサギの繁殖生態. Strix 17: 85-91 |
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多摩川中流域にある,最近形成されたアオサギの集団繁殖地において,繁殖期間と経過,巣数,採食場所について1997年に調査した.
37つがいの繁殖を確認した.繁殖期間は,2月中旬~ 9月上旬だった.1つの巣の繁殖期間は約102日で,巣立ったヒナの数は 3羽が多かった.
採食場所は多摩川と大栗川の合流点附近で,集団繁殖地から約1km離れていた.しかし飛行経路の観察などから,ほかの場所にあることも考えられる. |
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新保國弘・柳沢朝江・片岡真智子・北城道夫・柄澤保彦・桑原和之. 1999. 千葉県におけるケリの繁殖初記録.
Strix 17: 93-99 |
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1998年5月9日,千県県野田市の農耕地でケリ Venellus cinereus の繁殖行動を確認した.水入れ前の水田で5月17日に抱卵を確認し,その後24日に1巣4卵を確認した.巣が壊されるため巣の中の4卵を保護し,そのうちの3卵が6月3日にふ化した.ヒナは6月15日に1羽,16日に2羽が死亡した.この記録は千葉県初の繁殖記録である. |
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成田章. 1999. ウミネコのつがい交尾とつがい外交尾. Strix 17: 101-110 |
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1992年と1993年に青森県八戸市の蕪島において,ウミネコのつがい交尾とつがい外交尾について調べた.つがい交尾はなわばり内で生じていた.つがい交尾が行なわれる時期は,大部分が初卵産卵前であった.つがいは多回交尾となわばり防衛によって,つがい外の受精を防いでいると考えられる.一方,つがい外交尾は雄が不在の時に侵入することによって生じていた.雄はつがい交尾をほぼ終えてから受精可能な近隣の雌を選択し,つがい外交尾を試みていた.すべてのマウンティングの中でつがい外雄が行なった割合は21.7%であり,総排泄腔接触回数の割合は2.2%であった.つがい外交尾の回数はつがい交尾と比べると少ないが,つがい交尾よりも少し遅れて産卵の直前にピークになることは,受精されるように効率的に行なっていることが示唆される.したがって,ウミネコでの混合繁殖戦略が雄にとって適応度を高める機会が十分期待できることが示唆される. |
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嶋田哲郎. 1999. 伊豆沼・内沼周辺の水田における稲刈り法の違いによるガン類の食物量の比較.
Strix 17: 111-117 |
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稲刈り法の違いと秋耕の有無におけるガン類の食物量の違いを明らかにするため,1996年10月にコンバイン刈りとバインダー刈り水田で落ちモミ量を調べた.コンバイン刈り水田はバインダー刈り水田よりも落ちモミ量が有意に多かったが落ちモミの中味の状態をみると,実の入った落ちモミ数はバインダー刈り水田がコンバイン刈り水田より有意に多かった. |