軽井沢の原風景は、意外にも荒涼と広がる湿地・草原です。1970年頃、南軽井沢の湿地・草原がゴルフ場に開発されてしまいました。奇しくも時期が重なるように、戦後から推奨されてきた稲作が減反政策のため畑作中心となり、軽井沢町発地(ほっち)地区の田んぼは休耕地になっていきました。まさに奇跡。草原性の鳥たちは南軽井沢から発地へと移動し、しぶとく生き続けました。これが現在の発地の鳥たちの綱渡りのような歴史です。
春になると高原の鳥たち、ホオアカやノビタキ、コヨシキリ、カッコウなどが繁殖します。周りの林にはコムクドリやアオジ、クロツグミ、ホトトギスなどの姿が、大空にはノスリの雄姿が見られます。夏の終わりには空を覆い隠すほどのツバメのねぐら入りが観察され、秋の渡りにはオオジシギやチュウジシギが通過し、冬季にはベニマシコやカシラダカ、アトリなどがやってきます。
6月の中頃と8月の終わり頃、軽井沢支部の探鳥会が行なわれ、参加者を楽しませます。また7月には連日、ホタル観賞に人びとが集い、地元や別荘の人々に愛されてきました。
ただし、ここは休耕地という不安定な草原。いつ新たな開発などの脅威に晒されるかもしれません。ヒクイナやヨタカ、オオジシギのように姿を消したり、繁殖しなくなった種類もあります。これらの鳥たちを呼び戻すためにも、一般の市民の方々にこの貴重な場所の大切さを知ってもらうためにも、発地を「未来に残したい探鳥地」に推薦します。
長野県北佐久郡軽井沢町発地
川/河原、森林、田んぼ/農耕地、草地、高原
5月、6月、7月、8月、9月、10月
5~6月は高原・草原の鳥の繁殖時期です。まずヨシ原では、オオヨシキリの大きな声が飛び込んできます。よく聞いていると、リズムカルに高い声で歌うコヨシキリもいます。もっと丈の低い草地では、ホオジロより小声で短めの歌をさえずるホオアカ、か細い声で「ヒーローリー、ヒリョ、ヒリョ」とさえずるノビタキ。風の音をたよりに、地面より少し高いところを探してください。よく通る大きな声のカッコウや帆翔(はんしょう)するノスリ、まさしく高原の初夏です。
夏の終わりのツバメのねぐら入り。渡りの時期のオオジシギやチュウジシギ。冬のベニマシコやカシラダカ、アトリも見逃せません。キツネの目撃も多いところです。
レイクニュータウンの中にあるガーデンで、四季折々の花が美しいところです。特に6月中頃から7月中頃のバラは数も品種も多く、ガーデンの中はバラの香りでむせ返るくらいです。また、夏場はアサザの黄色い花が湖面を埋め尽くし、必見です。カイツブリやバン、カルガモが繁殖し、カワセミも立ち寄ります。トンボやチョウなどの昆虫も多いところです。ガーデン内は三脚使用禁止です。
新鮮な地元野菜の直売施設で、おみやげなども置いてあります。飲食店も入っていて、食事や休憩に立ち寄る人も多いところです。ただし、お昼頃を過ぎると野菜は品薄になるので注意してください。
「軽井沢発地ホタルの里」に駐車場とトイレがあります。休耕地の周りの道は狭く、耕作地もあります。農作業中の方の邪魔にならないように観察してください。車から観察する時は、できるだけ車を端に止めてください。数台以上もしくはグループで訪れる際は、発地の地区長に連絡し、許可をもらってください。もちろん休耕地といえども、農地には絶対に立ち入らないでください。繁殖時期の長時間の撮影は、野鳥にとって脅威です。植物の希少種も多く、採集禁止です。良識ある探鳥を心がけてください。