立田山(たつだやま)は熊本市の中心部から北東約3㎞に位置する、標高152mの小高い丘陵状の山です。常緑広葉樹、落葉広葉樹、アカマツなどの森林が混在するほか、湿地や草地、ため池など多様な環境があり、里地里山の生きものの重要な生息・生育地となっています。
立田山では「立田山の緑を守ろう」という県民・市民の声を受けて、熊本県・熊本市が一体となって整備事業を進め、現在では約150haが環境保全林「立田山憩の森」となって、多くの市民の憩いの場として利用されています。森の中には散策路が整備されており、途中には展望台、休憩所、芝生の広場などもあり、政令指定都市の中心部にありながら、豊かな森の自然を楽しむことができます。
日本野鳥の会熊本県支部では、会の設立以来、50年以上にわたって、立田山で探鳥会を開催しています。毎月第一日曜日の定例探鳥会、3月のお花見探鳥会と合わせて年に13回が開催され、多くの参加者が集まっています。
観察される鳥は、森林性の小鳥類が中心になりますが、小さなため池では、カワセミやカモ類など水辺の鳥も見ることもできます。過去10年間の探鳥会では約90種類の野鳥が記録されており、観察のしやすさから、バードウォッチング初心者の入門用の探鳥会としての役目を果たしています。温暖な地ですので、真冬でも積雪はなく、年間を通して野鳥観察をすることが可能。ただし、猛暑の夏場は、さすがに鳥は少なくなります。
立田山周辺には、「立田自然公園(泰勝寺跡)」、「熊本大学」、「リデル、ライト両女記念館」、「森林総合研究所九州支所」、「立田山野外保育センター」などの施設があり、また南方を流れる白川は阿蘇カルデラを水源とする清流で、年間を通じて野鳥の生息場所となっています。
熊本市中央区黒髪8丁目
池、森林、山地
1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、10月、11月、12月
夏鳥ではキビタキ、サンコウチョウの人気が高く、「テッペンカケタカ」と鳴きながら飛びまわるホトトギスも、夏鳥の代表選手。
冬鳥は10月頃から渡ってきますが、ジョウビタキ、ルリビタキ、ツグミ、シロハラなどは毎冬普通に見ることができ、年によっては、クロジやキクイタダキ、シメなどがくることもあります。
立田山には留鳥として、メジロ、エナガ、ウグイス、シジュウカラ、ヤマガラ、コゲラ、ヒヨドリなどの小鳥類が生息しており、1年を通してバードウォッチャーを楽しませてくれます。
コマドリ、オオルリ、コサメビタキ、マミチャジナイなどが渡りの途中、立田山に立ち寄ってくれます。
立田山山麓には、熊本藩主・細川家の菩提寺「泰勝寺(たいしょうじ)跡」があります。細川家初代藤孝(ふじたか)夫妻と、二代目忠興(ただおき)とガラシャ夫人の墓「四つ御廟(ごびょう)」や、武人でありながら茶人としても有名だった細川忠興の原図に基づいて復元された茶室「仰松軒(こうしょうけん)」などがあります。また、宮本武蔵のものと伝わる供養塔もあり、史跡散策スポットとして市民に親しまれています。
立田山には八重咲のクチナシ「ヤエクチナシ」の自生地があり、1929年に「立田山ヤエクチナシ自生地」として国指定天然記念物に指定されています。本来の生育地は伐採や遷移の進行で消滅したのではないかと言われていますが、その一方で数系統のヤエクチナシが、立田山の「豊国廟(とよくにびょう)跡」など数か所で栽培されています。
写真提供:立田山ヤエクチナシ井戸端会議、河原畑濃氏
日本野鳥の会 熊本県支部については、以下をご覧ください。