平城宮跡つばめのねぐらのヨシ原
近鉄「西大寺」駅から東へ歩いて約10分、「平城宮跡」北西側から草地に出ればそこはもう野鳥天国です。宮跡は大都市に隣接しながら、今なお自然環境を保つ希有な探鳥地域です。そして、宮跡の北側には冬季には遠来の水鳥たちの集まる水上池(みずがみいけ)と、「一粒で二度美味しい」探鳥が楽しめます。
平城宮跡はいうまでもなく、「奈良時代」あるいは「平城時代」と呼ばれる時代の都跡。近年、宮跡建造物の復元などがすすんでいますが、日本野鳥の会奈良支部などの働きかけと国交省、文化庁、奈良県、平城宮跡管理センターの保全努力により残されたヨシ原や草地など、野鳥たちが集まる環境も多く点在しています。大極殿(だいごくでん)などの復元建物などを観ながら、野鳥観察を楽しめます。
夏は観察できる種数はぐっと減りますが、ハイライトはなんといっても「ツバメのねぐら入り」。7月半ば過ぎからお盆頃までの日没前後、4~6万羽を数える日本で有数ともいわれるねぐら入りは壮観です。
平城宮跡の北側に位置する水上池は、大きさ14ha、周囲1.5kmで、奈良県景観資産にも登録されています。冬に渡ってくるカモ類のほかにも、四季を通じて野鳥を観察することができます。
奈良支部による観察では、平城宮跡・水上池で、希な観察記録も含め約100種の野鳥が観察されています。
最後に、日本野鳥の会奈良支部が行なっている観察会の基本コースをご紹介。
平城宮跡資料館駐車場前⇒つばめのねぐらヨシ原⇒中央区朝堂院址西側⇒朱雀門(すざくもん)北側ヨシ原⇒第二次大極殿⇒宮内省東側⇒遺構展示館横(小休止)⇒宮跡北側の草地を抜けて⇒水上池(南池)(北池)一周
奈良市佐紀町
池、草地
1月、2月、3月、4月、5月、6月、8月、10月、11月、12月
春から初夏にはセッカやホオジロ、オオジュリンなどの草地の鳥たちと出会え、オオヨシキリのにぎやかな声も聞こえます。水上池では居残りのカモ類に加え、ゴイサギ、アオサギ、ダイサギ等を観察できます。また、7000kmを旅してきたコアジサシの姿も。そして、夏のハイライトは国内最大級のツバメのねぐら入り。
秋から冬は観察種数が増えます。平城宮跡では夏鳥たちと交代するように、ツグミなどの冬鳥たちがやってきます。最近ではおなじみになったアリスイの姿が観察されるのもこの頃から。水上池ではコガモやマガモ、ハシビロガモ、オシドリ、ミコアイサなどなど多様なカモたちを楽しめます。
カラ類、セキレイの仲間、キジバト、ヒバリ、ムクドリなどの留鳥たちとともに、水辺の鳥たちではカイツブリ、カワウ、カルガモ、アオサギ、ダイサギなどが。またオオタカ、チョウゲンボウなどにも出会う機会があるかも。
平城宮跡・水上池の最寄りの近鉄「西大寺」駅から2駅東へ。終点の近鉄「奈良」駅を下りて、東へ歩けば興福寺から春日大社、東大寺を含む奈良公園。この一帯は草地(芝生)や林の山野の鳥たち、そして点在する池にいる水辺の鳥たちにも出会える探鳥コース。セキレイ、カラ類などの留鳥に加え、夏鳥の季節にはキビタキのさえずり、冬鳥の季節にはシロハラ、ツグミが訪れ、アトリ、ニュウナイスズメ、イカルの群れが舞うことも。荒池(あらいけ)、鷺池(さぎいけ)では、カルガモやサギ類、カワセミが通年で観察されます。また、寄生木の実が熟す頃、レンジャクとの出会いも期待できます。
また、隣接する春日山原始林は駅から行くことができ、高い確率でキビタキ、オオルリに出会えることのできる稀少な探鳥コースです。
平城宮跡は遺跡でもあるので、進入禁止の表示があれば従ってください。
水上池周辺道の一部は、自動車が通行するので事故のないよう注意してください。また、自転車やジョガーも走っていますので、妨げにならないように注意してください。人家の近くも通るので、双眼鏡やカメラの使用についても配慮をお願いします。
日本野鳥の会 奈良支部については、以下をご覧ください。