芝川、加田屋(かたや)川、そして東西の見沼(みぬま)代用水。4つの河川に囲まれ、鹿の角のような形に広がる見沼たんぼ。かつては、無数の沼が点在する大湿地帯「見沼」でした。江戸時代に干拓や新田開発が行なわれ、「見沼たんぼ」が誕生。その後長い間、水田として維持されてきました。一時は1万羽を超えるサギ類の大集団営巣地「野田の鷺山」が形成されたこともありました。
高度成長期には開発ラッシュが押し寄せましたが、狩野川(かのがわ)台風(1958年)の際、この地域が自然の貯水池として機能し、下流の被害を最小限にとどめることができました。その後は主に治水のため、開発が抑制される政策がとられています。
1970年代以降は水田から畑への変換がすすみ、現在では水田の割合はわずか数パーセントまで減っています。最近では、首都近郊に残された数少ない大規模緑地空間として、見沼たんぼを保全しようという動きが出てきています。
保全政策や農業に従事する方々のおかげで良好な自然環境が残されているため、この地域はさまざまな野鳥にとって重要な生息地となっています。年間を通して見られる身近な普通種に加え、四季折々のさまざまな野鳥が見沼田んぼを訪れます。
これらの野鳥の観察を通して、見沼たんぼの環境の大切さを知っていただくために、日本野鳥の会埼玉では「三室(みむろ)地区定例探鳥会(毎月1回)」「民家園(芝川第一調節池など)探鳥会(年4~5回)」「見沼自然公園周辺探鳥会(冬季3回)」「大宮市民の森探鳥会(年1回)」などの探鳥会を開催しています。
埼玉県さいたま市(緑区、見沼区、北区、大宮区)、川口市
川/河原、池、森林、田んぼ/農耕地、草地
1月、2月、3月、4月、5月、6月、9月、10月、11月、12月
キジ、オオタカ、カワセミ、シジュウカラ、ヒバリ、メジロ、エナガ、ホオジロなど
身近な鳥がにぎやかにさえずります。キジの姿も見やすい季節。ツバメ、コチドリ、オオヨシキリが飛来し、雑木林を渡りのヒタキ類などが通過してゆきます。
カルガモ、シジュウカラ、ムクドリ、スズメなど身近な鳥の幼鳥や親子連れ。コムクドリの群れも登場します。
サシバ、カッコウの仲間、エゾビタキ、ノビタキなど、南へ向かう鳥たちとの出会いが期待できます。
水辺にはさまざまなカモ類が集合。ツグミ類、ジョウビタキ、ルリビタキ、シメ、ベニマシコ、カシラダカなどが越冬しています。年によってはイカル、アトリなども。
見沼たんぼに点在する、いくつかの小さな博物館。探鳥会の集合や休憩に利用しているほか、後援の形でご協力いただいているところもあります。
「さいたま市立浦和博物館(さいたま市緑区三室)」の趣のある建物は、埼玉県師範学校校舎「鳳翔閣(ほうしょうかく)」(浦和レッズの旗にも描かれている)の中央部を復元したもの。古代から近代に至る郷土の民俗・歴史・美術資料が展示されています。
「浦和くらしの博物館民家園(緑区下山口新田)」には、市内の伝統的な建造物7棟が移築・復元されています。展示は生産・生活用品を中心にした民俗資料など。
「旧坂東家住宅 見沼くらしっく館(見沼区片柳)」は、新田開発で活躍した坂東家の10代目が1857年に建てた屋敷。中に入れますので、タイムスリップ気分を楽しんでください。
「さぎ山記念館(緑区上野田)」には「野田の鷺山」に生息していたサギ類の写真や剥製のほか、貴重な歴史資料が保存されています。
畑や田んぼなどの農地は私有地です。立ち入らないように気をつけましょう。農作業中の傍らを通る時には、ひとことあいさつを忘れずに。路上駐車もご遠慮ください。
日本野鳥の会 埼玉については、以下をご覧ください。