斐伊川(ひいがわ)河口を含む宍道湖(しんじこ)西岸一帯は、日本国内におけるマガン、ヒシクイ、コハクチョウなど大型鳥類の集団越冬地(西限)であり、西日本における極めて重要な野鳥生息地となっています。
斐伊川は出雲神話に出てくる暴れ川で、本流から枝分かれし、中国山地から多くの土砂を運び、出雲平野を造った河川でもあります。その自然豊かな河口付近を中心に、宍道湖を含む湿地、水田を主とした農耕地帯があります。現在は河川管理の方法も進み、暴れる川にならないよう河口部で年間数万㎥の土砂を河川外へ運び出しています。
この工事の時期・範囲・工法などは、維持管理をしている国土交通省と日本野鳥の会島根県支部が継続協議をし、少なくとも大型の水鳥のガン類、ハクチョウ類などの冬鳥の群れが飛来する10月から翌年の3月までの期間は、野鳥たちの生息に悪い影響を与えないように、樹木の伐採・ヨシ原の刈り取り・土砂の移動などの工事は控えるようにしています。
2005年11月には、宍道湖・中海が「ラムサール条約」の登録湿地となりました。自然環境を守りつつ共生を図る「賢明な利用」を通して、その恵みを後世に伝えていくことが求められているところです。
また、国土交通省が主宰する「斐伊川水系水鳥プロジェクト」の中心地域で、大型水鳥類を指標とする豊かな自然環境を未来に繋げる斐伊川水系生態系ネットワークの形成をめざしています。
日本野鳥の会島根県支部では、例年12月と1月に斐伊川河口部で探鳥会を開催しています。一帯は斐伊川河口から宍道湖西岸にかけて護岸の管理道や農道があり、河川内や宍道湖、その周辺の農耕地では、四季を通して125種前後の野鳥が観察できます。
島根県出雲市島村町/灘分町
湖、川/河原、池、田んぼ/農耕地、草地
1月、2月、3月、10月、11月、12月
冬鳥のハクチョウ、ガンカモ類と入れ替わりに、ツバメ、オオヨシキリ、セッカなどの夏鳥が訪れ、渡り途中のシギ・チドリ類、コヨシキリ、ノビタキなどの旅鳥が、水田や草地、砂州で採餌し休んでいる姿が見られます。
河口部から宍道湖にかけては、多くのカモ類を見ることができます。マガン、コハクチョウのねぐら立ち・ねぐら入りも観察できます。日暮れ時、近年飛来数が増えた数万羽のトモエガモが、餌場に向かう時の独特な飛び方は見応えがあります。猛禽類は、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、ハイタカ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサなどが見られます。また葦原ではサンカノゴイも観察できます。
ミサゴは河川、宍道湖上空で探餌し、急降下して足から水面に突っ込み、魚を捕まえます。年間を通して飛来するようになったヘラサギは、浅瀬で餌をとり、砂州などで休んでいます。
斐伊川河口から1㎞あまり北に「宍道湖グリーンパーク」があります。ここは、野生動植物の保護繁殖や人と自然の調和した自然環境の保全を目的として、島根県で活動する「公益財団法人ホシザキグリーン財団」が運営しています。ビオトープとしての機能も意識された公園で、宍道湖の湖岸に隣接する野鳥観察舎の2階には望遠鏡が備えられていますし、常設展示のほか季節にあわせた展示や野鳥だけでなく、昆虫や植物などをテーマにした企画展(夏・冬)などもあって楽しめます。
入園は無料で、開園時間は9:30-17:00。定休日は毎週火曜(祝日の場合翌平日)と年末年始です。
施設の利用やイベント情報の詳細はホームページをご確認ください。
日本野鳥の会 島根県支部については、以下をご覧ください。