松川浦:文字島から鵜の尾岬を望む
松川浦(まつかわうら)は、福島県の東北部相馬市に位置する面積6.46㎢の県内唯一の潟湖(汽水湖)です。1951年に福島県内6番目の県立自然公園に指定され、2001年には日本の重要湿地500の一つに選定されました。白砂清松(はくしゃせいしょう)の景勝地であると同時に、生物多様性保全上重要な湿地でもあります。さらに、浦内には海苔(ヒトエグサ)の養殖棚が張り巡らされ、多くの漁船が停泊する漁港もある水産業の拠点でもあります。
ここは流入有機物や無機塩類の量が多く、水深が浅くて干満の差が激しいのでプランクトン類が大量発生します。それらはゴカイ類・貝類など多くの底生動物を育み、アマモ・アオサなどの海藻を繁茂させます。藻場は魚類の産卵場、幼稚魚のゆりかごであり、それらを求めて多くの魚類が集まります。浦の後背地の丘陵地は樹林域、低地は水田を主とする農耕地で、東部は発達した砂州によって外海と隔てられています。
水辺と山野の両方の自然環境が存在し、それらの自然環境を巧みに生かした水産業の拠点でもある松川浦は、人間の社会環境と自然環境が共存する貴重な水域であり、その水域の動植物を栄養源とする鳥類、繁殖の場とする鳥類、越冬のため渡来する鳥類など四季折々、多種多様な野鳥(確認種:207種)を、ここ一か所で見ることができるので、紹介したいと思います。
福島県相双(そうそう)支部は、ここでカワウ、シギ・チドリ類などの調査、大津波で流失した黒松林の再生事業などを行っています。松川浦を含む沿岸部は東日本大震災、その後に発生した集中豪雨、大地震などに襲われ、甚大な被害を受け、生活再建の途上にあります。そのため、現在は一般市民への探鳥会参加の呼びかけは行なっていません。
福島県相馬市(原釜~磯部にかけて広がる汽水湖)
海、干潟、森林、田んぼ・農耕地
1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月
干潟ではシギ・チドリ類(春の渡り:メダイチドリ、オオソリハシシギ、キョウジョシギ、オグロシギ、セイタカシギなど)の色鮮やかな夏羽の姿が見られます。
カワウとサギ類(ダイサギ、アオサギ、チュウサギ、ゴイサギなど)がコロニーを形成して繁殖するので、生命のダイナミックな営みが鑑賞できます。
オオヨシキリ、セッカ、ホオアカなどの姿やさえずりが、いたるところで見聞できます。オオタカ、ミサゴなどの猛禽類が浦内で繁殖しているので、目撃機会が多いです。
シギ・チドリ類(秋の渡り:アカアシシギ、トウネンなど)の幼鳥の姿が見られます。
コブハクチョウ、多くのカモ類が越冬します。スズガモ、ハジロカイツブリなどの群れが浦内全域に出現します。シロチドリ、ハマシギなどの冬羽の姿が見られます。
「浜の駅松川浦」にある「相馬復興市民市場」。東日本大震災の復興のシンボルとして2020年10月25日にオープンした施設です。相馬で水揚げされた新鮮な魚介類、地元農産物や加工品、お土産品などが販売されています。施設内のフードコートでは、旬の海産物や地元農産物を食材にした食事が賞味できます。