公益財団法人 日本野鳥の会

トップメッセージ 2021年4月

2021年4月1日 更新

日本野鳥の会 会長 上田恵介

春の野鳥を見る楽しみ

サクラ前線がどんどん北へ向かっていくこの季節、みなさまのところには、もうツバメはやって来ましたか。私の住む埼玉のニュータウンにはまだやって来ていませんが、もうあと少しで彼らが川面を飛ぶ姿を見れるだろうと楽しみにしています。

さてこの4月で、大学を退職して5年が経ちます。研究室は持っていませんが、自宅にいても鳥の研究は続けており、現在はヤマガラの生態を調べています。みなさんはヤマガラをご存知ですか? 私の世代の方々は子どもの頃、神社の祭礼の時、参道に並んだ出し物の屋台の一つに、ヤマガラの「おみくじ引き」があったことを覚えておられるかと思います。

私も中学生の頃、京都の八坂神社で、ヤマガラのおみくじ引きをみた覚えがあります。お客がヤマガラに10円玉を与えると、ヤマガラはそれをくわえて、ミニチュアのお宮に詣で、賽銭箱に10 円玉を入れて、鈴を鳴らして、おみくじをくわえて戻ってきて、それを渡してくれるという、小鳥がこんなことをするのかと驚くような、とても細やかで、愛らしい芸でした。このヤマガラの芸に象徴されるように、かつては小鳥を飼って、声や姿を楽しむという文化が日本には根づいていたのです。

ヤマガラの「おみくじ引き」は個人的にはとても懐かしいのですが、私たち日本野鳥の会は野生の鳥を捕まえて、飼って楽しむ文化ではなく、創立者の中西悟堂が唱えた「野の鳥は野に」を合言葉に、自然の中で鳥の声と姿を楽しむという文化を、日本の社会に根づかせてきました。私たちの活動は、鳥を守ることを通して、未来の世代に日本の豊かな自然を残すための活動です。

春、鳥たちの活動がもっとも活発になる季節です。ヒバリやホオジロがさえずり、もうすぐ森にはオオルリやキビタキなどの夏鳥もやって来ます。たまには野や山に出かけて、春の風の中で鳥の声を楽しみましょう。しっかりと予防対策をして野外で鳥を見ているだけなら、コロナ感染のリスクはそう高くはありません。心身の健康のためにも、ぜひ野鳥の姿にふれてみてください。
そしてこれからも、みなさま方の変わらぬご支援をお願いします。

研究のため、ヤマガラの巣箱を制作

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プロフィール

日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一

春、サシバが渡来する里山

私の住む栃木県市貝町の里山では、3月になるとウメが咲き、コブシ、カタクリと続いて、4月に入るとサクラが満開になります。今の季節はまさに春爛漫。ちょうどその頃、南の国から子育てのために里山に渡ってくるタカが、サシバです。

サシバは、田んぼや畑のまわりでカエルやトカゲ、昆虫などさまざまな小動物を食べて暮らしています。そのため「里山の豊かな生態系を指標する種」と言われています。そんなサシバが、わが市貝町には密度高く生息しており、町ではサシバが舞う里山を基盤に、人と自然が共生する「サシバの里づくり」を進めています。私も、町の行政計画や条例づくりにかかわったり、谷津田で生きもの育む米づくり・湿地づくりを行なったりして、それに協力しています。

また、日本野鳥の会では、愛知県の豊田市自然観察の森の周辺にある里山で、サシバを保全目標種とした里山保全事業「サシバのすめる森づくり」を、2005年から行なっています。現地ではサシバの餌となるカエルなどを増やすため、休耕田を整備して水を張ることでカエルの産卵場所を確保しています。昨年6月には、その管理地内で16年ぶりにサシバが巣をつくり、2羽の雛を育てました。一旦繁殖が途絶えた後に、環境改善によって繁殖が復活したのは、全国的にも珍しい例です。

日本の原風景であり、生物多様性の宝庫である里山。それを未来に伝えていくことも日本野鳥の会の大切な使命と考えます。

田んぼの脇の枝にとまって、獲物を探すサシバ田んぼの脇の枝にとまって、獲物を探すサシバ

谷津田でニホンアカガエルの卵塊を調べる谷津田でニホンアカガエルの卵塊を調べる

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