公益財団法人 日本野鳥の会

トップメッセージ 2021年6月

2021年6月8日 更新

日本野鳥の会 会長 上田恵介

夏鳥を探しに

コアジサイコアジサイ

明けても暮れてもコロナ、コロナ。緊急事態宣言も延長に次ぐ延長で、なかなか気分が晴れないという方も多いと思います。そんな人間の都合とは無関係に、季節は進んでいきます。関東の山も、樹々の緑がだんだん濃くなってきました。いよいよ夏の到来ですが、みなさま、いかがお過ごしですか?

先日、嬬恋村(群馬県)の友人を訪ねて、バードウオッチング をしてきました。朝、目覚めるとウグイスやメジロの声に混じって、アオジやゴジュウカラの声が響いてきます。ちょっと霧雨の中でしたが、すでに夏鳥たちが勢揃いして、キビタキ、オオルリ、サンコウチョウ、クロツグミ、カッコウなどがあちこちで囀(さえず)っていました。彼らはこれからつがいをつくり、子育てを始めます。

林の中でアカハラに出会いました。アカハラというと、かつては夏の歌い手として、この季節に信州の森に行くと、ごく普通に出会える鳥でしたが、近年、数を減らしています。軽井沢で録音機を仕掛けて森の鳥の声を録音している知人によると、軽井沢ではアカハラがほとんどいなくなったということです。他の鳥は減っていないのに、なぜアカハラだけが減少したのかはよくわかっていません。もしかすると、越冬地での森林火災や開発の問題があるのかもしれません。

一方、一年中、日本に住んでいるスズメやカラスやシジュウカラなどの留鳥たちは、すでに繁殖を終えて、あちこちで幼鳥を連れている姿を見かけます。今年はヤマガラ研究のために学術許可を取って、私の住んでいる埼玉のニュータウンに隣接する雑木林に、巣箱をたくさん架けました。4月から数日ごとに巣箱を回って、彼らの繁殖経過を調べていましたが、巣箱を利用してくれたヤマガラやシジュウカラたちは子育てが終わって、ヒナが巣立っていきました。今は遅れて繁殖に入った(多分、一回目を失敗した)鳥たちがいくつかの巣箱で抱卵中です。

梅雨の晴れ間を見つけて、野外に鳥を見に出かけましょう。家族や少人数で、マスクなどの感染対策をして、鳥を探しているだけでは、コロナに感染したり、他人にうつしたりする危険はほぼありません。ワクチン接種も始まっています。静かにコロナが過ぎるのを待ちましょう。

アカハラ
アカハラ

キビタキ
キビタキ

大高取山にて
大高取山にて

過去のメッセージ

プロフィール

日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一

ワシ・タカ類を守ることは、生態系を守ること

那須野が原那須野が原

この時期、私は月に数日アカマツの森に入ります。かれこれ30年以上続けているオオタカの繁殖状況を調べるためです。調査地は栃木県北部、那須連山の麓に広がる那須野が原。

今から40年前の1980年代初頭、この地域では、オオタカのヒナが巣から持ち去られるという密猟が横行していました。この時、日本野鳥の会栃木県支部が始めた密猟監視活動に参加したのが、私とオオタカとの出会いでした。

その後、活動対象はオオタカからワシ・タカ類全般へ、活動内容も密猟防止から生息環境や生態系の保全へ拡大しました。現在では、活動組織は特定非営利活動法人「オオタカ保護基金」となり、栃木県を中心に、ワシ・タカ類をシンボルに、生物多様性の保全、人と自然が共生する持続可能な地域づくりなど、幅広い活動を行っています。私は、その代表も務めています。

日本野鳥の会では、現在シマフクロウ、チュウヒ、サシバなどのフクロウ類やワシ・タカ類の保護に力を注いでいます。これらは絶滅危惧種であるとともに、自然界の食物連鎖の中で最上位に位置することから、彼らが生息する生態系の指標種でもあります。

当会では、シマフクロウ、チュウヒ、サシバの保護を通じて、日本の豊かな森林、湿地・草原、里山を守ります。ご支援を、どうぞよろしくお願いします。

オオタカの成鳥
オオタカの成鳥

調査風景
調査風景

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