2021年8月3日 更新
夏、真っ盛り。猛暑の中、皆さまいかがお過ごしですか?
コロナが一向におさまる気配のないまま、オリンピックが始まってしまいました。この日に向けて練習を積み重ねてきたアスリートの皆さん、聖火を手に走る日を夢見てきた聖火ランナーの皆さん、海外の人たちに日本らしいおもてなしをしようと待ち構えていた大会ボランティアの皆さん、ほとんどの競技が無観客になってしまった寂しい大会に、各人が各様の複雑な思いを抱えておられると思います。
私は多くの専門家が言うように、このようなパンデミックの中での開催には無理があったと思っています。オリンピックは平和の祭典であり、全世界の人にとっての祝祭です。しかし医療が逼迫し、大勢の人が亡くなっているまさにその時に、人々の心に”TOKYO2020”を祝う気持ちが生まれるでしょうか。早い時期に、この祝祭に責任を持つ人たちによる中止の決断が下されるべきであったと思っています。
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7月はじめ、ヤマガラの調査をかねて屋久島に行ってきました。屋久島ではちょうど梅雨あけになりました。屋久島は標高1,936mの宮之浦岳を筆頭に、冬には数mの積雪がある山塊がつらなる山岳島です。屋久島にはいわゆる固有種はいませんが、本土とは異なる鳥相を持っています。
7月屋久島にて
たとえば屋久島には本土ではどこにでもいるシジュウカラがいません。そのかわり山の上の方にはヒガラがいます。コマドリやミソサザイも標高の高いところに生息しています。低地林では、夏にはリュウキュウキビタキ(本土のキビタキの亜種)やサンコウチョウ、アカショウビン、ヤブサメ、ホトトギスもやってきて繁殖します。隣の種子島にはヒバリが生息しているのに屋久島にはいないこと、またホオジロの繁殖分布の南限であることなど、生物地理学的にはとてもおもしろい島です。
屋久島の低地の常緑広葉樹の森はヤマガラたちの天国です。どこに行ってもキビタキの声に混じって、ヤマガラの巣立った若鳥たちの声が聞こえていました。ヤマガラが好きなエゴノキも本土のものより大きめの実をたくさんみのらせていました。
屋久島では樹齢1,000年以上のスギを屋久杉と呼びます。山の中には江戸時代に伐採された直径3mを超える大きな切り株も、あちこちに残っていました。縄文杉やウイルソン株もそうですが、これらの切り株の樹齢は3,000年を超えていたと思われます。悠久の時を生きてきた屋久杉たちは風格にあふれ、見るものを圧倒します。まだ若い千年杉たちも、苔むした森の中でさらにこれから数千年の時を生きていくのでしょう。
暑い夏とコロナの感染が早く終わって、涼しい秋風の吹く季節を待ち望んでいます。
風格ある屋久杉
夏が来ました。
私の住む栃木の里山では、日中はアブラゼミやミンミンゼミが、朝夕はヒグラシが大合唱を聞かせてくれます。そして、田んぼのイネも青々と大きく育ちました。
私は、林に囲まれた山間の小さな田んぼで無農薬・無化学肥料で米づくりをしています。田んぼに入れる水は、上流にあるため池の水を山際を流れる土水路(小川)を利用して、田んぼに引き入れています。このような構造をした田んぼは管理や耕作は大変ですが、林と田んぼ、池、土水路、田んぼがつながっており、生きものにとって住みやすい環境になっています。
山間の田んぼ(田植えの頃)
夏の朝、田んぼ畦に佇み、田んぼの中をのぞくと、いろいろな生きものがいるのが見えます。水際でじっとしているのはトウキョウダルマガエル。よく見ると、オタマジャクシから成体になったばかりの子ガエルがたくさんいます。水の中に目を移すと、小さな魚が群れで泳いでいます。ミナミメダカです。まさにめだかの学校。そして、田んぼの底でじっとしているのはタイコウチ。近づいてくるメダカを狙っているのでしょう。さらに、土手の草むらからはカエルを狙ってアオダイショウがはい出し、空ではノスリがネズミやヘビを狙って旋回しています。食物連鎖の下位の生きものから上位の生きものまで、多様な生きものでにぎわう田んぼ。
そんな生きものを育む田んぼは子どもたちにとっても最高の遊び場になります。私が運営に携わる「サシバの里自然学校」では、夏休みに子ども対象のキャンプを開催しています。それに来る子どもたちの中には、生きものにさわったことがない子、泥に入ったことがない子もいます。しかし、最初は恐る恐る水辺に近づいた子が、田んぼに入れば、水や泥に足をとられながらも嬉々として、生きもの探しに夢中になります。
そんな時、自然とふれあえる田んぼを作って良かったとつくづく思います。自然豊かな田んぼや畑は、生きものだけでなく、子どもたちにとっても、心が解放される場、のびのびできる空間なのです。里山は、命を育む大切な場所です。
夏の田んぼと生きもの探しに夢中の子どもたち