公益財団法人 日本野鳥の会

トップメッセージ 2022年3月

2022年3月10日更新

日本野鳥の会 会長 上田恵介

季節は春

はかなき春の花々

ウグイスも鳴き出し、季節は確実に春に向かっています。皆さま、コロナに負けずに、お元気にお過ごしでしょうか。今年も日本野鳥の会への温かいご支援、本当にありがとうございます。

関東の3月はじめ、ロウバイやウメはもう盛りを過ぎて、これからはマンサクやコブシが里山を彩る季節です。一方、雑木林の地面に目をやると、地上にひっそりと咲いているスプリングエフェメラルと呼ばれる一群の花々があります。エフェメラルは直訳すると「はかないもの」といった意味なので、「はかなき春の花々」でしょうか。

スプリングエフェメラルの花々の中でも、フクジュソウやカタクリは有名ですが、セツブンソウはあまり知られていません。2月の節分の頃、林の中にひっそりと咲く白い花です。どこかに咲いているのでしょうが、私も野外ではまだ見たことがなかったので、先日、都内にある自然教育園(目黒区)に植えられているのを見に行ってきました。遊歩道のすぐ脇にある花に気づかず通り過ぎる人もたくさんいましたが、小さな白いセツブンソウの花たちは、元気に自己主張しながら咲いていました。

セツブンソウ
セツブンソウ

今年は特に北日本では記録的な積雪が記録されました。まだ雪に閉ざされた地域もあると思います。雪国に住んでおられる会員のご苦労を思いますが、雪の下ではスプリングエフェメラルたちが、じっと春の訪れを待っています。春の1日、小鳥たちの声を聞きながら、明るい林の中を、花たちを探して歩き回ってみるのも良いのではないでしょうか。

まだ雪の残る笠山山頂にて
まだ雪の残る笠山山頂にて

フクジュソウ
フクジュソウ

ウクライナのひばり

と、こう書いている時に、ウクライナにロシアが軍事侵攻したというニュースが飛び込んできました。戦争とは、人が不条理に死ぬことです。子供も、母親も、老人も、弱い立場の人たちから、命が次々と失われていくのが戦争です。何とか戦争を止める力になりたいとの思いは募りますが、何もできない自分の無力さを感じる日々です。

いま、戦火にさらされているウクライナの凍てついた大地にも、春になるとヒバリの声が響きます。ウクライナには春分の日に、ヒバリの形をしたパンを焼く習慣があるそうです。焼いたパンは家族や親しい人たちで分け合ったり、木の枝に吊るして、春の訪れを祝うのだそうです。ウクライナの子供たちが、家族揃ってひばりパンを食べられる日が、一日も早く訪れることを心から祈っています。

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プロフィール

日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一

冬の森を整備

里山再生のために

私が運営にかかわるサシバの里自然学校は、約5ヘクタールの森林に囲まれています。自然学校を開校した2016年当初は、その大部分は高さが2mを超えるアズマネザサに覆われており、人が立ち入ることができないような状況でした。もともとは薪炭林として管理されていたものが、利用されなくなって放置された結果、このような状況になってしまったのです。それを、自然学校のスタッフやボランティアの皆さんと一緒に除伐や下草刈りを行い、今では林床が開けた明るい森林が多くなりました。その結果、チゴユリなどが増え、キンランなど希少な植物も花をつけるようになり、里山らしい生態系が戻ってきました。

しかし、周辺にはまだまだ放棄された森林が広がっています。そこでこの冬は、田んぼ脇のマダケやアズマネザサに覆われた森林を町、地権者、NPOで協定を結んで、整備を進めることにしました。

ため池や水路の水がまだ凍っている寒い朝、家族連れや大学生、社会人など、たくさんのボランティアの皆さんが集まってくれました。そして、ひたすらタケやササを伐り、運び出し、森林内外の所々に積み上げていきました。1時間も作業をすると体は温まり、汗さえ出てきます。こんな作業を1日数時間、1週間ほど行った結果、0.6ヘクタールのうっそうとした森林を明るい森林に変えることができました。


林床に光が届くよう、タケを伐って運び出す


ボランティアのみなさんと力を合わせて

夏鳥を迎える季節

もう1か月もするとサシバが戻ってきて、その後にはキビタキやサンコウチョウもやってきます。夏鳥たちが里山に帰って来る前に、何とか間に合いました。どうぞ夏鳥の皆さん、すみやすくなった森林においでください(ただ、整備後すぐに生態系が豊かになるわけではないので、これはちょっと誇大宣伝かな)。お待ちしています。

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