2022年7月4日 更新
皆さま、お元気でお過ごしですか? コロナがなかなか収束しない上に、この暑さに熱中症の心配も加わって、いやはや大変な夏ですね。
私は病気もしないし、家族全員がインフルエンザにかかっても、一人だけかからない自然免疫の強い人間ですから、コロナウイルスが多少飛んでいる空間にいても、感染はしないという自信(?)があるので、戸外を歩くときにはマスクはしていません。
けれど免疫システムには、個人ごとに大きな変異があるので、なかなか「こうだ」とは、一般化できません。ウイルスに強い人もいるし弱い人もいます。あまりナメているとかかってしまうかもしれないので、今は4回目のワクチンを接種しようかどうか迷っているところです。
6月初め、北海道北部にあるサロベツ原野に行ってきました。朝の温度は4°C、風も強くて、やっぱり北海道は寒いなと思えるサロベツでしたが、現地でシマアオジ保護に取り組んでいるNPOのHさんの案内でシマアオジの生息地を案内してもらいました。
サロベツ原野にて
しかしこの日出会ったシマアオジはたった1羽のオスだけでした。今のところ、道内では他にシマアオジの生息地は知られていないので、もしかするとこの1羽が、現在の北海道にいる最後の1羽なのかもしれません。シマアオジのオスは湿原にはえたヤナギのブッシュの上で、1羽で囀っていました。メスの姿が見えなかったので、メスがきているのかどうか心配でした。もしメスが来なかったら、このオスが最後の1羽で、シマアオジは日本から絶滅してしまうのではないかという思いが湧き上がってきました。
1羽だけ確認できたシマアオジのオス サロベツにて2022年6月
シマアオジは、昔は北海道全域の湿原に、ごく普通に見られる種類でした。苫小牧市のウトナイ湖周辺でも網走の原生花園でも、湿原に行けばたくさん囀っていたものでした。それがここ20年足らずの間にどんどん数を減らし、気がつけば、かつての生息地のどこに行っても見ることのできない鳥になってしまっていました。国際自然保護連合は本種を絶滅危惧ⅠA類に指定しました。
シマアオジの減少は北海道だけではなく、フィンランドなど、ユーラシア大陸の北部の繁殖地でも起こっています。その原因は繁殖地の環境悪化ではなく、渡り途中の中国における大量捕獲だと言われています。中国では、秋に大群で通過するシマアオジを捕獲して、食用にする習慣が長年続いていました。中国政府は研究者の指摘を受けて、シマアオジをパンダやトキと同じく国の国家重点保護第一級野生動物に指定し、国内での密猟の取り締まりを強化して、保護に乗り出しましたが、いったん壊滅的なまでに減少したシマアオジの個体群が復活できるかどうかは、到底、楽観できない現状です。
ハマナスの花の咲く北の原野のあちこちで、ノゴマやオオジュリンと一緒にシマアオジが歌っている光景が一刻も早く復活することを願っています。
ノゴマの囀りが響きわたるように、シマアオジの歌声が復活することを願う
「兎(うさぎ)追いし かの山 小鮒(こぶな)釣りし かの川」。童謡「故郷(ふるさと)」の一節です。
フナは農村地域の川や農業用水路、ため池など身近な場所にすんでいることから、昔から人々に親しまれてきました。また食用にもなり、「鮒の甘露煮」を食べたことがある人も多いと思います。しかし最近では、めっきり見かけなくなってしまいました。
関東地方には、釣りの対象種として放流されたゲンゴロウブナ(通称ヘラブナ)を除くと、ギンブナとキンブナの2種類のフナが生息します。このうちキンブナは特に個体数が激減しており、国のレッドリストでは「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されています。
フナは春になると親魚が水路などから水田に移動して産卵します。水田は水が温かくて稚魚の餌となるプランクトンが多く、水深も浅くて大型魚が生息しにくく、さらに稲がサギなどの捕食者からの隠れ場所になり、フナにとっては絶好の繁殖場所なのです。しかし、近年では、水田の整備などによって水路と水田の段差が大きくなって分断されてしまい、フナが行き来できなくなってしまったことが、減少の大きな原因と考えられています。
今年生まれの稚魚
このような中、私の住む栃木県市貝町の川にはキンブナが生息していることがわかりました。そこで、水田でお米を生産しながらキンブナを育て、保全と利用を進める「キンブナプロジェクト」が始まりました。
我が家の田んぼでもその取組に参加しており、ちょうど今は卵から生まれた稚魚が田んぼの中を泳ぎ回っているところです。先日の田植え体験の時にも観察できました。秋の稲刈りまで田んぼで育てたあと捕獲し、その後に水産資源や種の保護のために川へ放流したり、市貝町の豊かな里山や農業をPRするためにお弁当の総菜などに加工したりして、利用します。
4月に亡くなられた柳生博・当会名誉会長は、「確かな未来は懐かしい風景の中にある」という言葉をよく語っておられました。「私たちが進むべき未来は、人と自然が共存している里山などの在り方がヒントとなる」という意味です。そんな未来を「キンブナプロジェクト」を通じて市貝町に創っていけたらと思っています。