日本野鳥の会とバードライフ・インターナショナルは、刺し網漁による海鳥の混獲回避に効果があり、かつ漁獲量に影響を与えない方法を開発するため、2019年に、国内でも海鳥が数多く生息する天売(てうり)島周辺および羽幌(はぼろ)沖で洋上実験を行いました。実験を行うにあたり、北るもい漁業協同組合と、北海道海鳥センターよりご協力をいただきました。また、Kingfisher財団から、当事業への助成をいただきました。
A)LEDライト
ケースに入れたLEDライト(水中では緑色のライトが自動で点灯し、水からあげると消灯する)を刺し網に取りつけて使用する。ケースの長さは18㎝、ライト、ケース、電池の総重量は200g。
B)布製パネル
海水を吸わない軽量な布製パネル(60cm x 60cm)を刺し網に取りつける。
いずれも、実際の出漁時に、実験網(LEDライトまたはパネルの装着有り)とコントロール網(LEDライトまたはパネルの装着無し)を同時に使用し、効果の比較と実験網の使い勝手の検証を行った。実験後には、所定の用紙に、網の設置・水揚げ日時、水深、魚種別水揚げ量、網にかかった海鳥の情報を記入・提出していただいた。
A)LEDライトを使用した実験
全長910mの網のうちの210mを実験網とし、その上部にLEDライトを10m間隔で取りつけた。ライトの影響を受けないよう、490mの網を挟んで、残る210mをコントロール網(実験網と比較するための、何も取りつけない網)とした。1回の操業で網を海中に仕掛けている時間は気象条件により異なるが、22~90時間であった。
B)パネルを使用した実験
全長140~840mの網のうちの、70mを実験網とし、4m間隔で計18枚のパネルを取りつけた。続く70mをコントロール網(実験網と比較するための、何も取りつけない網)とした。残る0~700mの網は、漁師さんの判断によりつけられた。網を仕掛けている時間は気象条件により異なるが、1回の操業につき20~90時間であった。
A)LEDライトを使用した実験
全長3075~3600mの網のうちの、225mを実験網とし、その上部にLEDライトを10m間隔で計23個取りつけた。ライトの影響を受けないよう、200m以上の網を挟んで、続く225mをコントロール網(実験網と比較するための、何も取りつけない網)とした。その先に、漁師さんの判断により網が取りつけられた。網は午後に仕掛けたものが深夜に引き上げられ、仕掛けている時間は1回の操業につき9~11時間であった。
羽幌町の実験Aでは、4回行った結果、実験網、コントロール網の両方に海鳥がかかった。LEDライトつきの実験網の混獲数計5羽に対し、コントロール網(ライト無し)では計7羽であった。混獲率(混獲数/網の長さ(km)/24時間)は、LEDライトつき0.68に対し、コントロール網は0.96であった。
羽幌町の実験Bでは、4回行った結果、パネル付きの実験網の混獲数計4羽に対し、コントロール網(パネル無し)では3羽であった。混獲率は、パネル付き1.66に対し、コントロール網は1.24であった。
なお、実験A、Bで混獲が確認された海鳥は、ケイマフリ、ヒメウ、オオハム、シロエリオオハムであった。
天売島での実験では、LEDライトつきの実験網、コントロール網のどちらにも海鳥はかからなかった。
実験回数に限りはあるが、以上の結果からはLEDライト、パネルによる混獲回避のはっきりした効果は見られなかった。
なお、実験網・コントロール網のどちらでもない網(漁師さんが取りつけた網)でも海鳥の混獲があり、その数は合計15羽(羽幌町13羽、天売島2羽)であった。
2.漁獲量への影響
実験回数が少なかったため、はっきりとは言えないが、LEDライトをつけた網に魚が多くかかることがあり、ライトによる集魚効果が考えられる。
・英文報告書 Gillnet Bycatch Mitigation Report(PDF/1.82MB)