公益財団法人 日本野鳥の会

世界一斉個体数調査(2022年)

2022年5月13日

クロツラヘラサギ世界一斉センサス集計結果(2022年)

日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会

東アジアの各国、地域が協力して毎年1月に実施している「クロツラヘラサギ世界一斉センサス」(主催:香港バードウォッチング協会(HKBWS))の2022年の調査結果がまとまりましたのでお知らせ致します。

この調査は、絶滅が危惧されているクロツラヘラサギの越冬個体数と分布を把握するために日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど東アジアの自然保護団体が参加し、毎年実施しています。2022年の調査は1月7日~9日にかけて行なわれました。

クロツラヘラサギの国内での越冬地は、九州や沖縄など西日本が中心です。2022年の調査は、日本クロツラヘラサギネットワーク、日本野鳥の会の会員を中心に1都10県52か所において、計61名の協力者を得て行なわれました。

1.2022年クロツラヘラサギ世界一斉センサス調査結果の概要

2022年のクロツラヘラサギ世界一斉センサスは1月7日~9日にかけて行なわれ、各国、地域からの報告に基づき、香港バードウォッチング協会(HKBWS)が取りまとめを行ないました。
その結果、2022年の調査では、東アジア全体で前年より940羽増えて、6,162羽が確認されました(18.0%増)。

東アジア地域での主要な越冬地は台湾で、3,824羽が観察され(22.1%増)、全体の約62%を占めています。
2022年に観察個体数が増加した地域は、台湾の3,824羽(22.1%増)を筆頭に、日本で683羽(19.8%増)、中国本土で1,136羽(11.2%増)、后海湾369羽(9.8%増)、韓国37羽(8.8%増)、ベトナム88羽(7.3%増)で、新たにマレーシアで2羽の越冬が確認されました。マレーシアでの確認は本種にとって南方での新しい記録であり、本種が東南アジア地域の広い地域に生息できる可能性を示唆しています。

減少傾向が見られたのはマカオの22羽(45羽→22羽、51.1%減)で、越冬環境の保全が必要です。フィリピンでは前年に1羽が観察されていますが、2022年には観察されませんでした。

クロツラヘラサギの観察個体数は、2019年に4,000羽、2021年に5,000羽、2022年には6,000羽を超えました。約50年前の深刻な個体数の減少から、現在回復しつつあります。

(HKBWSによる2022年世界一斉センサスの集計をもとに作成)

表1. 地域別のクロツラヘラサギの記録数
場所 2020年
調査
2021年
調査
2022年
調査
前年比
(2022年-2021年. 羽数)
前年比
(2022年/2021年. %)
台湾 2,785 3,132 3,824 692 +22.1
后海湾(香港、深セン) 361 336 369 33 +9.8
中国本土 1,034 1,022 1,136 114 +11.2
日本 544 570 683 113 +19.8
ベトナム 60 82 88 6 +7.3
マカオ 40 45 22 -23 -51.1
韓国 37 34 37 3 +8.8
タイ 0 0 1 1
カンボジア 0 0 0 0
フィリピン 3 1 0 -1 0
マレーシア 0 0 2 2
合計 4,864 5,222 6,162 940 +18.0

(HKBWSの集計に基づく)

2.日本におけるクロツラヘラサギ一斉センサス調査の結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会

2022年、国内では昨年より113羽多い、計683羽が確認されました(19.8%増)。熊本県が最も多く、223羽が観察され、次いで、福岡県173羽、佐賀県87羽、鹿児島県69羽、山口県52羽、宮崎県40羽等の順で観察されました。西日本以外では、愛知、東京、茨城で少数が観察されています。

図1.日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移
図1.日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移

図2.クロツラヘラサギの県別記録数の推移
図2.クロツラヘラサギの県別記録数の推移

表2.県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移
表2.県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移(画像クリックで拡大)

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