2020/02/13
熊本県玉名市の横島干拓は、有明海に面し、昭和中期に造成された干拓地で、農業がとても盛んな場所です。米作りに関する歴史や文化が、文化庁が認定する「日本遺産」に認定されています。
マナヅルとナベヅルは人が稲作を行うことで発生する落穂や二番穂を主要なえさにしています。横島干拓では約10年前に米作りが本格的に始まってから、ツルの越冬が見られるようになりました。毎年20羽前後のマナヅルが越冬し、集中化が問題になっている鹿児島県出水市以外の越冬地の中では、最多クラスを誇ります。500ha以上と広大で平坦な農地が広がっていることも、ツルが好む環境です。
干潟を農地に作りかえたことで、失われた自然もある一方、ツルのように農業をうまく利用してすみついた生きものもいます。このような人の暮らしと生きもののつながりを地域の方に知っていただくため、昨年度から横島小学校でツルと地域のなりたちや、産業との関係についての授業を実施しています。
今年度は5回のシリーズで3年生の授業として実施しました。まずは身近な野鳥をテーマにした授業からはじまり、ツルと地域に関する授業、最後は横島町で開催される「玉名いだてんマラソン2020(横島いちごマラソン)」で、子どもたちがこれまでに学んだ地域の魅力をチラシ等にして参加者に伝えることになりました。教室には、これまでの授業で習った野鳥の写真が掲示され、学校のホームページにはデジタル図鑑もできました。こんなに野鳥の勉強ができる学校はそうないかと思います。
ツルと地域に関する授業は、2020年1月23日に日本野鳥の会熊本県支部、横島校区まちづくり委員会、横島町文化財保存顕彰会と共同で実施しました。はじめにナベヅル・マナヅルの生態や現状、農業との関係についてクイズを行い、その後、バスに乗って横島干拓に行ってツルを観察したり、国の重要文化財に指定されている干拓施設を見学しました。
子どもも先生も真剣にメモしつつ、わぁわぁ盛り上がったり、自然に質問が出たりと良い学びのスタイルだったと思います。
数日前から雨が続き、この日も霧で視界は悪かったのですが、行動観察シートを使って、ツルの行動やしぐさの意味、成鳥・幼鳥の違いなどを観察しました。
見学に使ったバスは、昨年度は当会で借りましたが、玉名市役所に相談したところ、授業の意義を感じて、今年度は市役所が用意してくださいました。市内のほかの学校でも野外学習の際にバスが使えるようになったそうです。この取り組みをきっかけに、市内の子どもたちの行動範囲が広がり、実際に見て・感じて学ぶ機会が増えるのであれば、嬉しい限りです。
※日本遺産HP
米作り、二千年にわたる大地の記憶~菊池川流域「今昔『水稲』物語」~
※横島小学校HP
「横島町で観察できる野鳥」
授業の様子もブログに載っています https://es.higo.ed.jp/yokoshimaes/
(写真:日本野鳥の会熊本県支部東としこ)