北海道に生息し、絶滅のおそれが極めて高い希少な野鳥「シマフクロウ」。より多くの方にシマフクロウのことを知っていただくため、生態や保護活動について紹介する小冊子『こんばんはシマフクロウ』を作りました。ぜひお申込みください。
シマフクロウは極東地域に狭い分布域を持ち、日本では北海道に生息します。全長70cm、翼を広げると約180cmの世界最大級のフクロウです。河川および湖沼で魚類やカエルなどを捕食し、広葉樹の大木の樹洞に営巣します。
20世紀初頭までは、北海道全域に分布していたのですが、森林伐採による営巣木の減少と河川改修や砂防ダム建設による餌の魚類の減少等により、現在は、北海道東部の知床、根室、十勝、日高地域などで見られるだけになりました。北海道本島の生息数は約100つがい、200羽以上で、絶滅のおそれが最も高い絶滅危惧ⅠA類に指定されています。このうちの半数近くは、良好な自然環境が保全されている知床地域に生息しています。
知床地域では自然木の樹洞に営巣し、川に天然遡上する魚などを食べて暮らしています。しかし他の地域は大木や餌が少ないため、多くのシマフクロウは巣箱や給餌用生け簀などに頼って生きています。2019年時点で、国や民間などにより巣箱が約2百個、給餌用生け簀は10ヶ所に設置されています。それでも年に30羽ほどのヒナしか巣立ちませんので、餌不足でヒナを育てられないつがいが多くいると考えられます。
これまでの保護活動の結果、つがい数は、3~4年で10つがい程が増えるようになってきましたが、巣立ちしても分散できる河畔林は少なく、無事につがいになっても、子育てできるほどの餌がある場所は少ないため、繁殖に失敗するつがいも多いようです。
人間の生活圏に近い場所では、交通事故や電線での感電事故に遭って死ぬものがあります。釣り人や心無い撮影者などにより、採食や繁殖が妨害されている生息地もあります。
生息地が分断・孤立化していることで、繁殖地から巣立った若い個体がうまく分散することができず、近親交配が起こりやすい状態にあることも懸念されています。
日本野鳥の会では1987年に北海道阿寒郡鶴居村に「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設し職員を常駐させました。同年、北海道根室市で約8haの湿原を買い上げ、当会所有の野鳥保護区を設置。これにより、北海道東部地域での自然保護活動へ本格的に取り組み始めました。
その後、1995年には根室市より春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターの業務を受託、職員を常駐させ、根室地域での活動を拡大しました。2004年には根室地域でシマフクロウが生息する13haの森を購入、初めてシマフクロウの野鳥保護区を設置しました。
2006年には春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター内に野鳥保護区事業所を開設。専従職員を配置してシマフクロウの保護活動を強化しました。2009年には、タンチョウの第一号野鳥保護区である持田野鳥保護区東梅の隣接地に同事業所を移設。生息地保全活動や普及活動の拠点としました。その後、タンチョウやシマフクロウの分布域が道東地域から日高山脈以西に拡大してきたことを受けて、2020年には苫小牧市のウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター内に事務所を移設。道内のネイチャーセンターに勤務する当会職員と連携してこれまでの活動を継続するとともに、今後の保護活動が重要となる道央地域での活動もできる体制を整備しています。
日本野鳥の会では、野鳥の生息地の保全を目的として、土地の購入や所有者との協定の締結により「野鳥保護区」を設置しています。最初の保護区を設置した1986年以降、これまでに北海道東部のタンチョウが営巣する湿原や青森県のオオセッカ生息地、沖縄県のノグチゲラ生息地など43ヶ所3,599ha(2020年1月現在)を保護区にしました。これらの保護区を設置するための土地購入資金や管理資金は、個人や企業からのご寄付や会費を財源としています。
シマフクロウを守るための保護区は2004年から設置を始め、現在ではオホーツク・根室・釧路・十勝・日高管内の生息地に広がり、12つがいの生息地の保全に携わっています。総面積は1,104haで東京ディズニーランド22個分の広さになりました。
野鳥保護区の詳しくはこちら
シマフクロウが巣をかけるためには、樹齢三百年以上の大木が必要とも言われます。現在はそのような大木がないため巣箱で代用していますが、未来ではシマフクロウが自然の大木に巣をかけられるよう、森づくりに取り組んでいます。
2009年からは、生物多様性の向上と炭素吸収による地球温暖化防止にも役立つ植樹事業「シマフクロウの森を育てよう!プロジェクト」を実施しました。オホーツク地域と根室地域の当会野鳥保護区で、個人や法人からのご協賛をいただきながら広葉樹の森づくりを進めています。詳細は下記をご覧ください。
現在、環境省によって、人工の巣箱の設置や給餌用の生簀による人工給餌が行われています。
当会の保護区でも、シマフクロウが繁殖を継続するためには、樹洞が不足していたり、餌が十分ではない生息地もあります。このような保護区には、人工の巣箱や餌の確保のため給餌用生け簀を設置し、シマフクロウの繁殖を助ける活動を行なっています。
■シマフクロウへの給餌活動
保護区パトロール日誌>シマフクロウ
シマフクロウをより身近に感じて頂くため、様々なグッズを製作して普及活動に取り組んでいます。これらのグッズによる収益は、シマフクロウをはじめとした野鳥や自然環境保護の活動財源に充てさせていただきます。
また、野鳥保護区設置のためのご寄付や、植樹へのご協賛も募集しております。詳細は以下からご覧ください。