カンムリウミスズメ
(英名)Japanese Murrelet
(学名)Synthliboramphus wumizusume
ムクドリほどの大きさ(全長24cm)の海鳥です。冠羽と頬が黒く、後頭部は白で、白黒のはっきりした鳥です。よく潜水し、水中を飛ぶように泳ぎます。一生のうちのほとんどを海の上で過ごし、陸上に上がるのは、繁殖期のわずかな期間だけです。
日本で繁殖するウミスズメ科の鳥は7種類いますが、このうち6種類は北日本や北海道周辺の亜寒帯を主な分布域としています。唯一カンムリウミスズメだけが黒潮や対馬海流の影響のある暖帯海域に生息しています。知られている繁殖地の北限は、石川県の七ツ島、南限は伊豆諸島の鳥島です。最大の繁殖地は宮崎県の枇椰島で約3000羽と推定されています。そのほか、伊豆諸島や福岡県の筑前沖ノ島の小屋島、三重県の耳穴島、高知県の幸島が知られています。日本以外では韓国南部の島で繁殖が確認されており、日本周辺にしかいない鳥といえます。
繁殖地は、無人島の崖や急な斜面の岩と岩の隙間、木の根元、地面のくぼ地などです。12月になると繁殖地となる島の周辺海域に姿を見せ始めます。3月下旬にニワトリの卵よりも少し小さなタマゴを1~2個生み、雌雄交代で約1ケ月抱卵します。ヒナは孵化するとわずか1,2日のうちに親鳥の声に導かれて海へ向かいます。親鳥からの給餌も洋上で行われ、その後、次に陸に上がるのは、繁殖のために再び繁殖地に戻ってくる時になります。
打ち上げられたゴミ
推定個体数は約5千羽、多くても約1万羽とされ、ウミスズメの仲間では今絶滅が最も心配されている種類です。国指定天然記念物、IUCN(絶滅危惧Ⅱ類)、及び環境省レッドリスト(絶滅危惧Ⅱ類)になっています。減少要因としては、近年の釣りブームや海洋レジャーの拡大により、繁殖地に人が立ち入るようになり、卵や雛が無造作に踏まれたり、撹乱によって親鳥が巣を放棄することが挙げられます。また、釣人が放置するゴミやまき餌に、カンムリウミスズメの捕食者であるカラス類が誘引されることがあります。繁殖地にドブネズミが入り込んだ福岡県小屋島のように群全体が壊滅的なダメージを受けた島もあります。この他、刺し網による混獲や油汚染による死亡例が報告されています。