この洋上風力発電事業の計画区域には、カンムリウミスズメの繁殖地の1つ神子元島が含まれています。
下田市の神子元島および伊豆諸島の新島、神津島、三宅島周辺は、この地域の中で、カンムリウミスズメの繁殖個体数が特に多い地域で、世界最大の繁殖地である宮崎県枇榔島に次ぐ規模の繁殖地となっており、絶滅の恐れのあるカンムリウミスズメの保護を進める上で重要な場所となっています。特に神子元島は本州沿岸部に残された貴重な繁殖地でもあります。
図1.伊豆諸島周辺海域における繁殖期の分布
図2.伊豆諸島周辺海域における繁殖地
カンムリウミスズメは繁殖期にだけ島に上陸し、巣で2個の卵を産みます。抱卵交代は1~3日おきに夜間に行い、約30日で孵化、孵化後1~2日ほどでヒナは海へと旅立っていきます。この時期、親鳥は交代で海に出た際に採餌をしますが、どの辺りまで餌を取りに行くかは全く分かっていませんでした。そこで、2018、2019年に神子元島でGPSロガーを用いて繁殖個体の採餌海域の調査を行ったところ、3個体から約17~40時間のデータを得ることができました。その結果、神子元島で繁殖を行うカンムリウミスズメは島から10km近く離れた場所まで採餌に行っており、伊豆半島と神子元島の間の海域を利用していることがわかりました。
図3.神子元島の繁殖個体3個体の採餌海域
また、2010、2011、2013、2019年の繁殖期に行った日中の洋上個体数調査で、神子元島周辺の個体が確認された位置データをまとめた結果、神子元島と伊豆半島南部との間の海域を広く利用していることがわかっています。
図4.神子元島周辺の繁殖期洋上個体数調査における個体確認地点
図3,4に示した赤い線の中が南伊豆洋上風力発電事業実施想定区域とされています。当会の調査結果から、カンムリウミスズメは、区域内を利用して生息していることが明らかになっており、当会は、計画の変更を事業者に強く求めています。