2015年に実施したIBAモニタリング調査によると、回答があったIBAサイトの約9割から何らかの保全上の脅威があるという情報が寄せられました。
IBAへの脅威で最も件数が多かったものは、「外来種の影響:侵略的外来種、問題のある在来種、遺伝子」でした。脅威として挙げられた外来種(問題のある在来種)は、環境ごとに異なり、島嶼部では、ネズミ類やノネコなどの移入種による捕食が問題となっていました。湖沼・潟湖では、ブラックバスなどの外来魚やアライグマによる生態系の攪乱が問題となり、森林では、ニホンジカの食害による植生変化や、オオハンゴンソウの侵入が、主な問題として挙げられました。
次に多かった脅威は「人間活動による影響」でした。活動の内容は、島嶼では釣り人の影響(釣り人が残すゴミによる外敵の誘引等)、湖沼・潟湖では釣り人の影響および水上スポーツ、干潟ではマリンスポーツ、森林では登山やスノーモービル、と環境によって異なるものの、釣りやアウトドアレジャーによる利用の増加が生息環境の攪乱につながっていることがわかりました。
このほか、島嶼では地震による津波と火山の噴火、森林では地震による崩落と火山の噴火などの「自然災害の影響」が脅威の上位に上がりました。
また「気候変動・異常気象」「汚染」「自然災害の影響」といった脅威は、サイトの広範囲にわたり影響を与え、選定基準種の個体数に高い割合で影響を与えるおそれがあることがわかりました。
件数やエリアは限られているものの、「エネルギー・資源開発」は、今起きている脅威で緊急度が高く、急速に進行していることがわかりました。
回答があったIBAサイトの65%にあたる83サイトで、選定基準種の鳥類のカウント調査が行われており、その結果、43サイト(34%)で、個体数の減少が見られました。選定基準種に影響するような生息環境の変化は、サイトの約半数にあたる61サイト(48%)で起きていました。
生息環境の変化の内容(要因)として、最も多かったものは「外来種の影響・問題ある在来種」であり、外来種や問題ある在来種は、サイトの環境変化を引き起こし、選定基準種の個体数に大きな影響を与えていることが示唆されました。また、「工事・開発の影響」「災害」「レクリェーション活動」も、サイトの環境や選定基準種の個体数に影響を与えていることがわかりました。
生息環境の変化の内容は、多岐にわたっており、選定基準種の個体数の動向との関連も含めて、引き続きモニタリングしていく必要があります。
シカの食害防止柵(大台ケ原) 写真:川瀬浩
回答があったIBAサイトの8割で何らかの保全活動が行われており、中でも環境教育(79サイト)、モニタリング調査(78サイト)が多くのサイトで行われていました。環境教育活動には探鳥会を含み、計42件行われていました。モニタリング調査の具体例も、63件が鳥類モニタリングと、鳥類を対象とした教育・調査活動が多く行われていました。一方で、脅威として多く挙がった外来種への対応が行われているサイトは44サイトにとどまり、問題はあるものの、対策が十分に取られていない可能性があることがうかがえました。
保全のための人材育成(34サイト)、エコツーリズムなどの経済活動を通じた保全(33サイト)は、全体の3割以下にとどまり、今後、保全活動の幅を広げ、充実させていく分野となることが期待されます。
詳細はIBAモニタリング2015報告書をご覧ください
IBAモニタリング(PDF 867KB)