JP111 藤前干潟(ふじまえひがた)
愛知県:名古屋市
位置 |
N 35°04′ E136°50′ |
面積 |
770ha |
環境構成【干潟(砂泥質性)/ヨシ原】
写真:大畑孝二
名古屋港内に注ぐ庄内川、新川、日光川の河口部に位置している。藤前干潟周辺で近年記録された鳥類は172 種に及び、このうちシギ・チドリ類は41 種に達し、その中にはクロツラヘラサギやカラフトアオアシシギなど国際希少野生動植物種も記録されている。当干潟は、南北半球間を渡る鳥類の生息を支えている重要な干潟であると考えられている。
シギ・チドリ類、ガンカモ類以外でも、ヨシ群生地があることからオオヨシキリ等の草原性鳥類、日光川下流部が淡水域となっていて、水田地帯もあることから淡水性シギ、サギ、ガンカモ類、弥富野鳥園等の緑地があることから森林性鳥類やミサゴ、ハヤブサ等の猛禽類も生息している。干潟にはマキガイ綱ニマイガイ綱などに属する132種の底性生物が多数生息する。
選定理由
A4i |
トウネン・ハマシギ・キアシシギ・ソリハシシギ |
保護指定
サイトの一部(10~49%)に法的な担保がある。
<保護指定の内容>
国指定鳥獣保護区(藤前干潟)
<その他>
ラムサール条約登録湿地、東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ参加地
保全への脅威
- 藤前干潟隣接の「飛島干潟」の開発問題
- 堤防の改修工事
- アナジャコ採集業者やシジミ採り業者による無秩序な操業は、干潟の生態系に限定的ではあるが影響を与えていると思われる。
- 大地震が発生した場合、津波による大きな被害が予想される
- 外来種の影響(特に貝類・甲殻類などで外来生物が増えてきている。また、ヒガタアシなどが侵入する恐れもある。)
- 水質汚染(都市河川の流入による水質汚濁に加え、洪水対策で行った河道の掘り下げ、港湾区域の浚渫による貧酸素の発生)
- 隣接地で高速道路の建設があり、鳥獣保護区内の一部(日光川の淡水域)の鳥類に部分的な影響がある。
- 後背地となる水田地帯が、近年大型ショッピングセンターの出店や宅地開発により激減している。
保全活動
- 環境管理:実施者(藤前干潟クリーン大作戦実行委員会)
内容:藤前干潟の保全や干潟に流入する河川の流域で活動するする市民団体等により構成されている。2003年から毎年春と秋の2回「藤前干潟クリーン大作戦」と称し、市民や大学、企業、行政など2000人規模が参加するゴミ拾いイベントを実施。藤前干潟沿岸やヨシ原などに漂着・投棄されたゴミを回収し、普及啓発を兼ねた環境管理事業を実施している。
- 環境教育活動:実施者(NPO法人藤前干潟を守る会)
内容:ラムサール条約登録湿地である藤前干潟において、自然環境に親しみ理解を深めるための一般向け環境学習プログラム「干潟の学校」を月2回ペースで継続的に実施。また、ゴールデンウイークの大潮にあわせて、干潟に親しむ祭りとして「藤前干潟生きものまつり」を開催。
学校や企業など、干潟の体感学習プログラムの案内やコーディネート。
ラムサール条約でも提唱されている「ワイズユース(賢い利用)」を実践するために、ボランティア「ガタレンジャー」の養成、次世代を担う子どもたちを対象に年間を通した環境学習プログラム「ガタレンジャーJr.」の実施など人材育成 その他、藤前干潟の情報を発信するホームページや会報のほか、干潟の生物調査を実施。外部組織と連携した各種イベントも開催されている
- 保全のための人材育成活動:実施者(NPO法人藤前干潟を守る会)
内容:ボランティアガイド「ガタレンジャー」を養成し、干潟の案内や調査など、藤前干潟への来訪者、体感学習の対応をしている。次世代を担う子どもたちを対象に年間を通した環境学習プログラム「ガタレンジャーJr.」を2009年から実施。子どもたちの目線で干潟の環境学習を行い、国内外の湿地等で活動する子どもたちと交流するなど見地を深める活動をしている。
- 法律制定、政策、規制:実施者(環境省)
内容:国指定藤前干潟鳥獣保護区及び特別保護地区(2002年指定)
ラムサール条約湿地(No.1200)(2002年登録)
- モニタリング調査:実施者( 環境省・名古屋市・NPO法人藤前干潟を守る会・名古屋市鳥類調査会)
内容:モニタリングサイト1000シギチドリ類調査(環境省/NPO法人藤前干潟を守る会)、藤前干潟鳥獣保護区鳥類調査(環境省)、渡り鳥調査隊(名古屋市/名古屋市鳥類調査会(名古屋市野鳥観察館)
- その他
飛島干潟保全の活動(藤前干潟協議会)
*施設
- ラムサール条約湿地藤前干潟稲永ビジターセンター
- ラムサール条約湿地藤前干潟藤前活動センター(2005年3月オープン)
※長期の保全目標
- 生物及び環境についてのモニタリングが定期的に実施され、その成果が藤前干潟及び周辺地域における生態系の保全活動及び動植物の保護管理等に適正に反映されていること。
- 干潟生態系に負荷を与える各河川の水質汚濁や、貧酸素水の影響を回避し、本来の生態系における生物間の相互関係が保全されるとともに、生物の再生産等の過程が保全されていること。
- 干潟の利用にあたっては、湿地の生態系を維持しつつバランスのとれた保全を進めるために人為圧によるオーバーユースが回避されていること。
- 藤前干潟周辺の農地や養魚場の食害等に対して、因果関係等を十分に考慮し、鳥類の保護と被害防止の両面について適切かつ効果的な対応が図られていること。
- 多くの市民や来訪者が湿地の保全や環境問題について理解が深められるよう、稲永ビジターセンター及び藤前活動センターや野鳥観察館を拠点とした自然観察の場や環境学習プログラムの整備、専門家の配置、環境ボランティアの育成等がなされていること。
※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 830KB)
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