公益財団法人 日本野鳥の会

英国・スコットランドで開催されたCWW2019に参加、RSPB・SNHを訪問しました

RSPB-Scotland(英国鳥類保護協会スコットランド)の訪問

2019年8月23日に自然保護室の浦・主任研究員がエディンバラ市にあるRSPB-S事務所を訪問し、2050 ENEGY VISION作成の背景や方法について学びました。

スコットランド政府は2045年までに全電力需要の100%を再生可能エネルギーでまかなう計画を掲げているのに対し、RSPB-Sは野鳥の生息地を保護しながらその目標を達成するためのビジョンを作成しました。各種自然エネルギーに対し野鳥のセンシティビティマップを作成し、影響が低い場所に適切な発電方法を配分していくもので、その結果、沖合域の浮体式洋上風力発電が野鳥への影響が低く、2045年の全電力需要予測の50%が発電できると分かりました。

Scottish Natural Heritage(スコットランド自然遺産局)の訪問

8月26日はスターリング市にあるSNH事務所を訪問し、複数の陸上風力発電施設の建設が鳥類の生息にどのような影響を与えるかを評価する累積的影響評価のあり方について学びました。

累積的影響評価の方法について、まずは評価対象となる鳥の種と地域を選定し、①定性的記述法、②単純加算モデル、③単純個体群動態モデル、④複合的個体群動態モデル、⑤個体ベースモデルから評価手法を選びます。このうち日本で実行可能なのは①と②、また、ごく一部の種および地域では③が可能と分かりました。風力発電の建設が増大している日本でも、累積的影響評価手法の検討は急務と当会は考えます。

Conference on Wind energy and Wildlife impacts 2019への参加

8月27~29日はスターリング大学で開催されたCWW2019に参加しました。欧州の環境コンサルタントや研究者など約400名が参加した国際学会で、3日間にわたり風力発電が野生生物に与える影響等について学術発表が行われました。そのうちNGOからの参加者は30名程度でしたが(写真1)、発言や質問の内容、自由集会の開催など学会内での存在感は大きいものでした。また、学会では累積的影響評価に関するセッションが2つあり、欧州では一つの大きな研究テーマになっていることが分かりました。

そのCWW2019では当会から浦・主任研究員が「繁殖期におけるチュウヒの行動と飛翔高度」についてポスター発表をしました。内容について、繁殖期のチュウヒはオジロワシなど他種の個体を追い払う時、雌雄ペアで飛翔する場合、営巣地周辺で行う旋回上昇の際に、また、最近増加する小型風車に対しては時期、時間、場所に関わらずチュウヒの行動範囲周辺で風車へのバードストライク等の発生が高まることが分かりました。

学会終了翌日は英国最大の陸上風力発電所Whiteleeウインドファームを訪問しました。ここには215基の風車が建っていますが、周辺地域でもっとも鳥類への影響が少ない場所を選んだうえで、建設にあたりファーム内外で希少鳥類のための保護区を整備したことで、地域全体では建設前よりコチョウゲンボウ、ハイイロチュウヒ、コミミズク、クロライチョウ、ダイシャクシギの繁殖数が増えているという話でした。日本でもそのような風力発電所の建設があってもよいのではと思います。


写真1

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