公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)宮古岩泉風力発電事業についての要請書

日野鳥発第2016-014号
平成28年5月12日

岩手県知事
 達増 拓也 殿

日本野鳥の会岩手県連絡協議会
会長 似内 功孝

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤 仁志
141-0031東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

(仮称)宮古岩泉風力発電事業についての要請書

 平素より日本野鳥の会が進める自然保護活動についてご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、宮古市から岩泉町にまたがる地域に計画されている「(仮称)宮古岩泉風力発電事業」について、すでに2016年2月3日付で当協議会から岩手県知事宛に事業計画に反対の要望書を提出しています。その後、対象事業実施区域(以下、計画地と言う。)の近傍に新たに、イヌワシの営巣地を発見しました。そして、過去の釜石広域ウインドファームでのイヌワシのバードストライクの事例から考えても、今回の風力発電施設の建設がイヌワシの生息可能性に影響を与えると考えられるので、事業者である株式会社グリーンパワーインベストメントに、計画中止を求めているところです。これについて、事業者に対し、計画を見直すことを県行政として適切に指導してくださいますこと、強く要請いたします。

1. 計画地について
 計画地は、北上高地の主峰、早池峰山の北に位置する兜明神岳から堺の神岳に至る稜線上にあり、風車は一杯森、サクドガ森から害鷹森、上松森に至る尾根上に設置される予定です。そこに大型風車(定格出力2850kw、全高136.5m、ブレード長51.5m)を70基も建設するという、岩手県内ではかつてない大規模なもので、森林の伐採、取付け・作業道路の拡張と新設、風車の設置場所の造成、送電線の敷設など広範囲に環境改変(環境改変面積62.14ha)をもたらすものです。

2. 計画地から1500mにイヌワシの営巣を確認
 計画地はイヌワシ、クマタカの主要な狩場で、探餌飛翔もしばしば記録されています。平成28年3月に日本野鳥の会宮古支部は、和井内放牧場の北部、堺ノ神沢の崖にイヌワシの巣を発見しました。その時点ではヒナはいませんでしたが、新しい松の枝があったことから、最近になって営巣に失敗したものと考えられます。また、平成27年夏季には巣立ったばかりのイヌワシ幼鳥1羽の飛翔が同所で見られていることから、ここは繁殖の可能性が非常に高いと判断されます。

3. バードストライクの恐れ
 現在の風車には有効なバードストライク対策が存在せず、すでに釜石広域ウインドファームでは設置開始からわずか4年弱で、イヌワシの国内初のバードストライクが発生しました。その後、釜石広域ウインドファームでは、有効なバードストライク防止策がとられないまま、稼働を継続しています。本来であれば、有効な対策、保全措置が講じられた後に、稼働を再開すべきです。

 以上のことから宮古岩泉風力発電事業の計画見直しについて、適切に行政指導をしてくださいますようお願いいたします。 

以上

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