公益財団法人 日本野鳥の会

北九州響灘洋上ウインドファーム(仮称)に係わる計画段階環境配慮書に対する意見書を提出しました

「北九州響灘洋上ウインドファーム(仮称)に係わる計画段階環境配慮書」に対する意見書

日本野鳥の会北九州支部 支部長代行 前田伸一(公印省略)
(公財)日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一(公印省略)

1.藻場の喪失による鳥類への影響について
 本事業における計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)に示されている事業実施想定区域には多くの藻場が存在するが、それは、魚類の産卵及び稚魚の成育の場として重要である。風力発電施設建設に係わる工事による藻場の消失は、魚類の生息地が破壊され、個体数の減少を招くなどの影響を引き起こし、鳥類のヒメウ、ウミウ、ミサゴ等の採餌環境が悪化することが予想されることから、そのような影響を予測し、評価できるような計画をすること。

2.建設工事による鳥類への影響について
 工事の着工から運転開始まで数年かかると思われる。工事期間中は、大型クレーン船や作業船の頻繁な稼働や往来による海鳥の生息地放棄と移動の阻害の発生が予測される。特に、海上を採餌、休息、移動で利用する種への影響を予測し、影響の発生が予測される場合には必要な影響回避策を検討すること。

3.海域の生態系について
 経済産業省が作成した発電所に係わる環境影響評価の手引を参考として、海域の生態系については配慮事項に選定しないとあるが、海鳥への影響(衝突死、生息地放棄、移動の阻害)は海域の生態系に少なからず影響を及ぼすと思われることから、事業実施想定区域とその周辺の海域の海鳥および生態系に及ぼす影響を予測し、必要な影響回避策を検討すること。

4.鳥類への影響低減策について
 鳥類に風車の存在を認知させ、風車を回避させる効果的な方策が見当たらないといわれる状況ではあるが、以下の方策を検討すること。
・紫外線が出る塗料(コアジサシにはよく見えるといわれる)の使用。
・鳥類への忌避効果があるといわれる、脊髄反射で反応してしまう音響の発生(海域では騒音問題になりにくい)。

5.配慮すべき主な鳥類の種について

1)オオミズナギドリ(日豪・日ソ渡り鳥条約掲載種)
 白島で集団繁殖する本種については、NEDOによる洋上風力発電等技術研究開発での実証研究によれば、ブレードの回転範囲(高度M)の飛翔は確認されておらず、そもそも事業実施想定区域内での 飛翔は少ないとされているが、響灘地区の陸域では2件の風車への衝突死が発生している。海上においても、気象条件によっては高度Mを飛翔し、事業実施想定区域内を飛翔する可能性があると推測されることから、可能な限り、霧・強風等の荒天時にも調査を実施し、影響を評価すること。

2)ミサゴ(環境省RDB(以下、国と言う):準絶滅危惧種)
 響灘地区の陸上と洋上の風車では、すでに3羽のミサゴが風車に衝突死しているが、何の対策も実施されていない。洋上における大規模な風力発電施設の建設は、さらにミサゴの衝突死が発生する恐れがあり、そのことは本事業の配慮書内でもその可能性を認めているところから、本事業において実効性のある衝突防止策を実施すべきである。

3)ハチクマ(国および福岡県:準絶滅危惧種)
配慮書では、従来の関門海峡→風師山→足立山ルートを主要なルートとし、かつ高空を飛翔するため風車への衝突死等の影響を受ける可能性は低いとしているが、
近年の若松区高塔山における個体数調査により、総数の多くが高塔山・響灘ルートを渡っていることが分かっている。
●事業実施想定区域に近い白島の上空を飛翔するハチクマは、90羽以上が確認されている(2016年9月福岡県委託調査日本野鳥の会北九州支部の調査より)。
●飛翔高度において、当支部会員が、高空ばかりでなく比較的低空(高度M)を飛翔する個体を複数目撃している。
●ハチクマの渡りルートおよび飛翔高度は、毎年の観察結果から、気象条件等によって大きく変わることが分かっている。従来のデータよりも、近年の観察データを参考にすること。

【参考1】若松区高塔山における秋期渡りハチクマ個体数

2014年秋期 2015年秋期 2016年秋期
若松区高塔山 3002 8218 6135
(出典:日本野鳥の会北九州支部 荒井)

(※高塔山での調査個体数は、ハチクマが集結する長崎県五島市福江島の同年秋期調査個体数の約40%~60%である。)
 よって、事業実施想定区域を飛翔するハチクマに留意して調査し、洋上風力発電事業がハチクマに与える影響を予測し、配慮すべき種として明記すること。
 なお、第4.3-9図にあるハチクマの渡り飛翔ルート(H23.秋)では、藍島上空を通過後に、事業実施想定区域を迂回しているが、この飛翔ルートは、地元で普段から観察している者として、不自然さを感じる。

4)カラスバト(国:準絶滅危惧種、福岡県:絶滅危惧Ⅱ類、国指定天然記念物)
 本種は島嶼に生息する留鳥だが、白島(男島)での調査において、約30羽のカラスバトを確認した(2015年9月福岡県委託調査日本野鳥の会北九州支部調査より)。約30羽すべてが白島に留鳥として生息する個体とは考えにくく、島嶼間を移動していると推測できる。
 白島は事業実施想定区域外ではあるが、カラスバトが周辺海域上を移動していると考えられるため、洋上風力発電事業がカラスバトに与える影響を予測し、配慮すべき種として明記すること。
5)カンムリウミスズメ(国:絶滅危惧Ⅱ類、福岡県:絶滅危惧ⅠA類、国指定天然記念物)
 「ジオロケータにより明らかになったカンムリウミスズメの移動経路」(山口典之 他、2014年)では、カンムリウミスズメが唐津湾沖合の烏帽子島から響灘→豊後水道→青森県を通ってほぼ日本一周していることが分かった。また、2014年5月には、事業実施想定区域付近での洋上センサスにおいて、カンムリウミスズメ5羽が確認されている(環境省委託調査 三洋テクノマリン)。
 洋上風車がカンムリウミスズメに与える影響としては、特に建設工事中における生息地放棄が懸念されるため、その影響を予測し、配慮すべき種として明記すること。

6)コアジサシ(国・福岡県:絶滅危惧Ⅱ類、国際希少野生動植物種)
 本種は毎年のように繁殖地を移動するなど繁殖場所が安定せず、保護が進まないといわれるが、近年は響灘地区に多数飛来しており、2016年には響灘ビオトープ内で一つがいが繁殖に成功した。本種の採餌範囲を把握するためにも、事業実施想定区域およびその周辺で飛翔行動調査を実施し、洋上風力発電事業が本種に与える影響を予測し、配慮すべき種として明記すること。

7)チュウヒ(国:絶滅危惧ⅠB類、福岡県:絶滅危惧ⅠA類)
 響灘埋立地の5区画は本事業の風車組み立て・積み出しゾーン計画地であるが、この5区画で本年(2017年)もチュウヒが営巣し(参考2)、採餌場所として利用している区画である。特に冬期は採餌のため頻繁に5区画を飛翔していることが分かっている(響灘ウインドエナジーリサーチパーク建設事業環境影響評価準備書 平成26年11月より)。
 5区画は本事業の実施想定区域外ではあるが、関連事業としての風車組立・積み出しゾーンがチュウヒの生息に重大な影響を与えることは明らかであると推測されるため、響灘地区における最重要種であるチュウヒに与える影響を予測し、配慮すべき種として明記すること。


【参考2】5区画におけるチュウヒの繁殖状況
2010年 ヒナ3羽の確認
2011年 3羽の巣立ち確認
2013年 2羽の巣立ち確認
2014年 巣材運び確認
2017年 2羽の巣立ち確認
(日本野鳥の会北九州支部の調査より)

8)カモメ類、カモ類、ウ類、カイツブリ類、サギ類
 海域と陸域を往来するこれらの種は、特に冬期において響灘地区の海上、沿岸、陸上で観察される。中でもカモメ類は、国内外において風力発電施設への衝突事例が多く、普通種と呼ばれる種に対しても洋上風力発電事業が与える影響を予測し、適切な配慮をすること。また、響灘埋立地及び白島とその周辺海域、沿岸部で記録されている種の中で、ヒシクイ、ツクシガモ、オシドリ、カンムリカイツブリ、シロエリオオハム、ヒメウ、クロサギ等の重要種が存在することに留意すること。

6.白島(福岡県特別鳥獣保護区)の鳥類について
 白島は島嶼としての生態系を保ちながら、石油備蓄基地と共存する貴重な場所である。この白島ではオオミズナギドリが集団繁殖し、2014年の繁殖期には周辺海域において337羽、夏季には364羽のオオミズナギドリが確認されている(環境省委託調査 三洋テクノマリン)。さらに秋季は2倍以上に増えている(本州からの個体が加わるためと推測)。
 白島は事業実施想定区域外ではあるが、ハヤブサやミサゴの重要種も繁殖する島嶼であり、その貴重性を考慮し、この機会に調査を行い、洋上風力発電事業が白島の鳥類および生態系に与える影響を予測するべきである。なお、白島に飛来するオオミズナギドリは毎年その数に変動があると思われるので、飛来数が少ないときに調査を行うと、過小評価のおそれがあることに留意すること。
 さらに、建設工事中においては、作業船等からのネズミ類が白島へ侵入しないよう留意すること。

7.その他
1)響灘地区の陸域で発生した7種16羽の衝突死においては、これまで何の対策も実施されず、今後も衝突事故が繰り返される恐れがある。また、生息地放棄や移動の阻害が起きれば、響灘地区の生物多様性に重大な影響を及ぼすと思われる。
 この度の洋上風力発電計画では、この反省を生かすために、影響が発生した際の保全対応策を策定しておくなど、抜本的対策の実施が望まれる。

2)この度の事業計画において、鳥類への配慮がなされず、影響の低減策が不十分な場合は、建設基数の削減を含む、事業の見直しを行うこと。

以上

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