公益財団法人 日本野鳥の会

「(仮称)米原風力発電事業 計画段階環境配慮書」に対する意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第2017-081号

「(仮称)米原風力発電事業 計画段階環境配慮書」に対する意見書

平成29年12月15日 提出

項目 記入欄
氏名 公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
住所 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
配慮書についての環境の保全の見地からの意見

 この度、貴社が作成された「(仮称)米原風力発電事業」に係る計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

 貴社が作成された「(仮称)米原風力発電事業」に係る計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)に示されている事業実施想定区域(以下、想定区域と言う)は、「滋賀県イヌワシ・クマタカ保護指針」による「イヌワシ・クマタカの分布想定図」および「イヌワシ・クマタカの保護および生息環境保全ゾーン」と重なっている。クマタカは実際に想定区域を含む周辺地域で繁殖しており、また、想定区域に近い霊仙では過去にイヌワシの繁殖が確認されており、現在もイヌワシの生息が確認されている。イヌワシが営巣していると考えられる場所から想定区域までの距離は、イヌワシの平均的な行動圏距離に満たない2km程度しかないため、想定区域はイヌワシが利用する可能性が高い場所であり、繁殖活動域と想定区域は重複すると考えられる。
 国内では繁殖数が少なく、国の天然記念物および国内希少野生動植物種等に指定されているイヌワシと国内希少野生動植物種等に指定されているクマタカは、その保護が必要な種であるが、特に現存する生息地の保全が優先される。過去にイヌワシの生息地周辺で風力発電施設を建設した後に、改変された事業用地が採餌場所となったことでバードストライクが生じた例があることから、特にイヌワシについては風車設置による影響は避けられないと考えられる。また、「滋賀県イヌワシ・クマタカ保護指針」には保護方策の基本的な考え方として、「事業の計画等の段階でも影響の回避・低減等の保全措置を検討・実施し、その生息に対する影響を可能な限り少なくなるように努めるものとする」とある。この指針に照らせば、当該案件は事業の計画、つまり配慮書の段階で影響を回避すべきであり、事業の中止が必要と考える。さらに、想定区域にはサシバ、ハチクマ、ノスリにとって国内で重要な渡り経路が存在するが、風車建設によりこれら渡り経路にどのような影響が出るかは、これまでの国内の知見からでは適切に評価できない。
 以上のことから、貴社が作成された配慮書における風力発電施設の建設計画は、想定区域の選定段階から見直すべきである。

以上

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