公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)紫波・花巻風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する配慮書を提出しました

平成30年1月 22 日

電源開発株式会社  御中

「(仮称)紫波・花巻風力発電事業 計画段階環境配慮書」について以下のとおり意見書を提出いたします。

日本野鳥の会もりおか
事務局 柴田俊夫
(〒020 – 01115岩手県盛岡市館向町10-3)

(公財)日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
(〒141 -0031東京都品川区五反田三丁目9番23号丸和ビル)

 岩手県内陸部の奥羽山脈沿いの地域には山林・牧野・農耕地・河川・湖水等が混在した多様で豊かな自然環境が存在し、一年を通して多種多様な野鳥や野生動物が生息しております。実際に貴社の配慮書にも示されているように、本事業の事業実施想定区域の周辺ではイヌワシ・クマタカ等をはじめとする様々な猛禽類等が多数生息していることが確認されており、事業実施想定区域に接する山王海ダム、葛丸ダム、およびその水系は多数の野鳥の貴重な生息地、繁殖地、あるいは越冬地となっているために、岩手県の鳥獣保護区に指定されております。さらに事業実施想定区域に近接する北上川流域はガン・カモ・ハクチョウなどの渡り鳥の大規模で定期的な渡り経路があり、また、天然記念物オジロワシの越冬地も存在します。従ってこのような地域に大型の風力発電施設の建設を行うことは、事業実施想定区域を含む周辺地域に生息する多数の動植物、特に野鳥の生息に重大な影響を与えるのではないかと私ども日本野鳥の会もりおかは強く危惧しております。この点を踏まえ、今回、私どもは貴社より提出された配慮書で示されている事業実施想定区域内における風力発電施設の建設に対して、当初案の見直しを含む計画の大幅縮小・変更を強く求める意見を下記のように求める次第です。

(1)この地域には、岩手県レッドデータブックに掲載されている希少猛禽類や渡り鳥を含む数多くの鳥類が生息しています。従って、まずは対象事業実施区域及び周辺地域で長期的かつ丁寧な環境調査を実施し、この地域の貴重な自然環境を正しく把握してください。さらに環境調査および影響評価の結果を公表したうえで、その結果を貴社の風力発電事業の計画にきちんと反映することを強く求めます。

(2)今回、貴社は配慮書に「ゼロオプションはない」と記載しています。しかし、この地域の自然環境を保全することは、野鳥の保護上において不可欠なものです。私ども日本野鳥の会もりおかはこの点を十分に考慮したうえで、貴社の本風力発電事業の計画中止または大幅縮小、及び下記の点に特に配慮した代替案を検討することを強く求めます。

・現在の対象事業実施区域は山王海ダム、葛丸ダム、北上川等に接しており、水系に関わる自然環境に影響を及ぼす可能性が大きいため、水系への影響が軽微となる他の地域を対象事業実施区域とすべきです。

・多数の風車を限られた地域に列状に配置すると野鳥の生息可能範囲を狭めることとなり、結果的に山の稜線を猛禽類や大型鳥類が飛翔する際にバードストライクが発生する可能性を高めます。その点で今回の事業計画に示されている14基という風車の数は、当該地域での受入可能容量を大幅に上回っていると考えられるため、計画する事業規模を大幅に縮小することをご検討願います。

・前述のように、既存の3枚羽型の風車はバードストライクを起こす可能性が高く、実際に平成18年には岩手県内の他の地域の風力発電施設でイヌワシのバードストライクが確認されています。従って、このような過去の事例を教訓とすべきであり、垂直軸型風車などバードストライク・バットストライク等の防止を充分に考慮し得る新たな形状の風車の設置に向けて、事業計画を大幅変更するよう強く求めます。

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