公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)留寿都風力発電事業に対する要請書を提出しました

2019年6月6日

インベナジー・ジャパン合同会社
代表 天野 明 様

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一

(仮称)留寿都風力発電事業に対する要請書

日頃より、当会の活動に関しまして、ご理解をいただきありがとうございます。
貴社が昨年8月に環境影響評価準備書を縦覧した(仮称)留寿都風力発電事業に対し、野鳥保護のための対象事業実施区域抜本的見直しの必要性の観点から、下記の通り意見を述べます。

  1. 対象事業実施区域の移動及び事業計画の抜本的見直しについて
    当該事業に係る計画段階環境配慮書および環境影響評価方法書に対し、当会および日本野鳥の会室蘭支部は、BirdLife Internationalが作成した基準により当会が指定したIBA(重要野鳥生息地)およびKBA(生物多様性重要地域)の指定区域内およびその周辺地域での風力発電施設の建設大の中止を要請しておりました。また、北海道知事および経産大臣から「生態系として重要な地域でもあり環境影響評価で回避、十分な低減ができないときは計画の抜本的見直しをすること」と意見が出ています。貴社は準備書の中で風車の設置予定基数を24基から18基に減らし、環境影響の低減をはかっていますが、IBAおよびKBAの指定区域内の動植物の多様性は非常に高く、イヌワシ、クマタカ、ヒグマなどを頂点とする重要な地域生態系のコアエリアであることが既存および貴社による準備書向けの調査結果からも明らかになっています。環境に対し著しい影響を及ぼす恐れが予測されることが明らかであるにもかかわらず、18基もの大型風車を集中して建設することは、重要な自然地域を分断し、野鳥をはじめとする生態系に重大な影響を与えることは明らかです。従って、経済産業大臣等の意見に従い、対象事業実施区域の位置の抜本的な見直しを行い、生物多様性基本法の理念を遵守し、環境基本計画の方針に従って社会的責任をしっかり果たすことを強く要請いたします。
  2. 準備書における鳥類に対する影響予測についての誤りについて
    • 重要な鳥類の中から猛禽類を10種選び、風車への年間衝突数を求めていますが、確認個体数が一番多いノスリについて評価されていません。対象地域を特徴づける生態系の項目において生態系上位種からわざわざクマタカを外して、ノスリを上位種に選択して評価を行っているのにも関わらず、年間衝突数の予測からノスリを外すのは誤りです。
    • オオジシギのブレード接触の影響予測において、オオジシギはブレード回転域(高度M)での飛翔は少ないため影響はほとんどないとしているが、誤りです。当会はここ数年、北海道の各地でオオジシギの行動観察を行っているが、繁殖期間中に盛んにみられるディスプレイフライト時の旋回飛翔は高度50~100mで行われ、他個体との追いかけ合いは10~40mで行われることを確認していることから、オオジシギの風車ブレードへの接触確率は低いものではないと推測します。
    • 「騒音による生息環境の悪化の項目で猛禽類に関する既存の事例(クマタカ)では、重機の稼働や発破音に・・・ほとんど気にする様子なく、工事の影響は小さいと報告されている」と記載し、ミサゴ以降の騒音に関する猛禽類の影響について同じ評価結果が記載されています。絶滅危惧種を含む猛禽類の種ごとにおいて、騒音に対する影響について科学的な知見がないにもかかわらず、評価対象の猛禽類を一括りにして影響評価するのは乱暴ではないでしょうか。もっと慎重かつ科学的に影響評価をすべきです。
    • オジロワシ、オオワシ、クマタカ、イヌワシ、ハチクマの移動経路の遮断・阻害について、繁殖活動や採餌に係る移動経路の一部が阻害される可能性が考えられるとしながら、影響は小さいと評価しています。また、ブレード等への接触は迂回可能な空間が確保されているため、接触の可能性は低減されていると予測していますが、このような影響評価は誤っています。これら猛禽類の繁殖期における日常的な移動経路を遮断、阻害することは、ブレードへの衝突確率を高めるだけでなく、累積される移動距離を増大させることで繁殖コストをあげて繁殖成功率の低下を招くことが予測されるので、そのような観点で影響予測をやり直すべきです。
    • 上位性注目種候補の選出結果について、クマタカは改変区域内での利用がみられないことから選定から外し、ノスリを当該地域の生態系を代表する種に選定したとありますが、実際には風車が建設されるエリアはクマタカの生息地となっていることが地域住民等により確認されています。このことは、貴社の調査でも確認できているにも関わらず、クマタカを選出すると影響評価において貴社にとって不利な予測結果が出るために、故意に外したと思われても仕方ありません。本来はクマタカを上位性注目種として選定すべきだったと考えます。
  3. 準備書に対する住民意見の多さについて
    貴社が作成した準備書に対し、地域住民等による自然環境や生活環境に対する懸念から多くの意見書が提出されていると推測されます。多くの意見書が出されるということは、風車の建設に対し地域住民からの合意を得られていないということと考えます。地域住民の合意を得られていない計画は、中止すべきです。

以上

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