公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)パシフィコ・エナジー南伊豆洋上風力発電事業に係る計画段環境配慮書に対する意見書を提出しました

日野鳥発2019-043号

「(仮称)パシフィコ・エナジー南伊豆洋上風力発電事業 計画段階環境配慮書」
に対する意見書

令和元年9月6日

名前 公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
住所 東京都品川区西五反田3-9-23
丸和ビル

環境影響評価法第3条の7に基づき、環境の保全の見地から次のとおり意見を述べる。

1.全体について

1)事業実施想定区域には、国指定天然記念物で日本のレッドリストで絶滅危惧II類、IUCNのレッドリストではVUに指定されているカンムリウミスズメの繁殖地である神子元島が含まれている。カンムリウミスズメは日本近海および韓国周辺にのみ分布するウミスズメ科の海鳥で、世界での推定個体数は5千から1万羽である。
伊豆半島沿岸の繁殖地は神子元島に限られ、抱卵期には島から少なくとも半径15kmを超える海域を広く利用していることが当会などの調査で確認されており、風車設置予定範囲の特に東側の海域は本種の重要な生息地となっている。したがって、カンムリウミスズメの利用海域(神子元島の周囲少なくとも20㎞圏内)は事業実施想定区域から除外すべきである。

2)配慮書ではゼロオプションは設定しないとされているが、希少種の生息地を含むことから、調査結果を基に環境影響評価を行い、環境影響の回避、低減を検討してなお影響が大きいと判断される場合は事業を中止すべきである。したがって、ゼロオプションは設定すべきである。また、絶滅の恐れの高い希少種が隣接地に生息している場合には、生息地の直接の改変がなくても慎重に対応すべきであり、事業目的にあるような事業の価値を高めるためにもゼロオプションは設定すべきである。

2.個別の項目について

当会は、カンムリウミスズメの利用海域は事業実施想定区域から除外すべきと考えている。また、計画地の適切な選定、見直しのみならずゼロオプションの設定も必要と考えている。以下の意見は、この立場に立った上で配慮書内の記述に対して意見を述べるものである。

4-4(P280)
洋上風力発電施設の設置工事の実施の際に、重要な種および注目するべき生息地、海域の生息する動物について配慮事項に選定されていない。計画熟度が低いことが理由とされているが、早い段階で予測評価を入れることが望ましい。

4-14(P290)
海外の洋上風力発電施設ではウミスズメ類に対する影響として、地形改変などの直接的な生息地破壊だけではなく、洋上風力発電施設が設置されることによる生息地放棄が確認されている。飛翔だけでなく洋上を利用する鳥類についても調査対象とすべきである。

4-22(P298)
南伊豆においてもアカコッコの観察例が報告されているため、詳細な調査を行うべきである。また、カンムリウミスズメについては繁殖地周辺だけでなく採餌海域についても、洋上風力発電施設の設置による影響が懸念されるため、事業実施想定区域から除外するべきと考える。施設の影響による生息地放棄についても懸念される。

4-23(P299)
カンムリウミスズメの繁殖期の採餌トリップについては(公財)日本野鳥の会が調査を実施している。

4-24(P300)
カンムリウミスズメは、同じ営巣地を繰り返し利用する個体が確認されており、一般的に一度決めた繁殖地を繰り返し利用すると考えられている。このことは、繁殖地の移動は困難であることを示唆している。
風車のライトアップについて、海鳥についても光に誘引される種があるため慎重な検討が必要と考える。

4-27(P303)
神子元島周辺の海域は、冬季に日本のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類のウミスズメ、絶滅危惧II類のヒメウが採餌エリアとして利用している。また、島内はヒメウの塒や休息場として利用されている。
注目すべき生息地に挙がっている三宅島新澪池については、利用する主な動物は該当しないと考える。

4-28(P304)、4-75(P351)
海外の洋上風力発電施設では海鳥に対する影響として、バードストライク、地形改変などの直接的な生息地破壊だけではなく、洋上風力発電施設が設置されることによる採餌などの生息地放棄が確認されている。飛翔だけでなく洋上を利用する鳥類への影響についても配慮すべきである。

以上

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