公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)日之影町風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に係る意見書を提出しました

「(仮称)日之影町風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に係る意見書

令和元年9月20日 提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会宮崎県支部 支部長 岩切 久
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一
住 所 ①〒880-0943 宮崎県宮崎市生目台西1-2-6
②〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)日之影町風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書と言う)を縦覧している日之影町風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設を建設した場合、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で国内希少野生動物種に指定され、「環境省レッドリスト」でEN:絶滅危惧ⅠB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)に、また「宮崎県レッドリスト」にも掲載されているクマタカについて衝突死(以下、バードストライクと言う)等の影響が発生する危険性が非常に高く、また、「環境省レッドリスト」に掲載されているサシバなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁効果等の影響を与えることが懸念される。
そのため、計画地およびその周辺において、一般的なものより質、量ともに高めた十分で詳しい調査を行い、クマタカの生息および猛禽類の渡りの状況を把握したうえで、適切な保全措置を講じることを求める。
また、ヤイロチョウ(国内希少野生動物種、絶滅危惧ⅠB類)やブッポウソウ(絶滅危惧ⅠB類)など、猛禽類以外の絶滅危惧度が高い鳥類についても十分な配慮を求める。

理 由

(1)配慮書にもあるとおり、計画地を含むメッシュにおいてクマタカの生息が確認されている。クマタカは過去に風車によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地周辺での風車の建設はバードストライク等の影響が発生する可能性が高く、配慮書の「動物の重要な種への影響の予測結果」でも、「施設の稼働に伴い、バードストライクの可能性はあると予測している。」とある。特に若いクマタカはバードストライクに遭う危険性が高く、繁殖地である当地では毎年の巣立ちの時季に危険が増すと考える。
配慮書の中で、留意する事項として猛禽類や渡り鳥ルートについて調査を実施するとあるが、「建設ありき」の調査であってはならず、バードストライクの回避策をどのように考えるのかその解決策が決まらなければ工事を実施すべきではない。

(2)配慮書及び日本野鳥の会宮崎県支部会員の目撃例によると、計画地は、サシバの重要な渡りルートになっている。秋の渡りでは、四国(高知県)から九州(宮崎県延岡市・日向市)に渡ってきたサシバは、南に行くメインルートからは少し外れるが、西に向かう群もあり、クマタカ同様にバードストライクに遭う確率が高い。春の渡りは秋のルートを逆に通って北へ向かっており、同様に危険である。
これらのことから、計画地一帯にはサシバを中心とする希少猛禽類の渡り経路が存在しており、風車の建設がバードストライクまたは障壁効果による渡り経路の変更といった影響をこれらの鳥類に与える可能性が大きいと考える。

(3)「調査予測及び評価手法」において、「動物の生息状況について文献その他の資料及び専門家等へのヒヤリングにより調査した」とある。専門家へのヒヤリング結果により概略はつかむことができるが、絶滅危惧種のクマタカの生息状況(季節別の飛翔経路・繁殖カ所)等については十分な質、量をもった現地調査をしてもらいたい。

(4)貴社が作成した配慮書では計画地内で猛禽類の他にヤイロチョウ(法:国内希少種、環境省RL:絶滅危惧ⅠB類、宮崎県RL:EN-r)、ブッポウソウ(環境省RL:絶滅危惧ⅠB類、宮崎県RL:EN-r)、ミゾゴイ(宮崎県RL:EN-r)、コノハズク(宮崎県RL:EN-r)、ヨタカ(宮崎県RL:EN-r)、コマドリ(宮崎県RL:EN-r)など絶滅が危惧される野鳥が数多く確認されている。
これらのことから、計画地での風車の建設は、猛禽類を含む多くの希少鳥類の生息に対し、少なからず影響を及ぼすものと考える。

(5)配慮書によればフクロウ、コノハズク、アオバズク、ヨタカなど夜間活動する野鳥も確認されており、このような夜行性の野鳥に対する対策も実施すべきである。

(6)渡り鳥や猛禽類等の鳥類について、バードストライクの重大な影響が避けられないとの結論に至った場合は風力発電機の配置等の検討を行うほか、バードストライクだけでなく、障壁影響による「渡り経路の変更」および「生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)」といった影響についても、影響の回避または低減策を検討すべきである。

以上の理由から、貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上。

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