公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)ウインドパーク天竜風力発電事業 計画段階環境配慮書に対する意見書を提出しました

宛先:(株)シーテック御中

令和元年9月25日

計画段階環境配慮書についての意見書

住所:〒438-0035 静岡県袋井市砂本町3-12
氏名:日本野鳥の会遠江 代表 増田 裕

住所:〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
氏名:(公財)日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一

意見書の提出の対象である配慮書の名称:
(仮称)ウインドパーク天竜風力発電事業 計画段階環境配慮書

[環境の保全の見地からの意見とその理由]
[主旨] 下記の理由により事業実施想定区域の位置および面積について変更を求める。

[全体的必要配慮事項]

  • 想定区域には貴重な野鳥を含む動植物が多く生息し、稜線への大型風力発電機の大規模な設置は、生息地放棄や忌避などによりその生息環境に多大な影響を与えると考えられる。よってその事業規模は動植物などへの影響を必要最小限に留め、また絶滅が具体的になっている種については風力発電機の設置場所の変更が必要である。また、工事の期間について、繁殖期間を避けるべく対策が必要。稜線への設置であることから、猛禽類の渡り時などのバードストライクが大いに懸念され、その影響を抑えるべく極力風車の高さは低く抑えるべきである。

[具体的個別の必要配慮事項] (希少種の存在と絶滅が危惧される種への対応)

特別な絶滅危惧種への配慮
想定区域の直近には静岡県指定の絶滅危惧種ブッポウソウ(絶滅危惧種ⅠA類 CR)がここ20年来毎年同じ場所にほぼ繁殖している(2019年も繁殖と巣立ちを確認)。しかも現在静岡県内繁殖地は1ケ所,1ペアーのみとなっており、その保護が課題となっている。全国的にも環境省により絶滅危惧種ⅠB類に指定されており、岡山県、長野県等では保護活動がなされている。長野県中川町ではリニア中央新幹線線の関連工事の影響で、昨年ブッポウソウが営巣を止め(2018年7月14日信濃毎日新聞 )工事も中断した。本風力発電所の想定エリア北東端からブッポウソウの営巣ポイント(天竜川大輪橋右岸側)までは平面距離で約1.5kmしか離れてなく、ブッポウソウの行動距離はロガー解析で巣箱から3.7km以上離れた場所で塒をとったとの報告(2019年7月14日ブッポウソウ保護フォーラム2019in吉備中央町、「ブッポウソウの子育てと里山での生態について」兵庫県立大学院黒田聖子氏発表)もあり、風力発電所の設置場所と工事エリアの変更が必要であると考える。少なくとも巣から5km以上離れた場所にすべきである。また、工事もそのエリアは避けるべきである。

[その他の絶滅危惧種]

  • その他の絶滅危惧種として、アカショウビン、ヨタカ、サンショウクイ、ヤマセミ、コシアカツバメ、イカルチドリ、ヤマドリ、ハイタカ、ハチクマ、オオタカなどが生息している。
    特にヨタカ、アカショウビンは事業想定エリアでは配慮する必要がある。

[調査への具体的配慮事項]

  • 事業実施に際しては動植物(特に野鳥)については周辺のエリアを含め渡りや繁殖の季節を含む少なくとも2年以上の調査が必要と考える。鳥類については希少種としてクマタカが各所で観察されておりその営巣場所および行動範囲を特定し、設置および工事に際し対策をすべきである。その他の希少種としてはヤイロチョウ、ハヤブサ、チュウヒも周辺および想定区域で当会の調査でも確認されている。
  • また、猛禽類渡りルートであることが考えられ、その調査も今までのデータでは十分ではなく、春と秋を含む2年間の調査が最低必要である。

[その他の必要配慮事項]

  • 鳥類以外への影響について
    1. 景観の問題
      配慮書段階で一般市民にもわかりやすく本事業の内容について告知し、フォトモンタージュ等を用いて事前事後で景観が変わる様子を示したうえで、広く市民の意見を聴取すべきである。
    2. 残骸の問題
      商用運転終了後や事業者の方針変更等で事業継続が難しくなった場合の残骸、どのように風車を撤去するのか、撤去に係る費用等は事業者内で担保できているかどうかを事業開始の条件にすべきである。
    3. 一般市民への配慮
      登山、ハイキング、自然観察、バードウォッチング、野鳥撮影など一般市民が継続的に利用し、楽しめる環境となるように配慮すべきである。
    4. 住民への配慮事項
      神社仏閣・山岳信仰など歴史的エリアについて事前に調査・配慮すべきと考える。

[添付資料]
写真:大輪橋ブッポウソウ営巣(一般への公開は控えてください)

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