第1号様式(第2条の4、第5条、第10条関係)
環境影響評価図書に係る意見書
令和元年11月7日
北九州市長 様
住所 北九州市戸畑区牧山新町2-16第一コーポ松本
東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
氏名 日本野鳥の会北九州支部 支部長 川﨑 実
(公財)日本野鳥の会理事長 遠藤孝一
北九州市環境影響評価条例 第6条の4第1項 の規定により、 配慮書 についての意見書を提出します。
対象事業の名称 | (仮称)白島沖着床式洋上風力発電事業 (株式会社グローカル) |
氏 名 | ①日本野鳥の会道北支部 支部長 小杉 和樹 ②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志 |
環境の保全の見地からの意見 | この度の事業想定区域は、希少な鳥類が多く生息し、鳥獣保護区(特別保護地区)である白島に極めて近距離であるため、生息する鳥類への影響が大きいと予測される。 よって、この度の事業の見直し、もしくは事業想定区域の大幅な変更を行うこと。 以下、別紙1および2に続く |
別紙-1
~事業の見直し、もしくは事業想定区域の大幅な変更を求める理由について~
1.近年における白島及びその周辺の洋上における調査では、白島の陸上で46種、周辺洋上で34種の鳥類を記録しており、そのうち希少種(絶滅・準絶滅危惧種、国内希少野生動植物種、天然記念物)は20種に及ぶ(※1、2)。中でも白島を往来し、周辺の洋上を飛翔する鳥類にとって風車の存在がバードストライク等の重大な影響を及ぼす可能性がある。
2.オオミズナギドリ(日ソ・日豪渡り鳥条約掲載種)は、国内でも数少ない集団繁殖地として毎年白島に多数渡来しており、これまでの調査では、特に白島西側海域での飛翔等が多く確認されている(※1、6)。飛翔高度においては40m以下もしくは40m~120mが多く、本事業計画のブレード回転範囲に重なっている(※6)。そのため、洋上を飛翔して白島を集団で出入りする際に、多数のオオミズナギドリが本事業計画の洋上風車のブレードに衝突死し、さらに、貴重な繁殖地が放棄させる可能性がある。
3.カラスバト(国天然記念物・絶滅危惧種)は、島嶼地域に生息する希少な鳥類であり、白島固有の生物多様性を保全する観点からも重要な種である。これまでの調査によれば、シーズンによって個体数に変化があり(※1、2)、島嶼間を移動していると推定できる。その移動の際に、本事業計画の洋上風車のブレードに衝突死し、さらに生息地を放棄する可能性がある。
4.ミサゴ(準絶滅危惧種)は、これまでの調査で、白島全体で29ヵ所(男島16ヵ所、女島13ヵ所)の営巣地が確認されている(※1)。猛禽類は国内外において風車への衝突死が多く、若松区響灘埋め立て地においてもすでに4羽の衝突死と推定できるミサゴの死骸が発見されている(トビに至っては7羽)(※3)。本事業計画の風車建設によっても同様の事故が発生する可能性が非常に高い。
5.ハチクマ(準絶滅危惧種)は、北九州市の陸域から海域を幅広く渡ることが日本野鳥の会北九州支部の観察により確認されている。白島上空においても、多数のハチクマが渡っていることを確認しており(※2)、気象条件によって渡りコースが変わるハチクマは洋上も重要な渡りコースであることを認識すべきである。また、ハチクマのような滑翔性鳥類は風車を避けることが難しいとも言われ、本事業計画の風車の最大高さ176m・回転直径141mは、ハチクマがブレードに接触するには十分な規模であり、衝突死の可能性がある。
6.ハヤブサ(国内希少動植物種・絶滅危惧種)は、希少種の名の通り、観察できる頻度は多くはないが、白島の女島周辺で繁殖している可能性が高い(※1)。白島周辺を飛翔する小鳥類などを捕食するために急降下および追跡飛翔する際、本事業計画の洋上風車のブレードに衝突死する可能性がある。
7.カンムリウミスズメ(国天然記念物・絶滅危惧種)は、わが国固有種と言える希少な種であり、繁殖地も数少なく、その個体数は5千~1万羽とされ、ウミスズメの仲間では今絶滅が最も心配されている。本種は響灘海域を移動していることが明らかになっており(※1、4)、特に本事業計画の洋上風車建設時において影響を受ける可能性がある。
8.ヒメウ(絶滅危惧種)、ウミウ、クロサギ(準絶滅危惧種~福岡県)、カモメ類は、白島と陸域沿岸部等を往来する際、本事業計画の洋上風車のブレードに衝突死し、さらに生息地放棄の可能性がある。洋上における飛翔高度としてカモメ類の飛翔高度25m~60m、ウミウ25mが観察されており(※5)、波浪高さによってはさらに高度が上がり、衝突確率が高くなる。
この度の事業計画は、北九州市内では類のない生物多様性の島嶼地域として非常に重要な白島と、その周辺洋上の鳥類に与える影響が大きいと言わざるを得ない。上記希少種以外の夏鳥・冬鳥・旅鳥
別紙-2
と呼ばれる種も渡りの途中に白島を利用しており(※1、2)、配慮書の中の「事業想定区域には渡りのルートは見られない」という主張は当たらない。
また、響灘地区の既存の風力発電事業においては、鳥類への実効性ある影響低減策は実施されておらず、この度の事業計画においても期待することはできない。鳥類への影響を未然に防ぐ最も有効なのは、影響を与える場所には風車を建設しない事である。賢明な判断を期待する。
※出典