公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)えりも岬風力発電所環境影響評価方法書に対する意見書を提出しました

令和元年11月22日

「(仮称)えりも岬風力発電所環境影響評価方法書」に対する意見書

〒100-0011東京都千代田区内幸町 1-1-6 NTT 日比谷ビル9F
日本風力開発株式会社
代表取締役社長 塚脇 正幸 様

〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一

貴社が縦覧している「(仮称)えりも岬風力発電所」事業に係る環境影響評価方法書について、希少鳥類保護の視点から下記のように意見を述べさせていただきます。

●全体について
貴社が設定する対象事業実施区域(以下、計画地という)に風力発電施設(以下、風車という)を建設すると、設置に係る工事中の騒音や人の出入りおよび供用後にシマフクロウ、クマタカ、オオワシ、オジロワシ、タンチョウ等の希少種の生息地放棄やバードストライクなどが発生し、その生息および繁殖に影響を与える恐れがあることから、計画地の位置を根本的に見直す必要がある。

●第3章について
〇3.1-27(56)ページ

  • 事業実施想定区域(以下、想定区域という)のメッシュには環境省のセンシティビティマップにおける注意喚起レベルBおよびA3に該当するものが含まれる。予防原則の観点から考えて、環境省が示すような鳥類の脆弱性が高いエリアを計画地として選定すべきではなかった。
  • 渡り鳥について、環境省のセンシティビティマップでは日中、夜間ともに計画地の上空を通過するルートは確認されなかったとあるが、それは単にそのようなデータがとられていないだけで、渡りルートがないと断言できるものではない。計画地周辺の地形等から考えると多くの渡り鳥が飛来、通過する可能性があるため、十分な事前調査を行ったうえで、渡りルートを遮断しないような計画地の配置を行う必要がある。

●第4章について
〇4.3-36(226)ページ

  • 想定区域を可能な限りIBAおよびKBAから除外したため、現段階では重大な影響が回避、提言されていると評価している。しかし、隣接または近接していることで風車建設による悪影響(野生動植物、騒音、振動等)がIBAおよびKBAに及ぶ可能性があることから、IBAおよびKBAから適切な離隔距離をもって計画地を配置すべきである。適切な離隔距離については、IBAを指定した(公財)日本野鳥の会を含めて検討すること。

●第6章について
〇6.2-38(320)~6.2-39(321)ページ

  • ポイントセンサス法による調査について、1地点あたりで出現鳥種が飽和するまでの回数(通常4~5回)を調査すべきである。
  • ポイントセンサス法による調査について、このように開けた環境では周囲半径50mおよびその範囲外でも確認された鳥類を記録すること。
  • 渡り鳥調査について、日の出前後および日没前後だけでなく、日中も調査を行うこと。渡り鳥が通過する時間は場所によって大きく違う(例;愛媛県瀬戸町のハチクマは9月下旬の10~13時頃がピーク)ためである。
  • 渡り鳥調査について、夜間はレーダー調査を実施し、計画地周辺の渡りの実態把握に努めること。襟裳岬周辺には多くの鳥類の重要な渡りルートが存在する可能性があるが、スズメ目やカモ科の鳥類は夜間にも渡りをすることが知られているためである。
  • 渡り鳥調査について、気象条件によって渡りルートや高度が変わるため、調査日数を増やし、できる限り多くの条件下で調査を実施し、計画地周辺の渡りの実態解明に努めること。
  • 希少猛禽類調査について、高性能のレーザー距離計を使用するなどして3次元的な正確な飛翔図を作成すること。
  • 希少猛禽類調査について、月に3日程度の調査では計画地の詳細な利用状況を把握できないので、月に6~8日程度など調査の頻度を増やすべきである。
  • 計画地周辺にはタンチョウおよびシマフクロウが繁殖している可能性がある。そのため、専門家にヒアリングを行って適切な調査方法によって生息状況を把握するとともに、これらの生息に影響を与えないように配慮して調査を実施すること。

〇6.2-57(339)ページ

  • 図6.2-4(12-1)について、場合により営巣適地環境の推定、採餌環境のポテンシャルマップを作成し予測を行う、とあるが、これは場合によりではなく、確実に実施すること。また、ポテンシャルの高い営巣適地や採餌環境は計画地から除外すること。

〇6-2.59(341)ページ

  • 図6.2-4(13)について、年間予測衝突数を0.000000から0.100000までを5段階に分けているが、どのような理由でこのように5段階に分けたのか、また、それぞれの段階における鳥類への影響の重みについて説明すること。

以上

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