公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)北海道(道北地区)ウィンドファーム豊富に係る環境影響評価準備書への意見書を提出しました

令和元年12月27日

Looopリニューアブルエナジー合同会社  御中

「(仮称)北海道(道北地区)ウィンドファーム豊富」に係る環境影響評価準備書について
以下のとおり意見書を提出いたします。

特定非営利活動法人サロベツ・エコ・ネットワーク
代表理事 吉村 穣滋
(北海道天塩郡豊富町字豊富東2条5丁目)

風力発電の真実を知る会
代 表 佐々木 邦夫(公印省略)
(稚内市はまなす2丁目7番18号)

道北の自然と再生エネルギーを考える会
代 表 富樫 とも子(公印省略)
(北海道天塩郡幌延町字下沼853番地1)

日本野鳥の会 道北支部
支部長 小杉 和樹 (公印省略)
(北海道利尻郡利尻町沓形字栄浜142 佐藤里恵方)

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一  (公印省略)
(東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル)

■縦覧方法
環境影響評価図書の公開、一般住民への説明、事業に対する理解が不十分なため、事業実施後に混乱が起こる可能性があります。

1.周知
環境影響評価図書の縦覧・住民説明会の開催・意見書募集の周知は、貴社のホームページに限らず、回覧やポスター掲示、チラシ配布、関係機関のHP上掲載などの協力を得ることで、より多くの人に周知するよう努力すべきです。

2.閲覧方法
図書は縦覧期間や縦覧場所が限られており、インターネット上の閲覧ではダウンロードや印刷ができません。数百ページもある環境影響評価図書を縦覧場所やPC上のみで閲覧しながら、または縦覧場所で図書を確認しながら意見書を作成することは現実的な方法ではありません。図書の内容が実際と齟齬がないか精査することは、環境影響評価の信頼性を確保するうえで極めて重要です。このため閲覧期間に限らず地域の図書館などで図書を常時閲覧可能にし、遠方に在住の方向けに随時インターネットで閲覧・ダウンロード・印刷可能にすべきです。地域住民との合意形成を図るためには、透明性と情報に関する公平性が不可欠です。

3.住民説明会
公告から住民説明会までの期間が2日間しかなく、住民が図書縦覧を知り、図書の内容を確認する前に説明会が終了したことが懸念されます。説明会は住民が参加しなければ意味がありません。以後は公告から説明会までに十分に余裕を持って行うべきです。

■植物
6号機周辺の改変工事によりエゾナミキソウの生育環境が失われることが予測されるため、設置箇所を移動するべきです。移動が難しい場合は代償措置を行い、事後調査で生息調査を行うことよりより改変状況等を確認するべきです。

■鳥類
1.海ワシ類(オジロワシ・オオワシ)
(公財)日本野鳥の会の調査によると、11月から12月にサケが遡上する稚内市の増幌川に滞在した海ワシ類が、河川が凍結してサケが獲れなくなる12月下旬頃に御社の結果と同様の経路で多く南下することが明らかになっています(調査結果は御社に提供済み)。その結果によると、海ワシ類は直線的に南下する御社の11月の結果とは若干異なり、やや旋回し時にはタカ柱を形成しながら、少し滞在しながら移動し、より7-8号機に近い上空を移動経路として利用していることが明らかになりました。従って、日本野鳥の会の結果では海ワシへの影響が御社の結果より大きくなっていることが予測されます。この結果を踏まえて、海ワシの渡り経路を阻害しないように風車の位置を西に移動させるべきです。

2.チュウヒ
図書の図の縮尺が小さいことが原因で、繁殖地周辺におけるチュウヒの動きが非常に見づらいので、拡大図を追加すべきです。平成30年の飛翔軌跡は、月別の記録が載せられていないため判断が難しいですが、繁殖していない平成29年の飛翔軌跡と比較しても飛翔軌跡が多く集中しているため、実際には繁殖していた可能性があります。今後も繁殖や餌場として利用する可能性があるため、チュウヒの巣に近い4号機と5号機、中央部のヤードの位置を巣から十分に離れた位置に移動すべきです。Senzaki et al. (2017)によると工事箇所から2km以内で繁殖に負の影響が出るとされています。工事の際には監視員としての調査員を立てたうえで、チュウヒの繁殖や採餌場としての利用に影響がないか細心の注意を払いながら行うべきです。

■両生類
6号機周辺の改変工事によりエゾサンショウウオの繁殖環境であるヨシ湿原が失われることが予測されるため、設置箇所を移動するべきです。移動が難しい場合は代償措置を行い、事後調査で生息調査を行うことにより生息環境が残っているか等を確認すべきです。

■景観
サロベツ湿原センターの西側にある旧ビジターセンター付近はサロベツの国立公園を代表する景観が見られる場所です。海岸方向の利尻山だけでなく、海岸方向から車で移動してきた際に東側の円山方向に広がる広大な景観が魅力の場所です。風車の建設によりこの円山のスカイラインの上から突き出した風車群が累積的に水平見込み角7.2度の範囲で見えることになり、サロベツ国立公園の資質である雄大な景観が大きく損なわれことが懸念されます。サロベツ湿原センターの管理委託を受けているサロベツ・エコ・ネットワークとしては、現状でも天気の良い日は旧ビジターセンター付近から有明よりも遠く離れた既存のサラキトマナイ風車やオトンルイの風車群が見えるため、サロベツ国立公園の景観が損なわれていると感じています。この状況で、さらに近い場所における風車の建設は景観のさらなる悪化だけでなく、観光資源への影響も懸念されます。その景観を保全するために、スカイラインから突き出た風車の建設は避けるべきです。
豊富温泉の北側に広がる大規模草地は独特の丸みを帯びた丘が連なる周氷河地形上に造成された牧草地です。大規模草地の周りには巨大な人工物がない周氷河地形上の牧草地が広がっています。ここは牧草地として利用されているだけでなく、豊富温泉に近いので豊富町の観光の拠点としても利用されてきました。豊富市街地からはサイクリングロードが大規模草地までつながっており、独特の景観を保全するために、送電線を地下に埋め込むなどの特別な配慮が行われてきました。この独特の景観を求めて、全国から多くの人が訪れ、想像していたような北海道の牧草地の風景であるとして高い評価を受けています。例えば、2016年に開催された韓国人のモニターツアーで道北地方を周遊した結果、最も印象に残った場所が大規模草地でした。毎年多くのライダーや自転車乗りが、大規模草地を訪れます。稚内市の宗谷丘陵にも北海道遺産に指定された周氷河地形はありますが、すでに多くの風車が建設されているため、巨大な人工物がない景観ではなくなっています。このため、大規模草地は昔から歴史映画の戦場ロケ地となっています。撮影に訪れた映画製作会社の人は日本にもこのような景観が残っていたことに驚いていました。その美しい景観を利用して自転車レースのスタート地点とゴール地点として毎年利用されています。2009年のツールド北海道では大規模草地がコースとして利用されました。大規模草地は日中だけでなく、星空の観察地としてとして現在も利用されています。大規模草地から水平見込み角16.3度の範囲で風車が累積的に見えることは巨大建築物がない景観を大きく損なわれ、日中だけでなく、航空灯による夜間の星空観察にも影響が懸念されることにより、観光資源が大きく損なわれる可能性があります。以上から大規模草地からの景観を損なう風車の建設は避けるべきです。
景観は環境影響評価で垂直見込み角のみによって評価されていますが、この地方では広々とした風景そのものに価値があるため、圧迫感の有無による評価基準は合いません。視認可能な垂直見込み角1度以内では何本並んでいても1本でしか評価されないという判断基準では地域の景観の価値を適切に評価することができません。風車は水平に複数が並んでいると一体のものとして見えるため、1本1本の高さではなく、ローターを含む球形としての累積的な風車全体水平見込み角によって評価すべきです。景観の評価は難しいため、古い一つの指針に依存するのではなく、地元観光業者や自然保護団体などから意見を聞きながら、協議会などで議論をし、地域の環境と意向を十分に考慮したうえでその影響を評価すべきです。

■累積的影響の評価
現在稼働または計画されている周辺の他事業者との累積的影響について評価すべきです。

■協議会
これらの調査結果の評価は、野鳥保護団体や地元の団体・観光関係者・地元自治体などを含めた開かれた協議会の場で行うべきです。

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