公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)白島沖着床式洋上風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見書を提出しました

令和2年1月31日

株式会社グローカル
代表取締役会長 奥原征一郎 様

日本野鳥の会北九州支部
支部長 川﨑 実(公印省略)

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤孝一(公印省略)

「(仮称)白島沖着床式洋上風力発電事業環境影響評価方法書」
に対する意見書

1.はじめに(事業計画について)
配慮書に対する当支部からの意見で述べたように、希少な鳥類が多く生息し、北九州市内では類のない生物多様性の高い島嶼地域として重要な白島に近接して計画される本事業は、生息する鳥類に重大な影響を及ぼすおそれがあり、野生生物との共存を図る「第2次北九州市生物多様性戦略」から逸脱する計画と言わざるを得ない。
白島で繁殖および越冬する鳥類に影響を及ぼす前に、早々に事業計画の見直し、もしくは対象事業実施区域の大幅な変更を行うべきである。

2.方法書に記載されている事項について
1)表4.3-6 重要な鳥類への環境影響要因
方法書において、風車へのバードストライクの可能性がないとしている種については、一時的であっても影響(移動経路の遮断・阻害)が生じるのであれば、特に悪天候時にそのことでバードストライクを生じさせる可能性があることから、安易に影響がないと決めつけるべきではない。
また、カラスバトについては、表5.3-1専門家へのヒアリングによって「島嶼間の洋上を移動する事例もある」とのこと、さらに配慮書に対する当支部からの意見でも述べているように、移動経路の遮断・阻害とバードストライクの可能性があるとするべきである。

2)表4.3-8バードストライクの計算結果
そもそも一施設当たりの、衝突確率が何羽以下であれば影響が軽微であるという基準は一切論じられたことは無く、あくまでも事業者独自の見解である。計算係数の回避率についても、環境省の手引きからミサゴ95%、オオミズナギドリ87%としているが、白島西側においては事業実施区域とミサゴ、オオミズナギドリの行動の関係から、この回避率が適切とは考えられない。
さらに、日本国内に生息する鳥類の個体群に対して回避率を算出した報告事例が無いことや、回避率は立地環境や気象に大きく影響を受ける(※「鳥類衝突リスクモデルによる風力発電影響評価~竹内 亨」)ことから、この計算は白島のミサゴとオオミズナギドリには当てはまらない。いかにもバードストライクの確率・衝突数が極めて小さいことを印象付けるための計算といえる。

3)表5.1-3環境要素毎の地域特性の概要
「ハチクマ等の渡りの経路については陸沿いにあり、事業実施区域から外れていると推定された」について渡り鳥について環境省のセンシティビティマップを参考事例としたうえで、事業実施区域を通過するルートが確認されていないとのことだが、それは単に環境省でこれまでそのようなデータをとれていないだけであり、渡りルートがないと断言できるものではない。それは当支部の配慮書に対する意見でも裏付けられる。配慮書に対する意見を真摯に受け止めるべきである。

4)表5.2-5、2-6、2-7動物(鳥類)に係わる調査、予測、および評価手法
国内では、沖合に風力発電施設を設置した場合に発生する環境影響に関する知見がほとんど少ない状況の中であっても、経済産業省が作成した陸上発電施設向けの「発電所アセスの手引き」に従った調査方法は、少なくとも海鳥に対しては適切ではない。知見の多い海外の洋上風力発電計画に対する海鳥調査を参考にし、実施する必要がある(以下参照)。
〈海外の洋上風力発電計画に対する海鳥調査の考え方〉(A.d.Fox et al 2006.I.Ⅿ.D.Maclean et al 2009)
・1年を通して十分長い期間を確保し、一時期(春と秋のみなど)に集中させない。
・最低2年間以上
・船舶は年12回以上(年間を通じて毎月実施)
・季節的な最大個体数を特定(生息地放棄を評価)
・平均個体数を特定できるよう十分な調査頻度を確保
・季節的環境利用パターンを特定

以上、この度の方法書においては、不十分な調査方法、不適切な認識があるため白島の鳥類の実態を把握することは不可能であると考える。また、貴社の判断によって海外における調査方法を参考にされ、綿密な調査を行えば、ますます鳥類への重大な影響を認識することになる。そのため、早々の事業計画の見直し、もしくは大幅な事業実施区域の変更をあらためて求める。

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