公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)志賀風吹岳風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年6月11日

ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社
代表取締役 中川 隆久 様

日本野鳥の会石川
代表 中村正男
929-1125 石川県かほく市宇野気1-71

(公財)日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
141-0031 東京都品川区西五反田3—9-23丸和ビル

(仮称)志賀風吹岳風力発電事業 計画段階環境配慮書への意見書

事業実施想定区域は、生態系ピラミッドの頂点に立つ希少な猛禽類が多く生息しており、また、小鳥類の渡りが多い場所と推測されます。そのため風力発電施設の稼働後には、バードストライクや障壁影響を含む生息地放棄等が発生することが大きく危惧されます。また、既設並びにすでに計画が進められている他の風力発電事業も多数存在するため、以下の配慮と対応を求めます。

  1. 事業実施想定区域は、既設および現在計画中の風力発電施設に隣接する区域にあり、(仮称)七尾志賀風力発電事業とは事業実施想定区域が重複しています。したがって、これらの計画が鳥類や自然環境に及ぼす累積的影響を評価しなければなりません。特に、(仮称)七尾志賀風力発電事業おける事業者とはよく協議、調整を行い、適切な環境影響評価を実施することが必要です。
  2. 事業実施想定区域にはハチクマ、オオタカ、サシバ、ノスリ等の希少猛禽類が繁殖しており、また、採餌域になっています。このような区域ではバードストライクや生息地放棄が発生することを念頭においた調査が必要です。
  3. かつて能登全域は、シベリア方面から渡ってくるツグミ類を中心としたカスミ網猟が行われていた地域であり、多くの小鳥類が渡っていると推測されます。小鳥類の多くは夜間に渡るため、夜間におけるバードストライクの発生を念頭においた調査が必要です。
  4. マガモは日本海を直接横断して大陸へ渡ることが確認されており、七尾西湾等に多数生息するカモ類が事業実施想定区域を通過する可能性があります。そのため、カモ類の夜間のバードストライク発生を念頭においた調査が必要です。
  5. 風車の稼働後は、モニタリング調査を実施してバードストライクの発生の有無を監視する仕組を構築する必要があり、第三者を入れた検討体制を構築し、バードストライクが多発した場合は対象となる風車の稼働停止、さらに定常的に発生する場合には、風車の撤去を盛り込んだ運営を行うべきです。なお、バードストライクの発生事実、その対策検討結果は公表されるべきです。
  6. 風車の運転開始後は、事後調査を実施し、バードストライクの発生の有無や生息する鳥類、特に猛禽類の繁殖ペアの分布状況が事業後にどのように変化するのかを確認、検証すべきです。
  7. 環境アセスメント制度における配慮書、方法書、準備書等の文書は、県庁をはじめとした縦覧場所での設置は1部のみであるため、複数の人員が同時に閲覧することが困難です。それゆえ、オンラインによる閲覧は大きな利点があるものと評価することができます。
    一方、オンラインによるパソコン上での閲覧は、当該地域の環境実態を把握し、広範囲にわたる記載内容を比較しながら意見書を作成するには不向きであるため、また、多額の費用を費やして作成したアセス文書の有効利用のためにもダウンロードおよび印刷を可能とすべきです。

以上

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