公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)能登中風力発電事業計画段階環境配慮書への意見書

令和2年7月7日

合同会社潮風
合同会社RJキャピタル 職務執行者 牧野達明 様

日本野鳥の会石川
代表 中村正男
929-1125 石川県かほく市宇野気1-71

(公財)日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
141-0031 東京都品川区西五反田3—9-23丸和ビル

(仮称)能登中風力発電事業計画段階環境配慮書への意見書

貴社が作成された(仮称)能登中風力発電事業計画段階配慮書(以下、配慮書という)における事業実施想定区域(以下、計画地という)には、地域の生態系ピラミッドの頂点に立つ希少な猛禽類が多く生息しており、また、小鳥類の渡りが多い場所です。そのため風力発電施設(以下、風車という)の稼働後には、バードストライクや障壁影響を含む生息地放棄等が発生することが大きく危惧されます。また、既設並びにすでに計画が進められている他の風力発電事業も多数存在するため、下記の配慮と対応を求めます。

  1. 本計画地は、(仮称)中能登ウィンドファーム事業(以下、他社事業という)の計画地とほぼ重複しているため、他社事業者と協議、調整されたうえで、共同調査も含めた適切な環境影響評価を実施することが必要です。さらに、計画地周辺には本事業を含め11件の稼働・計画中の風力発電事業があり、これらの存在により生じる累積的影響も評価する必要があります。適切な累積的影響評価が行えない場合には、本事業計画は実施すべきではありません。
  2. 計画地にはミサゴ、ハチクマ、オオタカ、サシバ、ノスリ、ハヤブサ等の希少猛禽類が多く繁殖しており、また、採餌場所になっています。このような区域ではバードストライクや生息地放棄が生じることを念頭においた詳細な調査が必要です。
  3. かつて能登全域は、シベリア方面から渡ってくるツグミ類を主な対象としたカスミ網猟が行われていた地域であり、多くの小鳥類が渡っていることが分かっています。小鳥類の多くは夜間に渡るため、夜間におけるバードストライクの発生を念頭においた詳細な調査が必要です。
  4. マガモは夜間に日本海を直接横断して大陸へ渡ることが確認されており、邑知潟等に多数生息するカモ類が計画地を通過する可能性があります。そのため、カモ類における夜間のバードストライク発生を念頭においた調査が必要です。
    また、邑知潟には多くのコハクチョウが飛来しますが、珠洲に飛来する群れの往路および復路が計画地を通過する可能性があり、ハクチョウ類におけるバードストライク発生を念頭においた調査も必要です。
  5. 風車の稼働後は、モニタリング調査を実施してバードストライクの発生の有無を監視する仕組を構築する必要があり、第三者を入れた検討体制を構築し、バードストライクが多発した場合は対象となる風車の稼働停止、さらに定常的に発生する場合には、風車の撤去を選択肢として盛り込んだ運営を行うべきです。なお、バードストライクの発生事実、その対策検討結果は公表されるべきです。
  6. 風車の運転開始後は、事後調査を実施し、バードストライクの発生の有無や生息する鳥類、特に猛禽類の繁殖ペアの分布状況が事業後にどのように変化するのかを確認、検証すべきです。
  7. 環境アセスメント制度における配慮書、方法書、準備書等の文書のオンラインによる閲覧は大きな利点がありますが、スマホやタブレットでの利用がパソコンを上回っている現状では一般的なブラウザでの閲覧を可能とすべきです。 MicrosoftもEdgeへの移行を推進しており、Internet Explorerでの閲覧は今後を考えるとセキュリテイの上からも望ましくありません。
    また、オンラインによるパソコン上での閲覧は、当該地域の環境実態を把握し、広範囲にわたる記載内容を比較しながら意見書を作成するには不向きであるため、また、多額の費用を費やして作成したアセス文書の有効利用のためにもダウンロードおよび印刷を可能とすべきです。

以上

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