公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見に関する要望書

日野鳥発第2020-012号
令和2年7月9日

環境大臣 小泉 進次郎 殿

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一

(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する
環境大臣意見に関する要望書

 日頃より(公財)日本野鳥の会ならびに連携団体が行う自然保護活動に対しまして、ご理解とご協力を賜り、深く感謝いたします。
 さて、北海道の苫小牧市字弁天から厚真町字鹿沼にかけての勇払原野東部でDaigasガスアンドパワーソリューション株式会社が計画する(仮称)苫東厚真風力発電事業(以下、対象事業という)について、計画段階環境配慮書における事業実施想定区域(以下、計画地という)およびその周辺に生息する希少鳥類の保全の観点から、下記の通り要望いたします。

【要望内容】

 事業者による対象事業の実施は、勇払原野東部における希少鳥類(マガン、タンチョウ、オジロワシ、チュウヒ、オオジシギ等)の生息そのものに影響を及ぼし、鳥類の種によっては地域絶滅のリスクを高めるため、事業者に対して、計画地の位置の抜本的見直しを含めた厳しい意見を環境大臣意見として述べていただきたい。

【背 景】

 当会らが令和2年6月25日付で事業者に提出した添付の「(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書」にもありますように、対象事業に係る計画地とその周辺は、ラムサール条約湿地や二つの重要野鳥生息地(IBAs)および生物多様性の保全の鍵になる重要な地域(KBA)に囲まれ、これまでに277種の鳥類が観察されるなど国内でも有数の鳥類相の豊かさを有しており、マガン、タンチョウ、シマクイナ、ヘラシギ、オジロワシ、オオワシ、チュウヒ、ハヤブサといった国内希少野生動植物種等に指定される鳥類が近年においても生息していることが確認されています。

 特に開発行為に対して敏感なチュウヒは、環境省により国内繁殖つがい数は90つがいと推定されていますが、そのうち7つがい程度が毎年計画地内で繁殖しているため、風車の建設がこれらのチュウヒにバードストライクや生息地放棄などの影響を与えた場合、国内繁殖つがいの約8%の個体を消失することになります。

 上記の希少鳥類には、チュウヒ以外にも風力発電施設(以下、風車という)の建設による影響を受けやすい種が多く含まれ、当該事業の実施が計画地およびその周辺に生息するこれらの希少鳥類に及ぼす影響は大きく、計画地を変更しない限りは、影響を回避できないと予測します。また、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の第三十四条にある「土地の所有者又は占有者は、その土地の利用に当たっては、国内希少野生動植物種の保存に留意しなければならない。」という土地所有者の義務や文化財保護法における天然記念物の保存への配慮義務に鑑みても、計画地での風車の建設が上記の希少鳥類の生息に影響を与えるべきではないことから当会は、事業者は事業実施想定区域の位置の大幅な変更をすべきであると考えています。

以上

添付資料:「 (仮称)苫東厚真風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書」(公益財団法人 日本野鳥の会ほか)

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