公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)遊佐町沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

(仮称)遊佐町沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年8月24日 提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治
②公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
住 所 ①〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社(石油資源開発株式会社)が作成された(仮称)遊佐町沖洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、下記の通り意見を提出します。

(1)現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)を縦覧している(仮称)遊佐町沖洋上風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地という)の周辺には既に3事業者により計画が進められている洋上風力発電事業があるが、貴社はこの3つの事業者との協議・調整をしながら計画を進める必要がある。4事業者で協議・調整された事業計画のもと、共同作業も含めた適切な環境影響評価を実施していただきたい。

(2)計画地の東の海岸沿いには数社の風力発電施設(以下、風車という)が稼働していることから、貴社はこれらの風車との複合的な影響(累積的影響)を評価する必要がある。累積的影響について調査および評価した結果を公表するなどして、本件事業単独ではなく、複数事業が地域の鳥類の生息に及ぼす影響を評価していただきたい。

(3)海鳥の生息状況の確認について、質・量ともに十分な調査をすべきであるが、陸性鳥類と違い調査が非常に困難なことから、どのような方法で調査を実施・評価をするのか、具体的に提示すべきである。
特に海鳥の飛来が多い、渡りの時期および冬季については、十分な調査・予測・評価を行うべきである。

(4)洋上での風車によるバードストライクについては、陸上でのそれに比べて、調査・予測・評価が難しいため、貴社のこの事業計画においても綿密に実施されるよう求める。特に、渡り鳥が重要な調査対象となるため、1シーズンでは予測、評価のための情報が不足することから、複数年にわたる調査が必要である。
また、カモ類が夜間に渡りを行うことはよく知られているが、オオミズナギドリやアビ類、ウミスズメ類も夜間に渡りを行うと推測されている。そのため、日中のみならず夜間にもバードストライクが発生することを念頭に置いた調査が必要であり、特に、確認の難しい夜間におけるバードストライクの可能性については、十分な調査・予測・評価を行っていただきたい。

(5)計画地はオオミズナギドリやアビ類、ウミスズメ類などの渡りの時期および冬季の生息域、かつ、ハチクマ、ハイタカ、サシバなど希少猛禽類の渡りルートの一部となっている。また、ヒシクイ、ハクガン、シジュウカラガンやハクチョウ類にとって主要な越冬地である八郎潟(秋田県)と福島潟(新潟県)との渡りの中継地となっているため、計画地への風車の建設および稼働によりバードストライクが発生し、また、障壁影響により生息域および渡りルートの変更といった影響を及ぼすことが懸念される。そのため、海鳥および希少猛禽類などの鳥類の渡りと生息域に対するこれらの影響の回避または低減策を計画の初期段階から検討すべきである。

以上、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価よりも、利害関係者や専門家とも協議したうえで、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。

貴社においても、風車の建設にあたって、鳥類の生息状況を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上

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