(仮称)山形県鶴岡市風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書
令和2年9月4日 提出
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計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見 |
この度、貴社が作成された(仮称)山形県鶴岡市風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、下記の通り意見を提出します。 記 (1)現在、貴社が計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)を縦覧している(仮称)山形県鶴岡市風力発電事業について、事業実施想定区域(以下、計画地という)に風力発電施設(以下、風車という)を建設した場合、計画地は環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に、また、山形県の絶滅のおそれのある野生動植物に指定されているイヌワシとクマタカの生息地と重なることから、尾根や稜線を利用するイヌワシとクマタカが風車に衝突死するバードストライクが発生する危険性が高い。国内では、イヌワシとクマタカがバードストライクに遭った事例が確認されており(武田 2013、浦 2015)、計画地に風車を建設した場合、バードストライクが起こる可能性が高いと考える。計画地は、クマタカの生息密度が高い地域である。また、イヌワシの飛翔高度は、クマタカよりもかなり上空になり、行動圏もかなり広くなる。イヌワシは全国的に繁殖成功率が著しく低下しており、本事業計画はイヌワシの保護に逆行していると考えられる。そのため、イヌワシ、クマタカの行動圏や高度利用域の推定などを含む生息状況の確認等の調査について、質、量ともに十分なものを求める。 (2)計画地はサシバやハチクマなど希少猛禽類の渡りルートの一部になっている可能性があることから、風車の建設によりバードストライクが生じ、また、障壁影響により渡りルートの変更および生息地の放棄といった影響が発生することが懸念される。そのため、希少猛禽類の渡りに対するこれらの影響の回避または低減策を計画の初期段階から検討すべきである。 (3)専門家へのヒアリングの結果について、鳥類の有識者が「重要種以外の一般鳥類についても調査し、把握していただきたい。」としている。計画地は小鳥類が移動するルートにもなっているため、渡りの時期である春と秋に適切かつ十分な量の調査をすることで、重要な種の移動や渡りの状況を正確に把握し、小鳥類の渡りに影響を及ぼさないよう適切な対応を求める。 (4)計画地は、北部地区と南部地区に分かれているが、黒森山を含む南部地区には、広大なブナ林が広がっている。このブナ林には、「アガリコブナ」と呼ばれるブナの木があり、山形県や秋田県の豪雪地帯だけに見られる特殊なもので、学術的な価値が高く評価されている。これらのブナの存在を詳細に調査し、保全・保護するための具体策を講じていただきたい。 また、この広大なブナ林には、ブッポウソウやアカショウビンなど貴重な野鳥が生息している。風車建設のための大規模な林道開発などの土地改変を行うことで、貴重な野鳥の棲みかが失われることが危惧される。生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)といった影響の回避又は低減策を計画初期の段階から検討すべきである。 加えて、県内有数の豪雪地帯であるが故に、冬期間の施設管理の見通しが甘いと思われ、環境配慮の他にも安全上、疑問が生じる。 (5)計画地の北部地区の南端に羽黒山頂、南部地区の南東側5kmに弥陀ヶ原湿原、南東8kmに月山山頂、南9kmに湯殿山神社があり、北部地区周辺は、出羽三山神社の聖域とされている場所である。羽黒山・湯殿山・月山は「出羽三山」として昔から信仰の山として、そして現在は山形県の重要な観光資源となっている。羽黒山神社参道脇には、国宝となっている五重塔もあり、計画地にいくつもの風車が立ち並ぶ風景は、これまで歴史的景観を大切に保護してきた流れに相反するものであり、到底受け入れることはできない。 以上、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価よりも、出羽三山神社関係者や専門家とも協議したうえで、計画の撤回を含めた見直しを行い、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。 貴社においても、風車の建設にあたって、鳥類の生息状況を的確に把握し、景観を含めた優れた歴史的環境、豊かな自然環境と生物多様性が失われることのないよう適切な対応をとることを強く求める。 以上 |