公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業に係る環境影響評価方法書への意見書

2021年3月1日

株式会社グリーンパワーインベストメント
代表取締役社長 坂本 満 様

日本野鳥の会福井県
代表  酒井 敬治
〒911-0804福井県勝山市元町3-6-48松村方

公益財団法人日本野鳥の会
理事長  遠藤 孝一 (公印省略)
〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル

(仮称)美浜新庄ウィンドファーム発電事業に係る環境影響評価方法書への意見書

貴社が作成した環境影響評価方法書(以下、方法書という)に記載している対象事業実施区域(以下、計画地という)は、当該地域に形成されている生態系の頂点に位置するクマタカが複数ペア生息し、イヌワシは近隣生息地からの飛来が観察されるなど希少猛禽類が多く生息し、かつ、ミゾゴイ、ヨタカ、コノハズク、ヤイロチョウなどの希少鳥類が生息している可能性がある場所です。また、計画地周辺はハチクマやサシバなどの猛禽類やカモ科鳥類の渡り経路となっている可能性があります。そのため、風力発電施設(以下、風車という)の建設工事段階では騒音や作業員の存在等により、特に希少猛禽類の繁殖に重大な影響を及ぼすこと、そして、風車の稼働後にはバードストライクや障壁影響を含む生息地放棄等が発生することが大きく危惧されます。

以上の理由から、方法書に対し下記のように意見を述べますので、貴社には適切な対応を取っていただけるようお願いいたします。

1.計画地の見直しについて

冒頭に記述したように、計画地は地域生態系の頂点に位置し、環境省レッドリストで絶滅危惧ⅠB類、福井県版レッドリストで絶滅危惧Ⅰ類に指定されているイヌワシとクマタカ、およびその他の希少鳥類等の飛翔が確認されている。これらの種は、計画地とその周辺の地域で生息・営巣していると推察され、風車の建設はそれらの生息に重大な影響を及ぼすと考えられる。そのため、計画地は風車の建設場所としては不適切であることから、計画地の選定位置の見直しを求める。

2.鳥類(希少猛禽類)調査の調査地点(定点)について

計画地とその周辺で7箇所の定点を設定しているが、降雪期にはSt1とSt2の2箇所しか使用できない。これでは、繁殖期と重なる降雪期の十分な調査が出来るとは言えない。降雪期でも十分な調査ができるよう、スノーモービル等での移動や、ヘリコプターなどによる調査員の搬送などを実施することを求める。ただし、エンジン音等が希少猛禽類に影響を与えないよう十分な配慮も必要である。

3.鳥類(希少猛禽類)調査の調査日数について

方法書では希少猛禽類調査の日数を「1回あたり連続3日間とし、各月1回」としているが、特に春と秋は、3日間の調査日程に雨天が重なってしまい「ほとんどデータが取れない月」が生じることがある。そのため、もし雨天が重なってもその前後の好天時にデータを取得できるような調査計画を立てるべきである。

また、貴社は、計画地およびその周辺で繁殖していると推察される希少猛禽類の営巣地や高度利用域等を必ず特定し、事業の実施によるそれらへの影響を適切に評価できるような調査計画を立てるべきである。なお、調査の日程について、繁殖期間中は各月1回にこだわることなく、繁殖ステージごとの行動を把握できるように調査日程を組むべきである。

4.「鳥類の渡り時の移動経路」調査期間等について

方法書では鳥類の渡り時の移動経路調査として「2月、3月、4月、5月及び9月、10月の実施とし、各月3日間実施する。」としているが、現地の渡り鳥の状況から考えると、春は6月、秋は11月も調査時期に加えるべきである。なお、調査実施中に悪天候となりデータが取得できない日が生じる可能性も考慮した調査日程を組むべきである。

5.レーダー調査等の実施について

計画地とその周辺を渡る鳥類の移動経路の位置を把握し、事業の実施による鳥類への影響を検討するための基礎データを得るには、目視での観察調査やICレコーダーを使った調査だけでは不十分である。特にICレコーダーは音声を取得できる範囲が狭く、計画地を通過する渡り鳥の状況を広く把握することはできない。そのため、船舶用レーダーやレーザーレンジファインダー等により、できるだけ広範囲に正確な飛翔経路や高度、時間等を把握、分析したうえで、障壁影響も含めた影響評価を実施することを求める。

なお、他の事業者によって行われている風力発電事業の方法書や調査では、ほとんどの事業者がレーダー調査を導入しており、当該地のみでレーダー調査が行われないのは、他の計画地との影響評価の比較ができないことからも、レーダー調査は必須である。

6.累積的影響評価の実施について

計画地周辺では貴社が計画する事業以外にも、他の事業者による風力発電計画が複数ある。ある一定の地域に複数の施設がある場合、鳥類、特に渡り鳥に対し、障壁影響やバードストライクなど重大な影響を及ぼすことが海外の知見により知られている。そのため貴社は、互いに計画段階であったとしても、他の事業者と事前の調査結果の共有等をしながら、適切に累積的影響評価を実施し、周辺地域全体における鳥類等の自然環境に配慮すべきである。

以上

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