公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)DREAM Wind 和歌山有田川・日高川風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年3月15日

大和エネルギー株式会社
代表取締役社長 濱 隆 様

和歌山県御坊市名田町上野1465
日本野鳥の会和歌山県支部
支部長 中川 守

東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一

(仮称)DREAM Wind 和歌山有田川・日高川風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書

現在、貴社が意見募集をしている(仮称)DREAM Wind 和歌山有田川・日高川風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対して、環境影響評価法第8条に基づき、環境の保全の見地から下記のとおり意見を述べる。

(1)鳥類保全の観点からの意見

貴社が作成した方法書に示されている対象事業実施区域(以下、計画地という)とその周辺は、環境省が絶滅危惧ⅠB類および国内希少野生動植物種に指定しているクマタカの複数ペアが繁殖し、それらの行動圏がすき間なく並んでいるような場所である。クマタカではすでに国内でもバードストライク(浦 2015)、および繁殖等が阻害される生息地放棄(三宅 2020)の発生が確認されている。そのため、貴社が計画通り風車を建設すると、計画地とその周辺においてクマタカのバードストライク、または生息地の放棄が生じる可能性がある。

これらを踏まえて希少鳥類等の保全の観点から考えると、貴社が計画する風車の建設がこれらの希少鳥類に与える影響は甚大であると予測され、当該地域は風車建設には不適切であり、計画地として除外されるべき地域である。そのため、本事業は現地調査の実施および環境影響評価準備書の作成に進まずに、現段階をもって事業を中止すべきである。

以下に、調査方法についての意見を述べるが、前述の立場に立ったうえで方法書の記載内容に対して意見を述べるものであり、現地調査の実施および準備書の作成に進むことを容認するものではない。

(2)調査方法等に対する意見
  • 計画地とその周辺にクマタカが繁殖しているが、クマタカは場所によっては3~4年に1度しか繁殖が成功しないことが知られている。そのため、現地調査においては、2営巣期内で繁殖成功が確認できなかった場合には、3から4営巣期にわたり調査をすべきである。
  • クマタカに対する影響評価は、植生の改変面積や改変率だけで評価せず、必ず空間飛翔調査を実施し、また、営巣適地の環境の推定や飛翔および採餌環境のポテンシャルマップを作成して影響の予測を行うなどして、計画地がクマタカの生息地としてどのようなポテンシャルがあるかという観点で、生息地放棄の発生の可能性も含めて風車の建設による影響を予測、評価すべきである。
  • 方法書6.2-26(297)および6.2-32(303)ページには、渡り鳥調査を春季(3~5月)及び秋季(9~11月)の2季に各月3日間程実施するとあるが、計画地周辺で希少猛禽類の渡りのピークになると考えられる3月中旬~4月中旬および9月中旬~10月下旬は毎日調査を実施し、渡りの状況を詳細に把握したうえで、風車建設による影響を評価すべきである。また、それ以外の時期においても、特にサシバやハチクマなど猛禽類の渡りの時期はその年や季節の気象条件によっても大きく変化するため、その変化に対応できるよう、1週間以上の継続した調査が必要である。これら、希少猛禽類等の渡り鳥の飛翔状況の把握には、レーダーやレーザーレンジファインダー等の鳥類の飛翔位置を正確に計測できる機器の使用を検討すべきである。
  • 方法書6.2-1(272)ページで貴社は中紀第二ウィンドファームとの間での累積的影響評価の実施を検討するとあるが、計画地周辺にはそれ以外にも、(仮称)紀中ウインドファーム事業、(仮称)白馬ウインドファーム更新事業、(仮称)中紀ウインドファーム事業の計画地や広川・日高川ウィンドファームなどの既設の風車が近くに存在する。貴社は、それらの事業を計画または実施する事業者と協力、および情報の共有を図りながら、海外事例を参考にするなどして累積的環境影響評価を実施したうえで影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライクおよび障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が有田・日高エリア全体に生じる可能性がある。そのため貴社は、方法書に累積的環境影響評価に関する具体的な方針や評価手法を記載したうえで、それを確実に実施すべきである。もし、広川・日高川ウィンドファームで鳥類の死骸探索や飛翔状況に関する事後調査を実施していない、もしくは他事業者と情報を共有できなければ、貴社が独自にそれらの事後調査を実施し、その結果も影響評価に組み込むべきである。

以上

【引用文献】

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