公益財団法人 日本野鳥の会

(仮称)山形尾花沢風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書

(仮称)山形尾花沢風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年3月17日 提出

項 目 記入欄
氏 名
  1. 日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治
  2. 公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一 (公印省略)
住 所
  1. 〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33
  2. 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された「(仮称)山形尾花沢風力発電事業 環境影響評価方法書」について、下記の通り意見を提出します。

  1. 貴社が環境影響評価方法書(以下、方法書という)を縦覧している(仮称)山形尾花沢風力発電事業について、対象事業実施区域(以下、計画地という)に風力発電施設(以下、風車という)を建設した場合、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類および山形県の絶滅のおそれのある野生動植物に指定されているクマタカが計画地とその周辺に生息しているため、バードストライクまたは生息地放棄が発生する危険性が高い。
    方法書では、希少猛禽類の生息状況調査はクマタカを対象にして定点観察法で行うとし、1~12月(1営巣期目の調査結果をもとに、必要に応じて2営巣期目の調査も行う)に調査を行うとしている。しかし、方法書では具体的な調査スケジュールが明確になっていないので、記載することを求める。なお、クマタカは毎年繁殖を開始、または成功するわけではないことから、生息が認められた場合は繁殖や営巣の有無にかかわらず最低でも2営巣期、必要に応じて3営巣期に渡って繁殖状況調査をする必要があるので、そのように調査計画を組むべきである。
  2. 6-34(274ページ)の希少猛禽類の定点観察法について、「調査期間を1営巣期とし、調査結果を踏まえ必要に応じて2営巣期の調査を追加する」と記載している。しかし、希少猛禽類は毎年繁殖が成功するわけではないため、クマタカが生息している計画地においては、最初から2営巣期の調査を設定しておく必要がある。また、調査については、毎月3日間ずつは実施すべきであるが、希少猛禽類の調査について、方法書に具体的な調査スケジュール等を記載していただきたい。ただし、調査においては繁殖そのものを阻害することのないよう、繁殖・営巣活動に負荷をかけるような調査や観察を行わないよう十分な配慮を求める。
  3. 6-34(274ページ)の渡り鳥の調査については、定点観察調査を「春の渡り期4回(3月~5月)、秋の渡り期4回(9月~11月)実施」としている。しかし、各回の調査日数については記載されていないため、調査の詳細について明確に記載していただきたい。
    また、夜行性のカモ科鳥類は夜間に移動と採餌行動をすることが多く、日中の観察調査ではその行動を十分に把握できないことが懸念される。日中の定点観察調査と並行してレーダー調査を行うなど、夜間調査も充実させることを求める。また、夜行性の鳥類は日の出前や日没後2時間くらいまでの時間帯に活発に行動するので、ボイスレコーダーの台数を適切に配置し、調査期間を長くとるなど、調査対象種の行動を理解したうえで調査計画を立てて、調査内容を充実させることを求める。
  4. 秋の渡り期の調査については、7月下旬に始まる夏鳥の南下時期と12月まで続く冬鳥の南下時期が異なるため、調査回数と調査日の設定についてはよく検討すべきである。夏鳥であるサシバやハチクマなどの希少猛禽類の渡りの調査にあたっては、適切な移動時期に必要十分な回数の調査を行い、計画地周辺を通過する希少猛禽類の飛翔状況を明らかにしていただきたい。また、計画地は冬鳥の移動ルートにもなっている可能性が高いため、バードストライクの発生が予想される小鳥類についても、同様の調査を実施することを求める。
  5. 計画地の周辺には他の事業者による風力発電事業の計画が複数存在するため、貴社は他事業の事業者と協力、または情報の共有を図りながら累積的環境影響評価を実施し、鳥類や自然環境への影響の回避・低減策を講じなければ、輻輳する風車の存在やその設置工事により、生態系の破壊や鳥類のバードストライク、および障壁影響を含む生息地放棄などの重大な影響が村山エリア北部から最上エリア南部にかけて広く生じる可能性がある。
    しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっている。貴社は海外事例を参考にするなどして累積的影響の予測および評価を行い、計画地の周辺に他事業が複数存在することにより生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきである。さらに、風車の運転開始後は事後調査を行い、その結果を示すべきである。

以上

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