公益財団法人 日本野鳥の会

「(仮称)浜里風力発電事業 計画段階環境配慮書 に係る意見書」を提出しました

日 野 鳥 発 第 2 号

(仮称)浜里風力発電事業 計画段階環境配慮書 に係る意見書
意見書

平成27年 4月 9日 提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会道北支部 支部長 小杉 和樹
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住 所 ①〒097-0401 利尻郡利尻町沓形字富士見町
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見  この度、貴社が作成された(仮称)浜里風力発電事業 計画段階環境配慮書について、次のとおり意見を提出します。

 貴社が本配慮書で設定した事業実施想定区域(以下、想定区域という。)での風力発電施設の設置は、サロベツ地域の自然環境および鳥類の生息に対し大きな影響が予想されるため、事業自体の見直しを含めて、想定区域の位置を見直すべきである。
 また、今回、貴社が事業実施区域を想定した幌延町に近接する天塩町や豊富町など北海道北部においては、既に他の事業および事業者が風力発電事業に係る配慮書や方法書を提出しているため、それぞれの事業案件毎の環境影響配慮だけではなく、宗谷・留萌地方全体(稚内市・豊富町・幌延町・天塩町)での風力発電事業計画を公表し、その上で、各事業間の複合的かつ累積的な内容も配慮書に含め、宗谷・留萌地方全体の広域的な視点にも重きを置いて、想定区域の見直し、除外の検討をするべきである。

理由
・想定区域は、「利尻礼文サロベツ国立公園」の特別保護地区、第3種特別地域に隣接している。サロベツ原野は泥炭上に形成された湿原であり、低平地における国内最大の高層湿原を有する他、国内最大級の浮島のある瞳沼や大規模な湿地溝の発達が見られるなど、国内では他に類を見ない規模の大きい湿原景観を有しているが、風力発電施設の存在は、湿原景観上に大きな影響を及ぼすことが強く懸念される。
 また、想定区域は、道設夕来稚咲内鳥獣保護区に隣接し、かつ国指定サロベツ鳥獣保護区の極めて近くに設定されている。さらに、国際的にもラムサール条約湿地「サロベツ原野」に極めて近く、バードライフインターナショナルの重要野鳥生息地IBA(Important Bird and Biodiversity Areas)と一部重複していること。またこれらの地域は、オオワシやオジロワシなどの希少猛禽類、ハクチョウ類やガン・カモ類など、多数の渡り鳥のルートとなっていることは明らかである。
 さらに、想定区域周辺で鳥類観察を行なっている専門家によれば、絶滅危惧Ⅱ類のチュウヒ、タンチョウ、準絶滅危惧種のミサゴ、オオタカ、ハイタカの生息が確認されている。特に鳥獣保護区やIBAは、野鳥の集団渡来地として選定されていることからもわかるとおり、採餌地、ねぐらとして頻繁に利用されており、風力発電施設の建設及び施設の稼働はこれらに大きな影響を及ぼす。
 更に、鳥類に関する保護並びに自然景観の保全に関して述べれば、宗谷・留萌地方に夥しい風車が乱立された場合、鳥類の移動に対して風車が著しい障害壁となることに加え、当地域の良好な自然景観を著しく破壊することになる。

・想定区域南側の既設風車では、既にわかっているだけでも今までに6羽のオジロワシが衝突死している。
 一方、想定区域ではシロフクロウ、シロハヤブサといった希少な野鳥の観察記録があるほか、隣接する砂丘林等ではオジロワシが営巣し、さらに春秋の渡りの時期には、多くのワシタカ類が同区域や隣接する区域を通過・滞在するため、バードストライクの発生する可能性が高い。
 また、秋に渡来するハクチョウの一部には、想定区域北側の稚咲内地区の海上から渡来して、砂丘林を越えてペンケ沼、パンケ沼に向かうグループがあるため、バードストライクや既設風車との累積効果など、これら野鳥の渡り経路を阻害する可能性が高い。

・貴社が自ら配慮書の中で述べているように、直接改変による影響および風力発電機との接触等による影響を受ける鳥類の種として、ヨタカ、ミサゴ、オジロワシ、オオワシ、ハイタカ、オオタカ、クマゲラ、チゴモズ、ウズラ、オオジシギ、チュウヒ、ハヤブサ、アカモズ、マキノセンニュウ、シマアオジ、コジュリンを挙げている。
 これらは、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種、絶滅の危険が増大している種、生息条件の変化によっては絶滅危惧に移行する可能性のある種であるが、風力発電施設の建設による影響を受けることで、さらに絶滅の危険性を高めてはならない。
 一方、風力発電など自然エネルギーの導入拡大は、生物多様性国家戦略2012-2020における第4の危機(温暖化による地球環境の変化による危機)の解決に向けた対策として貢献するものである。しかし、自然エネルギーの導入のための開発行為そのものが国家戦略でいう生物多様性への第1の危機(開発や乱獲による種の減少や絶滅および生息・生育地の減少)になってはならない。
 これらの観点からすると、本事業を想定区域内で実施することは少なくとも国内において、第4の危機への対策が第1の危機をもたらすことが想定され、その様な自然保護上本末転倒な結果をもたらす事業を認めることはできない。

 これら理由から、貴社が配慮書で提示した場所を想定区域とすることは不適当である。
以上

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