公益財団法人 日本野鳥の会

北海道・石狩湾新港での洋上風力発電所建設計画に対し意見書を提出しました

北海道石狩市「(仮称)石狩湾新港洋上風力発電事業環境影響方法書」に対する意見書を提出しました

2012.07.09

 日本野鳥の会札幌支部、日本野鳥の会小樽支部と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、国内で初となる本格的な沖合型洋上風力発電であり、国内では海鳥への影響が未知である、北海道石狩市の石狩湾新港での洋上風力発電施設の建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である株式会社グリーンパワーインベストメント(代表取締役 堀 俊夫氏)に対して、下記の内容で意見書を提出しました。

意見書提出先

株式会社グリーンパワーインベストメント

本件問合せ連絡先

公益財団法人日本野鳥の会(自然保護室・浦 達也) TEL 03-5436-2633

日野鳥発第 10 号
平成24年7月9日

株式会社グリーンパワーインベストメント
代表取締役 堀 俊夫 様

日本野鳥の会札幌支部
支部長 山田 三夫

日本野鳥の会小樽支部
支部長 梅木賢俊

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤 仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル

「(仮称)石狩湾新港洋上風力発電事業 環境影響評価方法書」に対する意見書

 この度、貴社が作成された(仮称)石狩湾新港洋上風力発電事業に係る環境影響評価方法書について、下記のとおり意見を提出します。

  1. 事業実施予定区域及び周辺の鳥類及び重要な種について
     事業実施予定区域及び周辺の鳥類及び重要な種を選定するにあたり、「第3回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書‐日本産鳥類の繁殖分布」の結果を用いているが、対象事業実施予定区域の鳥類の状況を把握するためには、「札幌東北部」に係るメッシュの内容も用いるべきである。
  2. 鳥の渡り経路の調査について
     事業を検討するうえで、事業実施予定区域内に生息する海鳥を中心とした鳥類だけでなく、風車の設置により、衝突や障壁効果といった影響を受けると考えられる、海岸部を含めた周辺地域を渡り経路として利用する鳥類についても調べておく必要がある。そのため、同方法書の項目として、「鳥類の渡り時の移動経路に関する調査」を追加すべきである。
     また、渡り時の経路の調査にあたっては、レーダー調査と定点による目視調査の両方を用いるべきであり、調査期間は鳥類の渡り時期とである9~11月と3~5月とし、その間、月に2回、1回3日間の調査を行うべきである。
     なお、渡り時期には調査区域を利用する鳥類の種構成が大きく変化することでされるため、少なくとも月に2回程度、調査を行わなければ、その変化を把握できないことに留意されたい。
     さらに、オジロワシなどの海ワシ類、マガンやヒシクイおよび希少種となっている海鳥の移動の妨げとならないよう十分に注意して調査をすべきである。
  3. 海鳥の調査手法について
     「海鳥の生息状況を把握するために、船舶を利用したトランセクト調査や定点観察調査を実施する」とあるが、同方法書には、定点の位置を記載していないので、地図等を用いてその調査地点を示すべきである。
     また、海鳥の調査にあたっては、今後、衝突リスクなどを判断する可能性があることから、出現した鳥の種や個体数とその位置について、GPS機器を使っての記録だけでなく、それらの飛行高度や飛行速度、飛行方向や確認距離を計測すべきである。
     なお、海鳥の識別には熟練し技術と経験を要することから、調査者は海鳥調査に習熟した者を充て、記録ミスが無いようにボイスレコーダーを使用することを推奨する。
     さらに、同方法書に用いる飛行高度計測時の高度区分は、本事業で実際に使用する風力発電機の特徴に合わせて、Lを0~20m、Mを20~130mとすべきである。
  4. 海鳥の調査地点について
    海鳥の調査を行うにあたり、同方法書では3km間隔で長さ7kmのトランセクトラインが3本設定されているが、実際に対象事業実施予定区域を通るトランセクトはうち1本しかない。事後評価が難しい洋上風力発電事業では、事業実施予定区域の海鳥等の生息状況を事前に十分把握し、影響を評価することが重要となる。そのためにも、トランセクトラインは1.5km間隔とするとともに、事業実施予定区域を通るトランセクトラインを3本程度、全体で5本程度のトランセクトラインを設定する必要がある。
  5. 海鳥の調査期間について
     海鳥の調査期間等については、「四季の実施」とするとある。しかし、生息する海鳥の種構成は、特に秋~冬では頻繁に変わることが予想される。
     ついては、英国での事例を参考にして、少なくとも最初の1年間は、1回の調査を3日間として、毎月調査を行うべきである。
  6. 希少鳥類に関する調査について
     船舶からや、定点による海鳥の調査等において、事業実施予定区域やその周辺で、希少鳥類の生息が確認された場合は、「希少鳥類に関する調査」等を追加して実施すべきである。
  7. 海底地形の改変について
     石狩湾と同様、遠浅の砂質地形であるScroby Sands洋上風力発電所(英国)周辺では、発電所の建設後、海底の砂の流れが変わり、砂が堆積もしくは流出する場所が発生し、周辺で繁殖していたアジサシ類が生息地を放棄するなど、大きな影響が出ている。
     これらの事例も踏まえ、海底地形の変化について、シミュレーションを行い、その影響評価を方法書に含めるべきである。
  8. 協議会の設置について
     本事業は、国内でもまだ例のない本格的な沖合型洋上風力発電の建設計画である。このため、沖合型洋上風力発電を設置した場合に、どのような環境影響が出るかといった国内での知見は皆無であることから、国土交通省港湾局が2012年6月に策定した「港湾における風力発電の導入を円滑にするマニュアル」に基づき、検討のための協議会を設置し、各関係機関と協議しながら事業を進めるべきである。
     なお、同協議会には、関係者または学識経験者として、鳥類保護団体を参加させるべきである。

参考文献

  • Joyce Huddleston. Understanding the Environmental Impacts of Offshore Windfarms. 2010. COWRIE, London.
  • 環境庁.1981.第3回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書‐日本産鳥類の繁殖分布.環境庁,東京.
  • 土交通省港湾局・環境省地球環境局.2012.港湾における風力発電について-港湾の管理運営との共生のためのマニュアル Ver.1.国土交通省,東京.
  • 財団法人日本野鳥の会.2011.野鳥と洋上風力発電‐影響とその評価.日本野鳥の会,東京.
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