公益財団法人 日本野鳥の会

「(仮称)樺岡風力発電事業 環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第 40 号

「(仮称)樺岡風力発電事業 環境影響評価方法書」に係る意見書

平成27年8月12日 提出

項目 記入欄
氏名 ①日本野鳥の会道北支部 支部長 小杉 和樹
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住所 ①〒097-0401 利尻郡利尻町沓形字富士見町
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
方法書についての環境の保全の見地からの意見

(1)重要な地形について
 地球最後の氷河期であるウルム氷河期末期に形成されたといわれる周氷河地形を持つ稚内丘陵は現在、稚内内陸部を特徴づける地形であるが、かつては北海道の至るところで形成されていた地形である。しかし、これまでにその多くは開発などで破壊され、現在この美しい地形がもっとも顕著にみられるのは宗谷丘陵だけであり、北海道遺産に登録される貴重な地形である。
 そのような中で、本方法書にある対象事業実施区域(以下、計画地と言う)は、この貴重な周氷河地形を持つ宗谷丘陵と重なっており、その保護の観点から、宗谷丘陵にかかる場所は計画地に含めるべきではない。

(2)鳥類調査方法について
1)ルートセンサス法について
・1つのコースにつき、出現種数が飽和する4~6回のセンサスを行うことで1回の調査とし、2年間実施すること。
2)ポイントセンサス法について
・調査は毎月実施し、特に繁殖期など計画地で鳥類の種数または個体数が増える時期には、月に2回以上の調査を実施すること。これは、近年の研究により、調査回数を重ねる方が、重ねない場合に比べ、風車に対する鳥類の衝突確率の計算結果において低い数字が算出される傾向がある(Douglasら(2012))ことが分かってきたことによる。
3)鳥類(渡り鳥)の調査について
①調査対象はコハクチョウ等のガン・カモ類だけでなく、猛禽類や小鳥類など対象を広げ、調査、観察すること。
②調査は11月も行うこと。これは、計画地では11月も一般鳥類や海ワシ類の渡りが観察されていることによる。
③1週間連続した観察を1回の調査として月2回、または3日間連続した観察を1回の調査として月4回、2年間実施すること。これは、渡り鳥の種類や個体数、時期等には年による変動が見られ、記載されている調査頻度では、年ごとの変動および計画地における渡り鳥のピーク状況を把握することが難しく、より正確なデータを確保するのが難しいと判断されることによる。
④垂直回しを含めたレーダー調査を活用し、計画地における海ワシ類およびその他猛禽類と夜間の小鳥の渡り状況を把握すること。これにより、鳥の種類は分からなくても、おおよその個体数と飛行高度を把握することで、計画地が野鳥の渡り経路になっていないか、飛行高度等からみてバードストライクが発生する危険性がないか確認することが可能となると判断される。
4)鳥類(希少猛禽類)の調査について
・希少猛禽類の繁殖が確認された場合には、繁殖期から幼鳥の分散開始までにおいて月に2回以上の調査を実施すること。
その必要性は、上記2)後段の理由に同じ。

5)鳥類(希少猛禽類・渡り)の調査について
・渡り等で希少猛禽類が計画地を利用する頻度が高い時期には、月に2回以上の調査を実施すること。その必要性は、上記2)後段の理由に同じ。

(3)その他
1)本件のような大規模な計画においては、調査方法および調査結果の評価等に関する有識者検討会を開催、協議すべきである。
2)計画地周辺には準絶滅危惧種の鳥類オオジシギが多数繁殖している可能性がある。オオジシギはでディスプレイフライトを含む繁殖行動からバードストライクに遭う可能性が高いと考えられ、実際に、国内でもこれまでに複数のオオジシギが犠牲になっている。そのため、オオジシギの繁殖の有無、繁殖確認位置や行動、飛行高度の確認に最大限努めること。
3)コウモリの調査において、バットディテクターはフリーケンシー・ディビジョン式を用いるものとし、また、カスミ網またはハープトラップによる捕獲調査も行い、計画地におけるコウモリの利用状況をできるだけ詳しく把握すること。
4)本計画地は既に他事業者が計画を進めている計画地に近接していることから、鳥類および景観に対して、他の事業者による事業計画内容との複合的な影響について十分な調査を行うこと。
5)北海道北部には将来的に相当数の風車が設置される状況にあることから、調査にあたっては、風車設置地数を減じることを基本に調査を行うこと。
6)風車設置による景観への影響について、北海道北部の景観がきわめて人工物の少ない自然度が高いものであることを十分に認識し、単に数値化した評価にならぬよう調査を行うこと。

以上

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