公益財団法人 日本野鳥の会

宮崎県串間市「串間風力発電所(仮称)建設計画 環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました

2013.3.21

 日本野鳥の会宮崎県支部と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京都品川区、会員サポーター数5万人)は、国内でも最大級となる風力発電計画であり、特に渡り鳥への影響が懸念される、宮崎県串間市での風力発電施設の建設計画に関して、適切な環境影響評価が行われるための調査手法を提案する観点から、事業者である串間ウインドヒル株式会社(代表取締役社長 久富 洋一 氏)に対して、下記の内容で意見書を提出しました。

日野鳥発第  101 号

「串間風力発電所(仮称)建設計画 環境影響評価方法書」に関する意見書

平成25年 3月21日

ご氏名 日本野鳥の会宮崎県支部
支部長 前田(まえだ)幹雄(みきお)

〒141-0031
ご住所 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
ご氏名 公益財団法人日本野鳥の会
理事長 佐藤(さとう)仁志(ひとし)
連絡先 03-5436-2633

環境影響評価法第8条の規定に基づき、環境の保全の見地から次の通り意見を提出する。

 この度、貴社が作成された「串間風力発電所(仮称)設置計画」に係る環境影響評価方法書について、次の通り意見を提出します。

I.対象事業計画で確認されている希少鳥類について
2010年3月に宮崎県環境科学協会が発行した「宮崎県の保護上重要な野生生物」(宮崎県版レッドデータブック)によれば、対象事業実施区域周辺では、クマタカをはじめ、別記1に示した希少鳥類の生息が多数確認されている。
ついては、一般鳥類はもとより、これら希少鳥類についても、風力発電施設の建設が与える影響を評価、予測するための十分な調査が必要である。

II.【3.1自然的状況】について
第3.1-17表(1)について、本来記載すべきクマタカが記載されていない。
ついては、この表にクマタカを加え、重要な種として影響評価の対象とすること。

III.【4.2調査、予測及び評価の手法の選定】について
1.第4.2-4表(1)について
① 対象事業実施区域において、適切な時期に一般鳥類調査と同じ回数、夜間鳥類調査を実施し、夜行性鳥類の有無など必要な情報把握に努めること。

② 対象事業区域のみならず、周辺域も含め、適切な時期に一般鳥類調査と同じ回数で鳥類における任意踏査を実施し、重要な種や注目すべき生息地の情報等の把握に努めること。

③ 鳥類に関するラインセンサス法での調査については、各調査期において確認種数が飽和するよう、1回の調査につき4回のセンサスを行うこと。

④ 鳥類に関するポイントセンサス法での調査については、調査地点を地図に示し、調査の目的や対象種に応じた適切な調査時間や頻度を設定したうえで、各調査時期において、1回の調査につき3日以上、調査を実施すること。

⑤ 鳥類に関する空間飛翔調査および飛翔軌跡調査については、調査地点を地図に示し、調査実施に必要十分な調査地点の位置および数となっているか検討すること。そのうえで、調査地点の位置が適切はなかったり、調査地点数が十分でないと判断される場合は、調査地点の位置見直しや調査地点の増設を行うこと。

⑥ 鳥類に関する飛翔軌跡調査については、飛翔高度を正確に把握するため、レーザー距離計等を使用すること。

2.第4.2-4表(2)について
① 鳥類の調査期間については、「春夏秋冬計5回行う」とのみ記されているが、具体的には春の「渡り時期、繁殖期、秋の渡り時期及び越冬期に計5回行う」とすべきである。

② 対象事業実施区域周辺にどのような鳥類が繁殖、越冬、春秋の渡りを行っているか、その全容を掴むには、各年により変動があることを踏まえ、単年度調査では不十分であり、クマタカ同様、少なくとも2年以上継続して調査を実施すること。

③ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査についても、別記2のように対象事業実施区域およびその周辺で、多くの渡り鳥(カッコウ、アカショウビン、オオルリなどの夏鳥、オオタカ、ハイタカなどの冬鳥)が通過していることが想定されるため、猛禽類だけでなく、全ての渡り鳥を対象に十分な調査を実施すること。

④ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査については、野鳥の渡り時期の幅が広いことから、春季調査については3月中旬~5月上旬、秋季調査については8月下旬~11月中旬とし、また、期間中の調査は複数日とするなど、十分な配慮が必要である。さらに、渡り時期に出現する鳥種の変化も、短期間中でも大きいことから、各調査は、少なくとも2週間に1回(1回につき3日間)程度実施すること。

⑤ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査については、調査地点を地図に示し、調査実施に必要十分な調査地点の位置および数となっているか検討すること。そのうえで、その位置が適切でなかったり、調査地点数が十分でないと判断される場合は、調査地点の位置見直しや調査地点の増設を行うこと。

⑥ 鳥類の渡り時期の移動経路に関する調査については、対象事業実施区域および周辺の地形、植生、社会的状況が許す範囲で、昼夜間のレーダー調査を行うこと。

⑦ クマタカやサシバなどの希少猛禽類の生息状況調査は、1回の調査を3日間として毎月2回以上、少なくとも2年間実施すること。特に、猛禽類の風車へのバードストライクは天候不良時に起きやすいとされることから、好天時と悪天候時の行動様式についても調査すること。

3.第4.2-3図(1)について
 クマタカの定点調査については、まず、定点からの視野図を作成したうえで、クマタカの持つ広い行動圏を把握するのに十分な定点の位置および数となっているか検討すること。そのうえで、その定点が適切な場所でなかったり箇所数が十分でないと判断される場合は、定点の位置見直しや定点の増設を行うこと。

IV.その他
 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構による風力発電のための環境影響評価マニュアル(第2版)に従い、本方法書の確定にあたっては、公開を前提として、有識者からの意見聴取を行うこと。 また、環境調査中においても、随時、調査が適切に行われているか等を検討し、風力発電と野鳥との共存が図られるよう、公開を前提とした複数の有識者からなる委員会を設置し、必要な検討や提言を受けること。

別記1

「対象事業計画杭域で確認されている主な希少鳥類」について
※宮崎県の保護上重要な野生生物(宮崎県版レッドデータブック)より
・クマタカ…環境省レッドリスト : 準絶滅危惧ⅠB(EN)
      宮崎県レッドリスト : 絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU-g)
・フクロウ…宮崎県レッドリスト : 絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU-g)
・カッコウ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・アカショウビン…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・ブッポウソウ…環境省レッドリスト : 絶滅危惧Ⅰ類(EN)
        宮崎県レッドリスト : 絶滅危惧ⅠB類(EN-r)
・オオルリ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・サンコウチョウ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・サシバ…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-r)
・アオバズク…宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU-g)
・コシジロヤマドリ…環境省レッドリスト : 準絶滅危惧(NT)
          宮崎県レッドリスト : 準絶滅危惧(NT-g)

別記2
「日南市南郷町贄波 峠の駐車場(県亜熱帯試験場)2011年会員調査」

調査日 天候 サシバ ノスリ ハイタカ オオタカ ハヤブサ チゴハヤブサ チョウゲンボウ ミサゴ ツミ
10月 2日 晴   1         1    
10月 9日 晴 3 1 3       2    
10月10日 曇     1     2      
10月12日 晴 1   2 1   4      
10月13日 曇     3       3    
10月16日 晴     2       2 2  
10月17日 曇     2     1      
10月18日 晴     1     1 2    
10月19日 晴 1   4     2 2    
10月22日 曇     8     1   1  
10月25日 曇 1   2       1    
10月26日 晴     7         2  
10月27日 晴     2            
10月31日 晴   2 2   2        
11月 1日 晴     20            
11月 3日 曇 1 1 3            
11月 7日 晴     4 2 2        
11月13日 晴     30         1  
11月14日 晴     4            
11月15日 晴   3 7            
11月17日 晴     5   2        
11月20日 晴     2         1  
11月21日 晴   1 2            
7 9 116 3 6 11 13 7 0

※1.上記の調査は2012年1月1日発行、“野鳥だより みやざき”229号に掲載。
※2.例年はサシバが多いが2011年秋は少なく、例年よりハイタカが多かった。
※3.観察地の宮崎県亜熱帯試験場は日南市南郷町贄波海岸沿いの高台にあり、試験場から約12キロ南が当該対象事業実施区域のある都井岬および荒崎地区となる。

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