公益財団法人 日本野鳥の会

汐首岬のウインドファームの設置計画に対する要望書

日野鳥発第33号
平成18年6月27日

株式会社ユーラスエナジージャパン 御中

財団法人 日本野鳥の会
会長  柳生 博
日本野鳥の会北海道ブロック協議会
会 長  藤巻 裕蔵

汐首岬のウインドファームの設置計画に対する要望書

現在、貴社が函館市汐首町の汐首岬において計画されているウインドファームの計画地は、北海道と本州の間を渡る鳥類の渡りのルートとして重要な位置にあることが明らかになりつつあることはご承知のとおりです。日本野鳥の会道南檜山支部が2005年秋(9月下旬~11月の13日間)と2006年春(3月下旬~5月中旬の18日間)に行った調査によれば、以下のことが明らかになっています。

  1. 計画地付近は、複数の絶滅のおそれのある種の生息地となっており、風車の設置により衝突死等の影響を被る危険性があります
    計画地付近の上空を、次のような絶滅のおそれのある種が飛翔しているところが見つかりました。

    オジロワシ
    絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下種の保存法と略記)国内希少野生動植物種、レッドデータブック(以下RDBと略記)絶滅危惧IB類、天然記念物
    クマタカ
    種の保存法国内希少野生動植物種、レッドデータブック(以下RDBと略記)絶滅危惧IB類、天然記念物
    オオタカ
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧II類
    チュウヒ
    RDB絶滅危惧II類
    ハヤブサ
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧II類
    ハイタカ
    RDB準絶滅危惧
    ミサゴ
    RDB準絶滅危惧
    ハチクマ
    RDB準絶滅危惧

    これらの希少猛禽類は、建設予定地付近を渡りの経路としている可能性が高いと考えられます。またハヤブサについてはすぐ近くに繁殖地があり、風車が設置されれば繁殖期の行動を阻害されることも予想されます。
    周辺の海岸、海域では、絶滅のおそれのある海鳥として下記の種も目撃されました(2006年4~5月)。

    チシマウガラス
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧IA類

    これらの種は、風車の設置により衝突死の危険が高まり、生存が脅かされるおそれがあります。特に猛禽類のように産卵数が少なく長寿の種は、1羽の死亡がその個体群の存続に大きな影響を与えます。ウインドファームの建設によって衝突死が起これば、たとえ低頻度であったとしても個体群は危機にさらされます。北海道内においては、2004年以来すでに5羽ものオジロワシが風力発電施設に衝突して死んだと見られており、風車への衝突死は希少猛禽類にとって現実の脅威となっています。

  2. 希少種以外の鳥類も多種多数渡っており、北海道と本州の間の鳥類の渡りのルートとして重要な場所となっています
    計画地付近では他にも、調査期間中通算で秋季294羽、春季491羽に及ぶノスリや、1日で3000羽を超すこともあるヒヨドリなど、96種以上の鳥類が確認されており、その行動から大部分は渡りの途上と思われます。地形的にも、北海道と本州の大間岬との間を結ぶ鳥類の渡りのルートとして重要な場所である可能性が高く、従来知られていた白神岬-竜飛崎と並ぶ重要なルートである可能性が示唆されています。このような場所にウインドファームを設置すれば、非常に多数の鳥類が衝突死し、あるいは風車を回避するために渡り行動に余分な負荷がかかるといったマイナスの影響を、長期間にわたって被るおそれがあります。

短期間の断片的な調査にも関わらず、以上のような事実が明らかになっており、計画地付近が多くの鳥類にとって非常に重要な場所であり、ウインドファームの設置が鳥類への脅威となり、特に希少種の生存を脅かすことになることは明白と思われます。

 環境省は、2004年3月に公表した「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」において、「風力発電施設の設置にあたっては、事前の環境調査の結果を踏まえて鳥類等の野生生物の重要な生息地・生育地(例えば猛禽類をはじめとした希少種の生息地や、渡り鳥や海鳥の重要な渡来地、中継地、繁殖地等)においては、立地計画段階において回避する等の環境保全措置を講ずることが必要である。」としていますが、汐首岬のウインドファームの計画地はまさに、この回避の対象に該当する場所にあります。

 以上のことから、次のことを要望いたします。

  1. 汐首岬におけるウインドファームの計画地は、鳥類に対する重大な環境影響が予測されるため、設置に適当な場所ではありません。立地選定の抜本的な見直しをお願いいたします。

以上

  • 日本野鳥の会
    事務局:〒151-0061  東京都渋谷区初台1-47-1
    本件担当部署:自然保護室 〒191-0041 日野市南平2-35-2 WING
  • 日本野鳥の会北海道ブロック協議会
    事務局:〒070-8332 旭川市南2条21丁目 高野正方 日本野鳥の会旭川支部
    構成団体(15団体)
    日本野鳥の会小清水支部、日本野鳥の会オホーツク支部、日本野鳥の会根室支部、日本野鳥の会釧路支部、日本野鳥の会十勝支部、日本野鳥の会旭川支部、日本野鳥の会滝川支部、日本野鳥の会道北支部、日本野鳥の会江別支部、日本野鳥の会札幌支部、日本野鳥の会小樽支部、日本野鳥の会苫小牧支部、日本野鳥の会室蘭支部、日本野鳥の会函館支部、日本野鳥の会道南檜山支部
自然保護活動のご支援を お願いします!
  • 入会
  • 寄付