公益財団法人 日本野鳥の会

宗谷岬ウインドファーム計画について

日野鳥発 第1号
平成16年4月1日

株式会社ユーラスエナジージャパン
札幌支社長  秋吉 優 様

〒151-0061
東京都渋谷区初台1-47-1
財団法人 日本野鳥の会
会長 小杉 隆

宗谷岬ウインドファーム計画について

現在、貴社において計画されている宗谷岬ウインドファーム(仮称)計画は、鳥類の保護上重大な問題が予測されることから、下記について要望いたします。

(要旨)

  1. 宗谷岬ウインドファーム計画(仮称)における環境影響評価は、鳥類に関する影響評価に重大な欠陥があるため、4月の工事着工を見合わせること。
  2. 希少種オオワシ、オジロワシ等の計画地周辺における渡り状況について十分な追加調査を行ない、その結果に基づいて環境影響評価をやり直すこと。
  3. 環境影響評価の結果、オオワシ、オジロワシ等への悪影響が避けられない場合は、計画を変更、または中止すること。

(補足説明)

  • 当該計画地は、日本最北の鳥類の渡りルートとして重要な位置にあります。特に、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の国内希少野生動植物種であり、IUCNのレッドデータブック記載種、日ロ渡り鳥条約の記載種でもある国際的な保護鳥オジロワシやオオワシの渡り経路の要所であることが、環境省がロシアと共同で行なった衛星追跡調査(1993~1995年度に実施)により明らかになっています。また、(財)日本野鳥の会(以下「本会」という。)が1997~1999年度に行なった調査でも確認されています。
  • 現在、環境省で検討されている「国立・国定公園内における風力発電施設設置のあり方に関する基本的考え方」においても、「風力発電施設の設置にあたっては、事前の環境調査の結果を踏まえて鳥類等の野生生物の重要な生息地・生育地(例えば猛禽類をはじめとした希少種の生息地や、渡り鳥や海鳥の重要な渡来地、中継地、繁殖地等)においては、立地計画段階において回避する等の環境保全措置を講ずることが必要である。」とされています。宗谷岬ウインドファームの建設される場所はまさに、この基準に該当する場所です。
  • オジロワシやオオワシのように個体数が少ない鳥類は、1羽の死亡がその個体群に大きな影響を与えます。たとえばオオワシでは、年間10羽程度の死亡が増えるだけで個体群が絶滅に向かってしまうことが指摘されています。したがってウインドファームの建設によって衝突死が起これば、たとえ低頻度であったとしても個体群は危機にさらされます。
  • 苫前町においては、2004年2月5日に、風車に衝突して死んだと見られるオジロワシの死体が発見されました。このように、風車への衝突死はオオワシやオジロワシにとって現実の脅威となっているため、宗谷岬ウインドファームの建設にあたっては十分に調査を行ない、その場所への建設の可否を含めて慎重に検討することが必要です。
  • 本会が、宗谷岬ウインドファーム任意検討委員会の一員として、貴社より任意検討委員会に提供いただいた「宗谷岬ウインドファーム建設に係る環境影響評価調査」について、詳細に検討を行った結果、貴社が実施された調査及びその調査結果に基づく環境影響評価は、まことに不十分なものであると判断せざるをえない内容でした。
  • ワシ類は、天候や時期、時間帯等により飛翔場所や高さ等が変化します。したがって、長期にわたってさまざまな気象状態での調査を行なうことが不可欠ですが、貴社の調査はそのような方法で行われておりませんでした。
  • 鳥類の環境影響評価に重大な問題を残した状況下における工事着工は、環境影響評価の趣旨からして、重大な問題があると考えます。
  • また、平成16年4月から計画地で実施される除雪・重機運搬などの作業が開始された後における追加調査では、これらの作業が鳥類の分布や行動に影響を与え得るため、客観的なデータとはなりえず、環境影響評価のための有用な調査とはなり得ません。

以上

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