2006年2月6日掲載
今、問題となっているのは高病原性鳥インフルエンザと呼ばれるものです。この病気は自然界にもともとある、ほとんど病原性の無い鳥インフルエンザウイルスが、ニワトリなどの家禽に感染したのち変異を起こして発生すると考えられていまして、野鳥が持つ鳥インフルエンザとは別の病気です。そのため高病原性鳥インフルエンザの発生を防ぐには、まず病原性の無い鳥インフルエンザの家禽への感染を防ぐ必要があります。
鳥インフルエンザは通常では人に感染しないとされます。これは、ウイルスに適合性のあるタンパク質が鳥特有の物だからです。国外での感染例は、病気にかかった家禽の糞の粉を吸い込むなどして、大量のウイルスを取り込んだためと考えられています。高病原性鳥インフルエンザが野鳥から直接人に感染した例はありません。
したがって、野鳥が近くにいるからといって怖がることはありません。
*高原性鳥インフルエンザについて詳しくは、下記国立感染症研究所感染症情報センターのホームページを参照してください。
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html
ガンカモ類など越冬にやってくる水鳥類は、鳥インフルエンザのウイルスを持っているものが多いとされますが、これは病原性が無いウイルスです。
アジアで高病原性鳥インフルエンザが広域的に感染が広がった12月末から1月は、渡り鳥の移動が少ない時期です。高病原性鳥インフルエンザのウイルスはニワトリなど家禽で発生したのち、家禽や家禽をあつかう人の靴や衣服、車に付いて拡大していることが多いと考えられます。韓国での感染拡大では、堆肥用に鶏舎から出た廃棄物を運搬する車がウイルスの運び屋となったと考えられています。
自然状態では、水鳥類がニワトリなど家禽と接することはほとんどありません。水鳥類を捕獲して持ち帰るというような人間活動により、家禽までウイルスが持ち込まれ高病原性のウイルスが発生したことが考えられます。
養鶏場などでは、第一に作業着や靴の衛生管理を行って、ウイルスを人間が持ち込まないようにする必要があります。また鶏舎内に餌を求めて、スズメなど小鳥類が入り込まないような構造にすることも必要です。
自然界には、ウイルスやバクテリアを初めとして、様々な微生物が存在します。これらの微生物は野生の動物には問題なくとも、何らかの原因で家禽やペットに感染すると病気を起こしてしまうものがいることは確かです。野生の生き物と家禽や人とが一定の距離を置き、自然界の微生物を持ち込まないようにすることが重要です。これが、ひいては高病原性鳥インフルエンザの発生を防ぐことにもなります。
そのためには、以下のことに注意すべきです。
*現在、農水省により高病原性鳥インフルエンザが発生した国からの鳥類の輸入はペットも含めて一切禁止されています。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20040126press_8.htm
3月17日現在、以下の国・地域が鳥インフルエンザの防止のため鳥類の輸入禁止措
置がとられています。
韓国、中国、香港、マカオ、台湾、ベトナム、タイ、カンボジア、ラオス、インド
ネシア、パキスタン、イタリア、オランダ、アメリカ、カナダ
病気の発生と拡散には、なんらかの人為的な原因があると考えられます。日本野鳥の会は、高病原性鳥インフルエンザの流行の人為的原因を明らかにして、対応方法を考えるべきと考えます。
家禽に深刻な病気が発生すると、逆にそれが野鳥に感染し大きな影響を及ぼす可能性があります。野生の生き物たちは、きびしい自然の中で精一杯暮らしています。自然環境条件が悪化して自然の食物が不足するなどすると、水鳥など野鳥が条件のより良い特定の場所に集中し過密化することがあります。こういったところでは病気が発生する確率が高くなりますし、感染が急速に拡大するおそれがあります。野鳥たちが自然な生活ができるような環境を整えることが、最良の対策といえます。