野鳥を怖がる必要はありません -カラスの高病原性鳥インフルエンザ感染について-
2004年3月12日発表
3月8日から11日にかけて、京都府丹波町・園部町と大阪府茨木市で高病原性鳥インフルエンザに感染していたハシブトガラスの報告がありました。そのため、カラスが鳥インフルエンザを身近なところへ広げていくのではないか、さらには他の野鳥にも鳥インフルエンザが広がって、人へも感染させるのではないかという不安を持っている人もいるようです。
でも、そんな心配はいりません。自然の中で精一杯生きている野鳥たちを、暖かく見守ってあげてください。
- 野鳥から人への感染例はありません
野鳥の中では、カモ類など水鳥が鳥インフルエンザを持っていることがありますが、野外で生活している野鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した例はありません。鳥インフルエンザは、高病原性のものであっても人へは感染しないのです。これは、ウイルスへの適合性があるたんぱく質の種類が鳥と人では違うためです。
この冬はアジアの広い地域で鳥インフルエンザが発生しましたが、人が感染したのはタイやベトナムでのごく少数でした。これらの感染例は、飼っていたニワトリの糞の粉塵を吸い込むなど、ウイルスを多量に取り込んでしまった特殊な例と考えられています。
カラス類など野鳥は身近な場所に住んでいても、飼い鳥と人とのような密接な関係ではないので、鳥インフルエンザをうつされることはまずありません。
- カラスは養鶏場で感染したと考えられます
丹波町・園部町、茨木市ともに3月5日に保護されたり、死体が拾われたりしています。したがってこれらの鳥は、丹波町の養鶏場でニワトリが大量に死んでいた2月26日前後に感染したと推定されます。園部町は丹波町から9kmですが、茨木市は丹波町から約30kmの距離にあります。
カラス類は冬の間特定の場所に集団ねぐらを作り、そこから10kmくらいを行動圏としている個体が多いと考えられています。しかし、中には40km以上出かけるものがいたという研究例もありますし、ねぐらを代える場合もあります。したがって感染が見つかったカラスたちは、丹波町の鳥インフルエンザが発生した養鶏場で感染した可能性が高いと考えられます。
なお、人への感染はまず考えなくて良いのですが、野鳥から飼っている鳥への感染は注意が必要です。また、飼い鳥の病気を野鳥にうつさない注意もいります。養鶏場では、鶏舎に野鳥が入り込まないようにすることと同時に、死んだニワトリやフンを放置しておかないことが必要です。ペットとして飼っている鳥にも同様の注意が必要です。
- 感染は終息していくと思われます
今回は不幸にして、養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザはハシブトガラスという自然界への2次感染を起こしてしまいました。これまで、野鳥たちの間で高病原性鳥インフルエンザはほとんど知られていません。また、カラス類や小鳥類では、鳥インフルエンザそのものの保有率が低いことが分かっています。
今回感染したカラスたちは、ウイルスが充満した養鶏場近くで感染してしまったと思われます。野鳥たちは鳥インフルエンザに感染しても、ウイルスの活動に耐えることができれば、体の中に抗体が出来てウイルスを消滅させます。これは、人がインフルエンザにかかった時と同じです。
これからの季節、鳥たちの大部分は集団生活を解消し、縄張りを作って夫婦で暮らすようになります。そうなると、鳥から鳥へウイルスをうつす機会も少なくなります。
- 飼い鳥を捨てないでください
鳥インフルエンザが怖いからといって、飼っていた鳥を捨ててしまうことが多発しています。これは自然の生態系をこわす外来種を増やすことになりかねませんし、動物愛護法違反で罰せられることでもあります。厳に慎んでください。
※参考サイト