公益財団法人 日本野鳥の会

農林水産省高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム中間とりまとめの解説

2007年5月9日掲載
(財)日本野鳥の会 金井裕

4月18日に農林水産省の第24回家きん疾病小委員会及び第4回高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム検討会が合同で開催され、2007年の宮崎県及び岡山県における高病原性鳥インフルエンザ発生にかかる感染経路究明の「中間とりまとめ」が公表されました。

この感染経路究明チームには、(財)日本野鳥の会の主任研究員 金井裕が委員として参加しています。「中間とりまとめ」の内容については、農林水産省のホームページで見ることができますが、わかりにくい点もありますので解説や補足をすることにしました。囲みの部分が「中間とりまとめ」に記載されている内容です。

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1 発生概要

・平成18年11月に韓国で発生が確認された後、翌年1月13日から2月1日にかけて養鶏業が盛んな宮崎県及び岡山県において4例続けて発生した。
1例目:宮崎県清武町における肉用種鶏飼養農場(約1万2千羽飼養、3鶏舎)
2例目:宮崎県日向市における肉用鶏飼養農場(約5万3千羽飼養、5鶏舎)
3例目:岡山県高梁市における採卵簸飼養農場(約1万2千羽飼養、10鶏舎)
4例目:宮崎県新富町における採卵鶏飼養農場(約9万3千羽飼養、1鶏舎)
・発生後、発生農場では殺処分、焼却・埋却、消毒などの防疫措置を実施した。
・発生農場を中心に半径10kmの範囲で移動制限区域-を設け、養鶏場及び愛玩鳥の検査を実施したところすべて陰性であり、続発もなかったことから3月1日にすべての移動制限を解除した。

2006年秋から2007年にかけて日韓の感染発生状況の比較

日本での感染発生は、2007年も2004年も韓国での発生に続いて起こっています。遺伝的にも非常に近く、ほぼ同じウイルスであると言って良いものであるため、日本での発生を考える時に、韓国の発生状況を見ておく必要があります。韓国の発生についての情報を得るのはむずかしいのですが、韓国内の新聞報道(※)を見ると概要をつかむことはできます。ここでは、発生時期や分布を見てみることにします。
※韓国内の発生については、朝鮮日報、中央日報、東亜日報の日本語ホームページの記事を参考にさせていただきました。

1)感染の発生時期
日韓双方の感染発生時期を一覧表にまとめてみました。韓国では2007年2月14日現在、6か所での発生がありました。韓国での感染発生は11月19日に全羅北道益山市において死亡鶏が増加したことが発端でした。この感染公表は11月23日でしたが、11月28日に道路沿いに500m南の地点で2例目の感染が公表されました。次いで全羅北道金堤市のウズラ養飼場にて12月7日から死亡が始まったことが、12月11日に公表されました。
12月21日には、忠清南道牙山市のアヒル養飼場にて感染が発生していたことが公表されました。ここでは12月11日より産卵率の低下がみられたので、検査を行ったとのことです。2007年1月22日には、4例目から8kmの忠清南道天安市の採卵養鶏場で1月19日に大量死があったことが公表されました。この養鶏場近くで12月21日に採取した野生カモ類の糞から、ウイルスが検出されたことも同時に公表されています。そして、2007年2月14日に2月6日より京幾道安城市の養鶏場で大量死が始まっていたことが公表されました。
日本においては、2007年1月11日の夜に宮崎県清武町での発生疑いがあったことが公表されました。ニワトリの死亡数が増加したのは1月7日からでした。ついで1月23日に、1月22日に243羽が死亡した事例が宮崎県日向市東郷町にて発生したことが公表されました。1月27日には、岡山県高梁市川上町で前日26日から死亡数が増加し、鳥フルの疑いがあることが公表されました。そして1月30日に、宮崎県新富町の養鶏場で大量に死亡が始まったことが公表されました。また、3月18日には、1月4日に熊本県相良村で保護収容されたクマタカが感染していたことが明らかになりました。
日本での発生は、韓国での発生が起こったのち約1ヶ月後に、韓国内での発生が継続している状況下で起こりました。2004年は、韓国では2003年の11月末から12月初めに始めて感染が発生し、その後1月にかけて発生地近傍から韓国内で発生が続いていました。日本では、2003年末に山口県阿東町で始めて感染が発生し、2月にかけて大分県と京都府で発生しました。2007年と2004年の発生時期は日韓とも極めて似通っています。感染の発生や拡大についても、共通の要因があることが考えられます。

表 2006年から2007年の日韓発生時期比較
表 2006年から2007年の日韓発生時期比較

2 現地調査の概要(調査項目は別紙)

・飼養形態、鶏舎構造、農場の立地環境などは4例4様である。

発生地の分布と自然環境の比較

日韓の発生地を2003-2004年、2006-2007年ともに地図上に示してみました。韓国の感染発生地は2003-2004年、2006-2007年ともに西海岸の低地帯で発生しています。また、牙山市と天安市では両年とも感染が発生しています。低地帯ですので、水田が近くに広がっており、水鳥の大規模生息地も10kmから20kmの範囲に存在しています。
一方、日本においては発生地の広がりには特定のパターンが見られません。西南日本の広範囲に散らばって感染が発生しています。自然環境についても、韓国のように水田や水鳥の大規模生息地が近くにあるのは宮崎県新富町ぐらいです。宮崎県清武町は、かつては水田が多かったようですが、現在は冬作の大根栽培が進んで、冬季には川沿いも大根畑となっています。宮崎県日向市の発生地は谷間の斜面で、岡山県高梁市や、2004年の山口県阿東町、京都府丹波町は山間の小平地でした。感染したクマタカが保護収容された場所は、一例目の清武町、2例目の日向市からそれぞれ約60kmの距離にある熊本県相良村の川辺川の斜面で、周辺は急斜面地帯です。
宮崎県の発生地は、環境構成が異なりますが、日本での感染発生地全体をみると、水鳥類の少ない山間地で、養鶏場では関係者以外の訪問はあまり無いようなところが多いのが特徴と言えます。

図中の数字は日韓それぞれでの感染確認順を示す。韓国天安市では12月21日採取のマガモ糞からウイルスが分離された。

農林水産省感染経路究明チーム中間とりまとめの解説各農場とも平成16年当時に比べ-般的な飼養衛生管理は概ね措置されていた。
・農場の外周に措置すべき農場フェンスについては、各農場とも未整備又は設置されていても破損等が確認されており野生動物や不審者が農場内に侵入可能な状況であった。
・防鳥ネットや金網については、鶏舎外壁や換気用天窓では設置されているものの、全ての農場で隙間又は破損等が確認。また、鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体も確認されたため、これらが兵舎内に侵入していたことが類堆される。
・いずれの発生農場においても、野生生物の存在が確認されている。
・農場・鶏舎出入り口の消毒施設、鶏舎専用長靴・作業着、鶏舎作業管理者の専任化、給与水の消毒、衛生害虫駆除などは、一部不備な点も確認されている。
・人・物品・車両等の動きから海外の発生地域との接点は確認されていない。
・4例の農場間でウイルスを伝播させるような人・物品・車両等の情報は確認されていない。

疫学調査とはなにをしているのか

マスコミ報道では、感染の要因調査として野鳥調査ばかりが目立ちます。しかし、感染要因として一番最初に考えるべきものが、発生地と関係する人や物の動きです。これを調べるのが疫学調査です。個人や企業のプライベート情報を含むため、具体的な報告が行われていないため、何をやっているのかわかりにくい状態となっていますが、もっとも重要な調査であり、実際はもっとも労力と時間をかけているものです。中間報告でも、具体的なことはあまり書いていません。もう少しだけ詳しく、調査項目と概要だけでも示しておきたいと思います。

1) 導入ヒナ
その養鶏場には、どこから、いつヒナを持ってきたか?
今回の発生場所については、どの養鶏場でも導入から日数が経過しているので、関係は無いと考えられます。
2) 卵や肉の出荷
養鶏場からの、卵や肉の出荷先はどこで、出荷した時期はいつか?
発生養鶏場では、出荷がなかったか、出荷先での感染発生はありません。
3) 死亡鶏の移動
死んだ鶏はどのように処理していたか、また処理業者が共通の養鶏場での異常はないか?
今回の処理では、異常はみられていません。
4) 鶏糞の移動
鶏糞はどこに持っていったか?
今回は移動先での異常は起きていません。
5) 人の動き
経営者、作業員、出入り業者、管理獣医師など養鶏場に関わる人の作業内容、来訪暦、海外渡航暦などは?
現時点では、作業も通常どおりで、最近の海外渡航も無い。感染の発生場所と作業員の動きとの関係も認められていません。
6) 車両等の動き
経営者、作業員、出入り業者、管理獣医師など養鶏場に関わる人の移動に伴う車両は?
共通する来訪養鶏場での発生等の異常はないが、さらに確認作業が進められています。清武町以外は、養鶏場隣接地を一般車両が通行するような状況ではありません。
7) 給水
水源および水の消毒、配管の配置や水の流し方は?
消毒が不完全な水を給水していた場合もありましたが、感染発生場所と配水順とも関係は認められていません。
8) 給餌
飼料の保管場所と給餌方法は?
飼料に野鳥やネズミの糞など異物が混入することはないと考えられ、給餌方法と感染発生場所との関係も認められていません。
9) 衛生管理
車両および作業員の消毒場所・方法は?
車両は養鶏場入り口でタイヤ等の消毒が行われ、鶏舎入り口では作業専用長靴を消毒液の中に入れて消毒します。養鶏場毎に何箇所か消毒するポイントがありますが、一部が省略されていたり、専用長靴がなかったり、という場合がありました。
10) 侵入動物
養鶏場および養鶏舎内に侵入していた動物がいたか?
ネズミ穴や野鳥や小動物が侵入可能な穴が空いていた場合があります。防疫処置後ですがネズミの糞やスズメの死体があったり、ハエが鶏舎壁面のすぐ外を飛行していたり鶏舎内に死体があるのを見た養鶏場もあり、そこでは、これらの小動物が鶏舎内外を出入りしていたと考えられます。

各養鶏場の疫学調査内容の詳細は、農水省の正式報告書をお待ちください。

 ・鶏舎内を移動することがないよう飼養されていた2~4例目の農場の死亡鶏は作業管理者の動線や水・飼料・集卵のラインと関係なく、鶏舎内の一部の場所に集中して確認された。

感染発生の初期に対処したため、感染がどこから始まったか詳しくわかっています。その発生地点は養鶏場作業員の鶏舎への出入り口や、水や餌の供給口とは離れたところでした。いくつかの養鶏場では、小動物が侵入可能となっている場所と近接していました。

3 ウイルス性状

(1)遺伝子性状
 ・全ての遺伝子分節が鳥由来である。
 ・分離された4つのウイルスはいずれも近縁であり、中国の青海湖、モンゴル、韓国、ロシアで過去に分離されたウイルスと同じ系統である。また熊本県のクマタカから分離されたウイルスも分離された4つのウイルスと近縁である。
 ・インドネシア、タイ、ベトナムで分離されたウイルスと異なる。
 ・2004年にわが国で分離されたウイルスと異なる。

いわゆる青海湖型とされるウイルスで、韓国と日本には新たに侵入してきたと考えられます。青海湖やモンゴルからいきなり日本に来たというわけではなく、韓国や日本に侵入が起こりやすいどこかにウイルスがあったと考えるべきです。

(2)感受性
 ・鶏に対する静脈内接種及び経鼻接種では、一部の鶏にチアノーゼなどがみられ全て死亡した。
 ・アイガモに対する経鼻接種試験では、ごく少数の死亡例は認められたが、アイガモに対する致死性は低かった。

この結果は、マガモはこのウイルスに感染しても症状を出さない可能性が高いことを示します。(アイガモはマガモの家禽化された品種で、マガモと種は同一)

 ・マウスに対する経鼻接種では、マウスに対する致死性は高かった.

ネズミ類も感染して、ウイルスを運ぶ可能性を示唆します。しかし、養鶏場周辺に生息するネズミ類であるクマネズミ、ハツカネズミ、ドブネズミ、あるいは野外に生息するアカネズミ、ヒメネズミなどが感染するか本当のところは、実際に感染実験で確かめなければわかりません。

(3)ウイルスの伝播カ
 ・ウイルス接種鶏と同居した鶏は全て死亡した。
 ・ウイルス接種アイガモと同居した鶏は全て死亡した。
 ・ウイルス接種アイガモと同居したアイガモは全て生存した。

直接のウイルス接種ではなく、近くに感染鳥がいるだけでも感染が起こるかどうかの試験を行ったということです。結果は、直接接種と同じく感染が起こりました。アイガモでも感染は起こりましたが、角膜に濁りが出た程度の症状でした。

4 野鳥のウイルス保有調査(環境省)

(1)発生確認後に行った発生農場周辺の野鳥のウイルス分離検査
1例目:252羽すべて陰性であった。
2例日:202羽すべて陰性であった。
3例目:209羽すべて陰性であった。
4例日:213羽すべて陰性であった。

感染発生地周辺で野鳥にウイルスが蔓延していることはありませんでした。
環境省発表資料は当会ホームページ参照。

(2)野鳥の全国調査
 ・野鳥の大量死は確認されていない.
 ・平成18年4月から平成19年3月までにおこなった全国の野鳥のウイルス保有調査は6,340羽すべて陰性であった。

西日本の水鳥類の大規模生息地でウイルスは確認されませんでした。

(3)熊本県のクマタカ
 宮崎県で1例日の発生が確認された平成18年1月11日より前の1月4日に熊本県で衰弱死した野生のクマタカから鳥インフルエンザH5Nl亜型ウイルスを分離。3月に行ったクマタカ発見地から槻ね半径10kmの範由で採取した野鳥220羽及び半径5kmの範囲で採取したネズミ17匹からのウイルス検出試験はすべて陰性であった。

クマタカは外傷がなかったことから、鉛中毒を疑って北海道釧路市内の研究機関で検査されました。クマタカは、小哺乳類、野鳥、野外にいる家禽や家畜およびそれらの死体を採食します。
熊本県で、収容地から10km以内の養鶏場および個人飼育鳥のある208戸にあたったところ、異常はありませんでした。

5 ウイルスの感染経路

  今後の発生予防対策を図る上で次の感染経路を想定しておくことが必要。
(1)国内への侵入経路
  【1】分離ウイルスはいずれも近縁で中国、韓国、モンゴルとも同じ系統、
  【2】ウイルスの確認は短期間で広範な地域(宮崎、岡山、熊本)、
  【3】発生地域からの家きん及び家きん肉等の輸入は停止、
  【4】発生農場と海外の発生地域との疫学的な関連が確認されていない、
  【5】小型生物(鳥類、ほ乳類など)を捕食するクマタカからウイルス分離、
  【6】ウイルスの侵入時期は不明、
  【7】韓国のカモでも同じ系統のウイルスが分離、
  などから、感染経路の特定は出来ないが海外で野鳥からウイルスが分離されていること等を踏まえると野鳥によるウイルスの持ち込みが想定される。

環境省が実施した感染地周辺および水鳥などの大規模生息地における野鳥の調査では、野鳥から問題のウイルスは確認されていません。感染発生地の多くは、水鳥類の大規模生息地からも離れています。このような結果からは、感染経路に野鳥が関わっているとする論証はできません。

一方、人為的な感染発生地相互の関係も確認できないため、防疫対策を考える上で人為的要因以外に海外から養鶏場周辺の野外にウイルスが持ちこまれた可能性を想定せざるをえません。野鳥はこのウイルスに感染する可能性があること、韓国においてもマガモからウイルスが発見されていることから、海を越えての運搬者として野鳥を想定して今後の防疫対策を考えるということです。

 一部のマスコミ報道では、野鳥を感染源として断定しているかのような記事がありますが、これは誤りです。

(2)鶏舎への侵入経路
  【1】2~4例目では人の作業動線などと関係なく鶏舎内の一部で限局的に発生、
  【2】防鳥ネットや金網に隙間や破墳が確認、
  【3】発生農場の兵舎内外で野生生物が存在、
  【4】鶏舎内でネズミの糞や野鳥の死体が確認、
  【5】人・物品・車両等の4例の農場間の疫学的な関連がない、
  【6】発生農場の飼養形態、亀舎構造、農場の立地環境などは様々、
  などから、野生生物(ネズミ、野鳥など)によるウイルスの持ち込みが想定される。

今回の感染発生は、極めて初期に確認されたため、2例目から4例目では養鶏舎内での感染発生地点が詳しくわかっています。この地点はどこも鶏舎の入り口からも、餌や水の供給開始地点とも離れていたため、人為的にウイルスが鶏舎に持ち込まれたとは考えにくい状況でした。
一方、2ヶ所の養鶏舎では、感染発生地点近くの防鳥ネットに裂け目があったり、壁面にネズミの開けた穴がありました。ここでは、鶏舎内にスズメなどが入り込んでいたり、ネズミの糞があったりと小型の野生生物が出入りしていたことも確認されています。1か所では、鶏舎に穴などがあったことは確認されていませんが、ネズミがいたことは確認されています。
ラットやマウス、イタチ科のフェレットやネコ科動物など哺乳類でも感染することや、クロバエが体内に一定期間ウイルスを保持することがわかっています。鳥だけでなく、多くの野生動物が感染の伝播に関わる可能性を想定し、防疫対策を考えるということです。

6 今後の対応

海外から国内へのウイルスの侵入経路については野鳥の飛来ルートや生息状況などに関する情報、鶏舎へのウイルスの侵入経路については哺乳動物(マウスなど)に対するウイルス感受性、韓国等の海外の情報など情報を収集する.また人・物品・車両等に関する疫学情報ともあわせて総合的に精査する。

今回の発生について、さらに実施すべき情報収集および検討項目について、短い文章ですが、広範囲な内容が述べられています。

・海外の発生地と日本国内を結ぶ渡りルートや時期があるのか、その種は何かといった、野鳥の渡りについての基礎的な情報を収集する。
・鶏舎内にウイルスを持ち込む可能性のある野生生物には何があるか、つまりどの種がこのウイルスに感染する、あるいはウイルスを蓄積するのか、その期間がどのくらいかをできるかぎり調べる。
・海外、特に日本の隣接地での感染発生状況について野生生物とのかかわりも含めて情報を集める。
・もっとも警戒しなければならない、人為的なウイルス伝播の可能性(人・物品・車両等による)もさらに精査する。
・これらを加えて、総合的に報告をまとめる。

7 今後の高病原性鳥インフル工ンザ対策への提言
  現時点で想定される感染経路から今後とるべき対策は次のとおり。

ここは、長期的な対策についての提言です。

(1)野生生物に関する調査研究
  養鶏場とそれをとりまく環境に生息する様々な野生生物について、ウイルスに対する感受性を検査するとともに、それらの生息域や行動に関する情報の収集や調査研究を行うことが必要である。

養鶏場周辺に生息する野生生物がウイルスを伝播する可能性が実際どのくらいあるか判断するために必要と考えられることです。
・養鶏場周辺でどのような野生生物が生活しているか、それらは感染あるいはウイルスを保持するのかを確認し、伝播に関わる可能性のある野生生物を抽出する。
・伝播に関わる可能性のある野生生物が、養鶏場周辺でどのように生活しているか、その生態・行動について調査する。

(2)アジア地域の連携
  今後の国内における発生予測を図るため、本病の発生が確認されているアジア各国と連携して、本病の発生や流行に関する情報、日本-アジア地域や日本国内の野鳥の飛来ルートなどの調査研究の堆進が必要である。

日本と距離が近いアジア地域での発生情報について、家禽での発生状況だけでなく、発生地の野生生物(野鳥およびその食物など関係生物)も含めて情報を得るようにする、との方針です。

(3)農場における発生予防対策については、今後、次の事項について防疫指針の見直しを行うなど具体的できめ細やかな指導・点検を行うことにより万全を期すことが重要である。
 ・農場周囲のフェンスや鶏舎の防鳥ネットの張り方など鶏舎施設の保守・点検。
 ・作業や飼料・器材の運搬による人・物品・車両の動線や野生生物による伝播の可能性を踏まえた消毒の措置。
 ・衛生的な飼料や給与水を確保するための飼養衛生管理の徹底。
 ・鶏舎内外における衛生害虫(ネズミなど)の駆除。

とるべき防疫対策は、養鶏場での感染防止の徹底であることを改めて示したものです。具体的には、野鳥や野生動物の侵入防止対策、消毒・衛生管理の徹底を図るべきとしています。

(別紙)

疫学関連調査項目

各農場における主な調査項目は次のとおり。

I 一般情報
 ○発生農場
  農場の配置、農場内の飼料・冷水ライン・換気の流れ、鶏舎の構造、衛生対策の実施状洗(人・物品・車両の搬出入の消毒、防鳥ネット、ネズミ対策、飼料・水・器具の消毒、鶏舎内外の清掃・清毒、獣医師の指導状沈など)、作業管理状況、過去の疾病発生歴など。
 ○発生農場の周辺環境
  道路、川、湖沼、住宅、養鶏場、愛玩鳥飼養状況など。

II 疫学情報
 ○ヒナの導入元、鶏の出荷先、卵の出荷先、廃鶏の処理状況、鶏糞の処理状沈、飼料の搬入元、獣医師の動き、動物医薬品関係者の動き、野生生物(野鳥、ネズミ、イヌ、ネコ、タヌキ、イノシシ、シカなど)の生息状況、その他農場・鶏舎への人・物品・車両の出入りの動きなど。

 ○発生確認に関する情報
  発生までの経過、鶏舎内の感染の広がりの堆移など。

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